■怨み屋本舗■ 面白かったな! ほぼ妥協なし。深夜ドラマだけのことはある。情報屋にオタク青年に刑事コンビに、脇役がキマってるのもポイント。殺され屋使ったり依頼理由が怨みじゃないことがわかった時点で断ったり、汚いところと信念貫いてるところが共存しててなかなかのもん。ただヒロインの怨み屋がだねえ……。美人だからどのカット見ても気分いいけど、もっと愛嬌というか、いやちょっとだけでいいんだけど、コミカルなとこあってもよかったんじゃないかと。ちょっとカッコつけすぎててねぇ。しかし警察側の動きの不自然さが致命的だったな。こんなオモロイドラマなのにほんとブチコワしてくれたよ。もはや揉み消しようのない不祥事だってのにあれはないでしょうあれは。スターリン政府じゃないんだから。それにちなんでラストだよなあ。ことさらに「えっ? やっぱり?」って期待半分驚き半分の効果狙ったんだろうけど、今までのに比べてはっきり逆恨みでしょう、あれは。ほんと、全体に旨いドラマだっただけにああいう疵は痛いのだわ。あれ式の持ってきかたする余裕あったら(逆に残り少なくなって急いだのかもしんないけど)、ストーカーデブスをもっと追っかけてほしかったよ。凄腕ホストがあいつにだきゃ全然歯が立たなかったり(っていいギャグだったよ)、あのデブス周辺がやけにデフォルメ系リアルだったもんだからね。ま、とにかく文句は多いにせよいろんな怨みが入れ替わり立ち替わり描かれてすっきり楽しめましたっと。こういうドラマならあと倍は観たかった的腹八分目満足でした。
■電車男(TVドラマ)■ 告白しる!告白しる!ってみんな催促合唱すんのはいいけど、もうお互い告白したも同然な流れになって久しいってのにまだ改めて告白せにゃならんとはな……恋愛道ってそんな厳密な規則あるんすか? まあ俺も告白したこと何度かあるにゃあるけど、あそこまで自然に付き合えるようになった相手にゃわざわざ告白したことってねえよなあ……。毒男スレは恋愛界に疎いオタクヒキコモリの吹き溜まりゆえみな四角四面に考えすぎてるって設定ってだけ? いやいやマジかも、だってエルメスもラストで「ちゃんと気持ちを聞かせてください」って迫ってたものなァ。ちゃんともなにもおめー言わなくたって事実上付き合ってるだろーが俺ら、な態度じゃダメ? となると俺の過去の恋愛の半分は失格だったなぁ。道理でうまくいかんかったわけだ。とか反省促すドラマでした。中高年オヤジ向けの電車男純愛マニュアルなる便乗本も出たってのも頷けますわ。しかし肝心のエルメスってさあ……、ちょうど『エジソンの母』にかかわったもんで、伊東美咲が全然イメージ違うといわれてた2年半前のこのドラマ気になっててこのたびようやくチョイ観てみたわけだが、ふむふむ、しかし対照的ってより、エジ母で「面白くない女」設定だった美咲、エルメスじゃもっと面白くない女を演ってるじゃないですかあ~~。こっちじゃその判定基準設定が欠けてるもんでエルメスひたすらいい女ってことになってるけど。面白基準で最も解せんかったのは毒男スレの存在を知ったときのエルメスの反応だよな、スレッドちゃんと読みもしないで絶交ってそういうのあり? ほんとに好きだったらあれはないと思うよ。せっつかれないと掲示板読む好奇心のカケラも持ち合わせない徹底的につまらん超平凡OLなのに、そのエルメスにあそこまでこだわる電車男の純愛って? 単に外見に惹かれてるだけっしょ? そのくせ「男はみかけじゃない」ってアピールされても説得力ねえべなぁ、スレの住人どもはそれで力もらったとか言ってたようだけど。みかけで女選んだみかけじゃない男、ってパラドクスのギャグで売ってるドラマなわけもなさそうだし。でもまあ、面白かったですワ。相手が来るかどうかわからんのに待ち続けるって精神力勝負は、俺も十代末のあの頃やってたものなァ……、俺の場合連日の通いで、4日目に彼女やっと来てくれましてねぇ……、今思えばあれで大成功だったんだけど、そのあとがいまいち詰めが甘く……、昨年27年ぶりの高校同窓会ってやつがありましてね、会場で彼女見かけたんですが声かけませんでした。だって立食で大勢ざわついてる中でついでみたいに話しかけるような軽いエピソードじゃなかったんすよね、彼女とのあれは。彼女も親友らと固まってて分け入る隙なかったのに加えて。てわけで、一生もう彼女と会うこともないんだろうなぁぁ……って我が唯一の純愛系トラウマの蒸し返しがつい4ヶ月前にありましたもんで、ディスプレイ前で「ああもう……」って電車男の浮き沈みが共感できちゃいましたよぉう。とはいえ冷静に批評する目は失っちゃいませんよ。最終盤になって、スレのカウントダウンでやけにくどくど引き延ばしているかと思ったら(もうかったるくて早送りしちゃおうかと思ったよ)、あれラストの「陣釜美鈴被害者の会」オチを際立たせるための手法だった? ってまさかねえ。終盤、ほんと単調すぎたよ。じっくり泣かせてるって本気で思ってたとしたら制作陣、甘いなあ。てなんだかんだ言いましたけど、アキバ系が渋谷訪問を極度に怖れる様子の描写とか、小ネタでたっぷり笑かしてもらいました。電車男がひたすら卑屈であれじゃオタクって以前に人間性で女にゃ縁ねえっしょ的感想もまあほどほどにシュールなコメディ設定として成功してると見なしまして、2ちゃんにもそこそこ共感持ってる私としちゃかなり楽しめたドラマです。で、くどいけどエルメスの口調で言っときたいのは→これ←ですので。
■破線のマリス■ 確かにこれはなあ……、スリリングなんだが、やり過ぎというか。そもそも謎が解かれないまま男が転落死ってとこがいいような悪いような、あの男ってもともと職場で嫌われ者だったわけだよね、そうしてみるとどうなってもかまわなかったような。むしろ職場のお役所に問題アリみたいね。ヤラセのメカニズムというか現場の責任系統をもっと描いてくれたほうがよかったかな。しかし相変わらずこのテのサスペンスってみんな玄関にカギかけてないねえ。そうでないとああやって忍び込みのやりっこができなくなるもんね、盛り上がらんものね。で、なに、ラストのあれって、オチのつもりか? あの子ども何歳だっけ、とにかくあの子が盗撮してたっていうの? ちょい無理筋なんでないの……?
■ナイチンゲーロ■ またこの建物ですか……。それはまあいいとして、いや、これ観始めたとき、「お、タイトルに似合わずやけにスタイリッシュな映像だぞ?」と身を乗り出したものですわ。実際、映像と音響のベタではあるが心地よい凝りまくりかたは最後まで変わらず、光と影の使い方も模範的で、ビジュアル的にゃすっかり惚れちまいましたし(カメラの動きが素人臭いというか、カメラマンの動きが見えてしまう気配で興醒めだったとはいえ)、BGM無しという反俗で通したためオルガンが引き立ちましたし。しかし脚本がどーもいただけませんでしたな。どうしてすぐ霊って仮説に飛びついちゃいましたかね。女子どもの些細なことできゃーきゃーパニくる悲鳴合戦もウザイ。たかが窓ガラスにへばりついてる普通のカエルで悲鳴あげんでください。ただでさえ「裏切った」だのなんだの、たかが職業選択の自由の行使を責め合う展開が暑苦しいところへ、あのキャアキャアなので。どうせなら暴露合戦をもっと徹底してやってくれてたら突き抜けたけどね。そして例のごときあのオチですかい。きっとこの映画を最初に観ていれば「おお!」ってとこだけど、もう他でさんざんヤラレまくってるからなぁ。脚本と演出のマズサそして演技の不自然さすべてが正当化されてしまうこのオチ、はっきり言ってトホホホ……てなもんだったかな。しかしまあ、視覚的には大合格点だったので後味すこぶるヨロシ。女の子らのルックスも合わせて。膝に人面疽できちゃった子が私は一番好みかな。人面疽の笑いにしろ黒い血のスライムにしろ仰向け吐血にしろ、グロ系のディテールもよし。トホホオチのあとに予想通り霊が出てきたのは、まあ予想通りだけに意外とホッとしたり。
■大停電の夜に■ これ一応SFなんだよね。つうかファンタジー? エイリアンほんとに居たっぽいし。そういった暗示はヨシとして、どうしてこう臆面もないベタさ加減で敷き詰めにゃならんかね。いくらなんでも生き別れの母子体面で抱き合って感激しろってあたりからして無理だから。クニで待ってる恋人の話とかね。不倫の別れとかね。余命3ヶ月とか。俗っぽさを徹底したパロディに抜けてりゃまだしもだったけど。あと「そういう言い方をするのよせよ」って決まり文句を連発するのよせよ。離婚寸前の夫婦の会話ってそういう言い方ばっかかよ。愛人と女房の両方に同じセリフ言ってるとこがなかなか切ないでしょ的気取りも空回り。俳優のせいじゃなくて脚本が悪いには違いないけど、役者がアホに見えてきましたわ。こういうオムニバスなら『大失恋』のほうがよかったっけな。まあこれも、トヨエツのジャズバーにまさか一同総集合なんて馬鹿はやらんよな、と心配してたらまあまあ適度なメンツだけ集めてお茶濁してたけど、むしろ全員集合やらかしてナンセンスにもってったほうがそれなりの味が出てたかも。病院ですでに「オヨヨ、鉢合わせかな……」的ハラハラ感をはぐらかすのやってたわけでね、ジャズバーでは身も蓋もなくバーッとズッコケまくってもよかったと思うよ。そういや、モデルと中学生のコンビは孤立してたね。他のチームと絡んでなかったな。もしかして病院は一緒だった?
■THE有頂天ホテル■ この映画を面白がるやつってどういうレベルなのかね。単にいろんな芸人が大挙出演してるってんで釣られてるだけ、と自覚してればまだ救われそうだが。まあこの手法だったら『大停電の夜に』や『大失恋』のほうが10倍マシだったっけ、無理して笑い取ろうとリキんでなかったぶん。ホテルの面々、おめーらプロのホテルマンかよってほど客そっちのけで羽目ハズしてるし。ちった仕事に専念せいやアホが。客室係が客のもん勝手に身につけてんじゃねっつの。夢を追い続けろだの自分らしくだの陳腐なお説教しつこく言い続けてりゃ〈感動〉してもらえると思ってんのかね。あ~安易。定番の鬱陶しい入れ替わりものだのバレルに決まってる見栄っ張りのウソだの(あのマイク持った「挨拶」って何なの? アホ? あとで本人が本気で落ち込んでるボケ描写の上塗りだし)、コメディってジャンルを勘違いしてるんじゃないかねえ、この監督。
■無防備都市■ なんか、正直かなりつまんなかったです。第二次大戦大好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。こういう名画って、「面白かった」って言わにゃあかんですか? 戦争中にこれだけのもの撮りましたかー、イタリアはん、ドイツのせいで難儀なことでしたなあ、つったって映画の良さとは別ものだし。レジスタンスの人物たちがただ捕まって、最後神父も銃殺されておしまい、って、素直すぎだよね。ま、リアリズムなんで仕方ないでしょうけどね、こちらが始めから持ってるイタリア戦線のイメージを全然壊してもくれなければ補強してもくれなければ。子どもらにもうちょっと照明当ててくれてたらもっと観れたんだけど。ま、こんなモンですか、往年の名画って。ま、名画だけあってディテールはどのシーンも高レベルでしたが、あの有名なトラック後追い銃殺シーンは確かに迫力でしたが、全体メッセージがもうちょい、つうか全然足りんかったのね。名作に辛い採点で我ながら残念。いずれ再観賞します。
■英国式庭園殺人事件■ おーいちょっとこれ、つっまらねーっすなー。端的につまらない。どうしようもなく退屈だな。刺激もないし、評判の映像美も大したことない。これを褒めるやつって、そーとー無理してないか。アート好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。これは駄作だ。監督の自己満足なんてもんじゃない。これで満足できる自己ってのは感性が疑われる。気取ってるだけだろがほんともう。旦那の留守中に奥方に頼まれて画家が広大な屋敷を12枚スケッチする、とくりゃ何だろ何だろ、どんな面白いこと起きるんだろ、実験的な芸術映画なんだろーナー、そりゃ期待しますって。それが何これ? 何も起こらんじゃん。殺人事件は起きたらしいけど、じ、地味~~ったら地味~~……。見せ場ちっとは作りなせいよ。立像になりすました男が妙なナンセンス風味を自然発酵させててそれだけが「うふふ……」ものだったけど、なんかほんと、後継ぎ問題系の陰謀っぽいのがいろいろ絡んでるってことなんだろうけど、手際が悪すぎる。ほんと、もうちょっとフツーに面白くする工夫せいよ。期待が大きすぎただけだよ、などとは言わせません!
■電車男(TVドラマ)■ 告白しる!告白しる!ってみんな催促合唱すんのはいいけど、もうお互い告白したも同然な流れになって久しいってのにまだ改めて告白せにゃならんとはな……恋愛道ってそんな厳密な規則あるんすか? まあ俺も告白したこと何度かあるにゃあるけど、あそこまで自然に付き合えるようになった相手にゃわざわざ告白したことってねえよなあ……。毒男スレは恋愛界に疎いオタクヒキコモリの吹き溜まりゆえみな四角四面に考えすぎてるって設定ってだけ? いやいやマジかも、だってエルメスもラストで「ちゃんと気持ちを聞かせてください」って迫ってたものなァ。ちゃんともなにもおめー言わなくたって事実上付き合ってるだろーが俺ら、な態度じゃダメ? となると俺の過去の恋愛の半分は失格だったなぁ。道理でうまくいかんかったわけだ。とか反省促すドラマでした。中高年オヤジ向けの電車男純愛マニュアルなる便乗本も出たってのも頷けますわ。しかし肝心のエルメスってさあ……、ちょうど『エジソンの母』にかかわったもんで、伊東美咲が全然イメージ違うといわれてた2年半前のこのドラマ気になっててこのたびようやくチョイ観てみたわけだが、ふむふむ、しかし対照的ってより、エジ母で「面白くない女」設定だった美咲、エルメスじゃもっと面白くない女を演ってるじゃないですかあ~~。こっちじゃその判定基準設定が欠けてるもんでエルメスひたすらいい女ってことになってるけど。面白基準で最も解せんかったのは毒男スレの存在を知ったときのエルメスの反応だよな、スレッドちゃんと読みもしないで絶交ってそういうのあり? ほんとに好きだったらあれはないと思うよ。せっつかれないと掲示板読む好奇心のカケラも持ち合わせない徹底的につまらん超平凡OLなのに、そのエルメスにあそこまでこだわる電車男の純愛って? 単に外見に惹かれてるだけっしょ? そのくせ「男はみかけじゃない」ってアピールされても説得力ねえべなぁ、スレの住人どもはそれで力もらったとか言ってたようだけど。みかけで女選んだみかけじゃない男、ってパラドクスのギャグで売ってるドラマなわけもなさそうだし。でもまあ、面白かったですワ。相手が来るかどうかわからんのに待ち続けるって精神力勝負は、俺も十代末のあの頃やってたものなァ……、俺の場合連日の通いで、4日目に彼女やっと来てくれましてねぇ……、今思えばあれで大成功だったんだけど、そのあとがいまいち詰めが甘く……、昨年27年ぶりの高校同窓会ってやつがありましてね、会場で彼女見かけたんですが声かけませんでした。だって立食で大勢ざわついてる中でついでみたいに話しかけるような軽いエピソードじゃなかったんすよね、彼女とのあれは。彼女も親友らと固まってて分け入る隙なかったのに加えて。てわけで、一生もう彼女と会うこともないんだろうなぁぁ……って我が唯一の純愛系トラウマの蒸し返しがつい4ヶ月前にありましたもんで、ディスプレイ前で「ああもう……」って電車男の浮き沈みが共感できちゃいましたよぉう。とはいえ冷静に批評する目は失っちゃいませんよ。最終盤になって、スレのカウントダウンでやけにくどくど引き延ばしているかと思ったら(もうかったるくて早送りしちゃおうかと思ったよ)、あれラストの「陣釜美鈴被害者の会」オチを際立たせるための手法だった? ってまさかねえ。終盤、ほんと単調すぎたよ。じっくり泣かせてるって本気で思ってたとしたら制作陣、甘いなあ。てなんだかんだ言いましたけど、アキバ系が渋谷訪問を極度に怖れる様子の描写とか、小ネタでたっぷり笑かしてもらいました。電車男がひたすら卑屈であれじゃオタクって以前に人間性で女にゃ縁ねえっしょ的感想もまあほどほどにシュールなコメディ設定として成功してると見なしまして、2ちゃんにもそこそこ共感持ってる私としちゃかなり楽しめたドラマです。で、くどいけどエルメスの口調で言っときたいのは→これ←ですので。
■破線のマリス■ 確かにこれはなあ……、スリリングなんだが、やり過ぎというか。そもそも謎が解かれないまま男が転落死ってとこがいいような悪いような、あの男ってもともと職場で嫌われ者だったわけだよね、そうしてみるとどうなってもかまわなかったような。むしろ職場のお役所に問題アリみたいね。ヤラセのメカニズムというか現場の責任系統をもっと描いてくれたほうがよかったかな。しかし相変わらずこのテのサスペンスってみんな玄関にカギかけてないねえ。そうでないとああやって忍び込みのやりっこができなくなるもんね、盛り上がらんものね。で、なに、ラストのあれって、オチのつもりか? あの子ども何歳だっけ、とにかくあの子が盗撮してたっていうの? ちょい無理筋なんでないの……?
■ナイチンゲーロ■ またこの建物ですか……。それはまあいいとして、いや、これ観始めたとき、「お、タイトルに似合わずやけにスタイリッシュな映像だぞ?」と身を乗り出したものですわ。実際、映像と音響のベタではあるが心地よい凝りまくりかたは最後まで変わらず、光と影の使い方も模範的で、ビジュアル的にゃすっかり惚れちまいましたし(カメラの動きが素人臭いというか、カメラマンの動きが見えてしまう気配で興醒めだったとはいえ)、BGM無しという反俗で通したためオルガンが引き立ちましたし。しかし脚本がどーもいただけませんでしたな。どうしてすぐ霊って仮説に飛びついちゃいましたかね。女子どもの些細なことできゃーきゃーパニくる悲鳴合戦もウザイ。たかが窓ガラスにへばりついてる普通のカエルで悲鳴あげんでください。ただでさえ「裏切った」だのなんだの、たかが職業選択の自由の行使を責め合う展開が暑苦しいところへ、あのキャアキャアなので。どうせなら暴露合戦をもっと徹底してやってくれてたら突き抜けたけどね。そして例のごときあのオチですかい。きっとこの映画を最初に観ていれば「おお!」ってとこだけど、もう他でさんざんヤラレまくってるからなぁ。脚本と演出のマズサそして演技の不自然さすべてが正当化されてしまうこのオチ、はっきり言ってトホホホ……てなもんだったかな。しかしまあ、視覚的には大合格点だったので後味すこぶるヨロシ。女の子らのルックスも合わせて。膝に人面疽できちゃった子が私は一番好みかな。人面疽の笑いにしろ黒い血のスライムにしろ仰向け吐血にしろ、グロ系のディテールもよし。トホホオチのあとに予想通り霊が出てきたのは、まあ予想通りだけに意外とホッとしたり。
■大停電の夜に■ これ一応SFなんだよね。つうかファンタジー? エイリアンほんとに居たっぽいし。そういった暗示はヨシとして、どうしてこう臆面もないベタさ加減で敷き詰めにゃならんかね。いくらなんでも生き別れの母子体面で抱き合って感激しろってあたりからして無理だから。クニで待ってる恋人の話とかね。不倫の別れとかね。余命3ヶ月とか。俗っぽさを徹底したパロディに抜けてりゃまだしもだったけど。あと「そういう言い方をするのよせよ」って決まり文句を連発するのよせよ。離婚寸前の夫婦の会話ってそういう言い方ばっかかよ。愛人と女房の両方に同じセリフ言ってるとこがなかなか切ないでしょ的気取りも空回り。俳優のせいじゃなくて脚本が悪いには違いないけど、役者がアホに見えてきましたわ。こういうオムニバスなら『大失恋』のほうがよかったっけな。まあこれも、トヨエツのジャズバーにまさか一同総集合なんて馬鹿はやらんよな、と心配してたらまあまあ適度なメンツだけ集めてお茶濁してたけど、むしろ全員集合やらかしてナンセンスにもってったほうがそれなりの味が出てたかも。病院ですでに「オヨヨ、鉢合わせかな……」的ハラハラ感をはぐらかすのやってたわけでね、ジャズバーでは身も蓋もなくバーッとズッコケまくってもよかったと思うよ。そういや、モデルと中学生のコンビは孤立してたね。他のチームと絡んでなかったな。もしかして病院は一緒だった?
■THE有頂天ホテル■ この映画を面白がるやつってどういうレベルなのかね。単にいろんな芸人が大挙出演してるってんで釣られてるだけ、と自覚してればまだ救われそうだが。まあこの手法だったら『大停電の夜に』や『大失恋』のほうが10倍マシだったっけ、無理して笑い取ろうとリキんでなかったぶん。ホテルの面々、おめーらプロのホテルマンかよってほど客そっちのけで羽目ハズしてるし。ちった仕事に専念せいやアホが。客室係が客のもん勝手に身につけてんじゃねっつの。夢を追い続けろだの自分らしくだの陳腐なお説教しつこく言い続けてりゃ〈感動〉してもらえると思ってんのかね。あ~安易。定番の鬱陶しい入れ替わりものだのバレルに決まってる見栄っ張りのウソだの(あのマイク持った「挨拶」って何なの? アホ? あとで本人が本気で落ち込んでるボケ描写の上塗りだし)、コメディってジャンルを勘違いしてるんじゃないかねえ、この監督。
■無防備都市■ なんか、正直かなりつまんなかったです。第二次大戦大好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。こういう名画って、「面白かった」って言わにゃあかんですか? 戦争中にこれだけのもの撮りましたかー、イタリアはん、ドイツのせいで難儀なことでしたなあ、つったって映画の良さとは別ものだし。レジスタンスの人物たちがただ捕まって、最後神父も銃殺されておしまい、って、素直すぎだよね。ま、リアリズムなんで仕方ないでしょうけどね、こちらが始めから持ってるイタリア戦線のイメージを全然壊してもくれなければ補強してもくれなければ。子どもらにもうちょっと照明当ててくれてたらもっと観れたんだけど。ま、こんなモンですか、往年の名画って。ま、名画だけあってディテールはどのシーンも高レベルでしたが、あの有名なトラック後追い銃殺シーンは確かに迫力でしたが、全体メッセージがもうちょい、つうか全然足りんかったのね。名作に辛い採点で我ながら残念。いずれ再観賞します。
■英国式庭園殺人事件■ おーいちょっとこれ、つっまらねーっすなー。端的につまらない。どうしようもなく退屈だな。刺激もないし、評判の映像美も大したことない。これを褒めるやつって、そーとー無理してないか。アート好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。これは駄作だ。監督の自己満足なんてもんじゃない。これで満足できる自己ってのは感性が疑われる。気取ってるだけだろがほんともう。旦那の留守中に奥方に頼まれて画家が広大な屋敷を12枚スケッチする、とくりゃ何だろ何だろ、どんな面白いこと起きるんだろ、実験的な芸術映画なんだろーナー、そりゃ期待しますって。それが何これ? 何も起こらんじゃん。殺人事件は起きたらしいけど、じ、地味~~ったら地味~~……。見せ場ちっとは作りなせいよ。立像になりすました男が妙なナンセンス風味を自然発酵させててそれだけが「うふふ……」ものだったけど、なんかほんと、後継ぎ問題系の陰謀っぽいのがいろいろ絡んでるってことなんだろうけど、手際が悪すぎる。ほんと、もうちょっとフツーに面白くする工夫せいよ。期待が大きすぎただけだよ、などとは言わせません!