斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

ドイツより6

2010年09月15日 23時58分54秒 | 学校.学会訪問記
パネルディスカッションが終わった後、韓国、ドイツ、アメリカ、オランダの研究者で昼食をとりながら、国際標準の今後の仕事について話し合いをしました。写真はそのときの様子です。ニコニコして写っていますが、この後、結構たいへんな議論をしました。

たいへんというのは、国際標準をISOにいつ提案するかということでした。日本をたつ前に、DLCのグループにて、もしかしたらドイツが2011の提案を主張するのではないか?と心配していたのですが、韓国ー日本で連携して(事前に遅らせようと画策した)とぼけた顔で、2011年は早すぎるね、と発言しました。そうしたら、オランダもアメリカもそうだという感じになり、結局2013年となりました。この間に日本とドイツとそのほかの国の基本データを整備しなければなりません。日本はあらかじめ国のプロジェクトで進めているので、大丈夫です。

なんとか、日本をたつ前に心配していたことは全部クリアになりました。堂々と帰国することができます。だから、DLCを使っている企業の皆さん、ぜひご協力をお願いしますね。

さて、この仕事、本職のDLCの研究をやっていて、いきさつ上引き受けることになりました。DLCの研究はまさに本職です。国際標準の仕事はメーカーの人が主として引き受けるものかと思っていたのですが、実態は多くの場合、大学や研究所の研究者が引き受ける場合が多いです。国際標準をたてるための議論は、研究成果に対する議論より精神的な負担が大きいものです。失敗したら、国益を損ねる場合もあります。

ちょっと愚痴ですが、国益にかかわる仕事でも、往復の飛行機(片道12時間)はエコノミークラスです。日曜日まで海洋大の館山ステーションにいて、国外出張のためにもどり、また成田空港に向かって、ドイツに4日間だけ滞在して戻ったら、すぐに技大祭に参加です。副学長だから、ファーストクラスにでも搭乗していると勘違いしている人がいたら、びっくりするでしょうね。こういう激務でも国はエコノミークラスしか認めません。エコノミーに12時間というのは、4人がけの長距離格安バスよりも厳しい条件です。

※訂正:国はエコノミーしか認めないというのは、間違っていました。条件によってはビジネスクラスで出張できることがあるそうです。今回は、知らなかった私の自業自得だったようです。

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ドイツより5

2010年09月15日 23時40分16秒 | 学校.学会訪問記
さて、ドイツの報告の次に私が日本のDLCの標準化の取り組みを報告しました。予想はしていましたが、ヨーロッパ各国の参加者が多いようです。人数は50名を超えていました。日本が何を言うのか、固唾を呑んで聞き入るようなそぶりです。ちょっとまってよ、私は日本のすべてを委任されてきているわけではないのに、そんなに期待されても困ります。日本は他の国を圧倒できるほどのDLCに関するデータを持っています。だから、DLCの見方に関してとやかく言われえる筋合いではないのですが、50人に対して日本人一人ですから、質問(バッシング)の嵐になったら、その場で泣くしかありません。

日本(というより私の主張)は、DLCの構造を考えるときに、表面層と内部層さらに接着層に分けて考えるべきで、とくに標準化においては表面層と内部層で種類わけをするのがよいだろうということ、各社から出ている硬さ計のデータの換算表を作るべきだということ、でこれらは、予想以上にいい反響がありました。ドイツのシンプルな提案よりも現場に即した深みのある提案だということが、会場からも感想として述べられました。

一通りの報告が終わった後、パネルディスカッションになりました。パネラーは私のほかに一緒のホテルに泊まっている韓国人研究者、ドイツ人、オランダ人の各研究者でした。パネルディスカッションも英語でかなり熱い応酬をやります。写真はパネラー席から会場を写した写真です。写真を写すほどの余裕があるのだな、と会場の人は思ったかもしれませんが、これでも極度の緊張状態にありました。

パネルディスカッションでは、DLCという言葉を使い続けるか?という議論がだいぶ続きました。私は学術の世界の人間として、DLCというあいまいな言葉を使わないように国内では散々言ってきました。しかしながら産業界としてDLCというのは市民権を得ていて、なかなかDLCと呼ぶのをやめようという雰囲気にはなりません。ドイツは国際標準の中でも使うのをやめようというスタンスで、それをだいぶ強調していました。会場からもDLCというあいまいな言葉はやめようという声もありましたが、日本がしっかりと分類をやっているから、その分類を使えばDLCという言葉を残してもいいのではないか?という意見もありました。この件は決着つきませんでした。

DLC膜ハンドブック(2005年に出版したが、いまは中古が新品の2倍の価格)について、会場から、日本語で書かれているのが残念だという声が聴かれました。こういう書籍を元に標準化の内容を決めるべきだといったのは、ドイツのISOの担当者でした。日本で2004年からDLCのまとめ役をやり、その成果として国際的にほしがられる書籍が出版でき、さらにこういう国際的なグループの形成にかかわることができたことにちょっとうれしかったりしました。

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ドイツより4

2010年09月15日 23時12分36秒 | 学校.学会訪問記
国際会議での私のメインイベントは今日の午前中と午後の早いほうにありました。今回の国際会議の目的は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の国際標準をどのように決定するかという重要な会議です。わが国はDLCで世界をリードしていますが、DLCってなんぞや?というくらいあいまいな材料でもあります。いろいろなDLC(もどきも含めて)があって、世界で見ると、どれがほんとうのDLCかわからなくなっているのが現状です。だから工業的に標準化しようというものです。

ある意味、わが国の自動車産業を中心とした国益を守るためにドイツにきているようなものですが、なんか、後ろを振り返ると応援団の姿はかすれているし、がんばって何になるのだろうと少し不安になることもあります。でも、ここでがんばらないとほんとうにDLCがたいへんなことになります。

写真は、戦いの場に向かう途中の風景です。あまりにもきれいな内部で、ちょっと癒されました。

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ドイツより3

2010年09月15日 04時54分48秒 | 学校.学会訪問記
国際会議の休み時間の様子です。たいていの国際会議は、朝8時半から(早いときは7時半なんてものもありました)夕方6時ころまで、みっちりとやります。もちろん、英語で発表を行います。よくテレビででてくるように、同時通訳があるかというと、そんなものはありません。第一線の研究者は英語ができて当たりまえですから、同時通訳など専門の国際会議ではないのです。だから、一日が終わると時差ぼけもありますが、頭がパープリンになります。かなり頭の疲労を感じます。

とはいっても、みっちり講演では疲れるので、2時間おきくらいに20分くらいの休憩時間があります。コーヒーブレイクというのですが、個人的にはコーヒーは苦手なので、もうちょっといい言い方がないかな?と思います。ヨーロッパの会議ではコーヒーとともに炭酸水がでてきますので、ぼくはいつも炭酸水です。これがたいへんおいしいので大好きです。ヨーロッパでは常識的な飲み物です。

国際会議には、よく院生を連れて行きます。ポスター発表でもいいので、英語でプレゼンテーションすることに慣れてもらうためです。とはいっても、いまどき仕事で英語で議論するなんて、普通のエンジニアだったら当たり前のことだから、修士課程なら全員がいってほしいですね。本学のある系はなにやら、修士の国外発表(あるいは実務訓練)は必修にすることを議論しているようです。とてもいいことですね。

外国で英語で特訓されるのがいやなら、本学を選ばないほうがいいかもしれません。むしろ、われわれは外国に行くのが大好きな学生を迎え入れようかなと思っているくらいです。

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ドイツより2

2010年09月15日 03時41分29秒 | 学校.学会訪問記
国際会議の会場にいきました。写真は、会議場の入り口です。宿泊しているホテルから歩いて15分ほどかかりました。外の気温は朝で10度ちょっと、日中で18度程度で、たいへん気持ちいいです。そのため、15分くらい歩いてもなんとも思いません。町中の風景を楽しみながらゆっくり歩いてきました。今日は、国際会議に出席しても聞く一方でした。DLCコーティング関係の発表が結構ありましたので、かいつまんで聞いてきました。

朝は、おなじ研究分野の知り合いの韓国人の研究者が同じホテルに宿泊だったので、一緒に食べました。別に2人で示し合わせたわけではないのに、同じホテルで、しかも朝食時間が同じだったたのは何かのご縁でしょう。明日はこの韓国人研究者とともに会議で戦わなければなりません。そのため、朝から明日の戦略を練って、ひそひそと。

さて、国際会議の会場に日本人はほとんどおらず、知り合いの外国人も時間がずれているのか、あわずじまいだったので、一人で水と簡単な食べ物を買ってお昼ごはんと夕ご飯としました。ドイツビールはいつ飲めるのやら。

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