蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「(音楽解釈演奏講演 アンリ・ジル=マルシェックス)」 (大阪) (1931.12)

2024年08月26日 | ピアニスト 3 ルービンシュタイン、ケンプ他

   
  
 ジルマルセックス氏の此度の有意義な企ー音樂解釋演奏講演ーに就て一言仕度い。
 其舞臺は十六世紀より當代に至る各國の大作曲家にわたり微に入り細を穿つたものである。此方法こそ彼のコルトーが巴里、エコール、ノルマールに於て現に使ひつゝあるもので、コルトーを最もよく知れるジルマルセックス氏に依て、同方法に依る講演が我々の爲に爲される事は、何と云つても我樂壇近來の快事と云はなければならない。
 東京に於て此の企は總ゆる好樂家の非常な賞讃と感謝の内に終始したのであつた。
 今同じプログラムを以て關西の諸子に見える、少くとも音樂に愛好を持つ方ならば何人たるを問はず、智的に又情的に胸の奥深く得らる々何物かを期待する。
        -ダブリユー・エフ・シユルツー 

      
  
     第一回
    宗教的感銘により作品の解釋
  
 1. 前奏曲とフーゲ‥‥バッハ
 2. 奏鳴曲作品 百十一番ベートーヴェン
 3. 前奏曲 コーラルとフーゲ‥‥フランク
 4. 聖フランソア ド ポールの物語‥‥リスト
 5. 波にのまれたる御堂‥‥ドビュッシー
 6. 春の墓地にて‥‥セヴェラック
   
     第二回
    描寫的作品の解釋

  
  
 1. 愛らしきもの‥‥クープラン
 2. 飜へるリボン‥‥クープラン
 3. 郭公鳥‥‥ダカン
 4. 舞踏會への招待‥‥ヴェーバー
 5. 謝肉祭 作品九番‥‥シューマン
 6. グラナダの夕‥‥ドビュッシー
 7. 西の風の過行く所‥‥ドビュッシー
 8. ミンストレル‥‥ドビュッシー
 9. めぐりあひ‥‥イベール
 10. 町外れ‥‥モンプー
 11. ピアノのラグ ミュジック‥‥ストラヴィレスキー

  
 
     第三回
  
 1. 幻想曲 ハ短調‥‥モツアルト
 2. 奏鳴曲 アパシオナタ‥‥ベートーヴェン
 3. 幻想曲 ハ長調‥‥シューマン
 4. 奏鳴曲 ロ短調‥‥ショパン
 5. 第六夜曲‥‥フオレー
 6. 六つの ピアノ曲‥‥シェーンベング

  
 
     第四回
    童心の感銘に依る作品の解釋
  
 1. 幼き者の姿‥‥シューマン
 2. 百色眼鏡‥‥グッスタン
 3. ショパンの子守唄
 4. 子守唄 パームグリーン
 5. 子守唄 バックス
 6. 子守唄‥‥クラドシェタイン
 7. 子守唄‥‥トウスマン
 8. 雨の庭‥‥ドビュッシー
 9. ケークウオーク‥‥ドビュッシー
 10. 三つの永久運動‥‥プーランク

    幻想的性質の作品に就ての解釋
 
 11. メフィスト ワルツ‥‥リスト
 12. 三つの遁走調的變奏曲‥‥プロコフィエフ
 13. 夜の魅力‥‥ヴェル

  

     第五回
    民衆的感銘に依る作品の解釋
  
 1. ミセゼットとタンブリン‥‥ラモー
 2. 美しきウインの婦人への讃歌‥‥シューベルト
 3. マヅルカとポロレーズ‥‥ショパン
 4. 第二匈牙利狂奏曲‥リスト
 5. ファンタジア ベアチカ‥‥ド・ファルラ
 6. トリアナ‥‥アルベニス
 7. トナダス‥‥アルレンデ
 8. 
 9. 
 10. 羅馬尼亞舞曲‥‥バストック
 11. 露西亞舞曲‥‥ウエプリック

 
  
    コルトーの手紙
  
 コルトーの手翰(譯文)
    一九三一年五月二十八日
    巴里・アヴェニユ・アンリ・マルタン七九番地
  
  親しいヂルマルシェックス
 貴兄が一九三一年の秋、日本を巡遊して、恰度私が巴里のエコール・ノルマールで貴兄に御依賴したのと同樣な一聯の講義をする豫定だといふことを知つて私は非常に喜ばしく思ひます。佛蘭西政府も貴兄を後援するといふことは、貴兄が果しに行く仕事の意義と藝術上の重要性とを正しく立證してゐるものです
 貴兄の日本訪問、エコール・ノルマールで私が創始した敎授法を、潑剌として理解力ある日本の若い人達の前に示すことは、貴兄の實力に十分な信賴を持つてゐる私は、現在其處へ行かれない迄も、貴兄が行かれることによつて慰められます。
 年毎に私は、解釋 アンテルプレタシオン に對する私達の理想と、技術 テクニック の問題に就ての關心とが同じやうな動機のもとに如何に鼓舞され、如何に近似の精神となつて互に結びついて來たかといふことを知るやうになりました。同時に貴兄が自身、私に示してくれた多くの實證に、また敎育に對する驚くべき天禀に、滿腔の信賴を持つてゐる私は、貴兄が佛蘭西の音樂的文化を日本の紹介するために選ばれたことを慶賀せずにをられません。
 この佛蘭西の音樂的文化こそは貴兄が私に話してくれたやうに、あの偉大にして高貴なる國に於ける西洋音樂研究の近年の驚く可き發達に對して、まさに有効に寄與することが出來、また寄與しなければならないものでありませう。
        君の親愛なる  アルフレッド・コルトー

   
  
〔蔵書目録注〕
 
 上のプログラム、フランス語の部分等は省略したので、写真を参照されたい。