斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

あけましておめでとうございます。

2012年01月01日 22時35分14秒 | 長岡技術科学大学の広報
Boeing 787 Dreamlinerに搭乗してきました。ボーイング社製となっていますが、実は国際共同事業の成果品です。搭乗した機材の機長が「全日空が共同開発した、失礼、開発に参加した・・・」と言ってしまうくらい、わが国の、特に素材技術が活躍しています。

まずは、搭乗口から中に入ります。入るときに右手のDream linerとペイントしてある部分の機体をコツコツとたたくと、ちょっと乾いた音がしました。炭素繊維強化プラスチックです。炭素繊維はわが国を代表する材料です。本格的に開発が始まって、40年?50年?材料開発は、根気の世界です。いくら素材がよくても、加工方法やニーズ(好み)が合致しないとなかなか使ってもらえません。この素材のおかげで、機体の重量が20%ほど軽くなりました。ちなみに私の研究室では炭素材料の構造設計と評価を中心に研究しています。


続いて内部です。そして、座席から翼を見ました。カーブが大変セクシーです。金属翼では実現できなかった微妙なカーブを炭素繊維強化プラスチックなどの技術で実現できました。
 

さて、席についたら、「おや?シェードがない。」そうあのプラスチックの遮光板がないのです。よくみると、窓の下にスイッチがあって、5段階を髣髴させる点々が印刷されていました。まずは、前後の窓の明るさを同時に写真にとって、


それからスイッチを4回押したらば、「なんにもかわらない。」なんだまだ使えないのかと思っていたら、なんか薄くなってきて、「なんとなく色がつくエレクロね。」エレクロとは、エレクトロクロミズムのことで、応用物理学会の薄膜新材料の分野などでWO3薄膜に電圧かけて色を変えるという発表がけっこうあったことを思い出しました。うちも薄膜の研究室だからやっともいいかとも思いましたが、2番、3番煎じになるので見送っていました。そんなことを考えているうちに、なんと真っ暗になりました。


エレクトロクロミック物質の代表例として、ポリアニリンがあります。ポリアニリンは酸化還元状態によって薄黄色または暗緑色あるいは黒色に変化します。飛行機の窓だと半永久的に持たないとならないから、やはり酸化物の酸化タングステンを使うのでしょう。WO3は酸化タングステンのことです。

これがスイッチ。窓の外に美しい曲線を持った翼がご覧いただけます。


飛行中の美しい翼の先端をご覧ください。


駿河湾と富士山と787の日の丸です。すべて、美しい。


最先端の材料研究を中心に実践的技術開発で定評のある長岡技術科学大学で、一緒に勉強・研究しましょう。

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