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映画「エリザベート 1878」を観る

2023年09月04日 | 映画

封切りされた映画「エリザベート1878」(2022、オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス合作、監督マリー・クロイツアー、原題Corsage)をシネコンで観てきた。シニア料金で1,300円、客は20人くらいか、やはり女性が多かった。

1878とはエリザベートが40才になった年だ。原題Corsageはコルセットという意味。彼女が痩せてる姿を見せるため、細めのコルセットのひもをキツく締める場面が何回か出てくるので、それをタイトルにしたものか。邦題が全然違うので、どっちが良いのか。エリザベートは日本では宝塚のミュージカルなどで有名らしいので、コルセットとするよりはエリザベートの方がよいと判断したのでしょう。

この映画は、公式サイトを一部引用して説明すると、「ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたオーストリア皇妃エリザベート(1837-1898、61才没)が、1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた。コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するが、形式的な公務に窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すためにある計画を思いつき・・・」というもの。

観た感想としては、やはり男性のためか、それほど感動しなかった。特に盛り上がるところもなく、ちょっと退屈した。そして公式サイトにある「ある計画」とはなんだったのか、これもよくわからなかった。ネタバレになるので言わないが、そんなにたいした計画ではないように思えた。また、最後の終わり方が史実とは異なると思った。

そもそも何でこの映画を観ようと思ったかだが、私の愛読している本に「わが青春のハプスブルグ」がある。この本の著者はジャーナリストの塚本哲也氏で、この本は塚本氏が若い頃、ヨーロッパ各地を駆け回って仕事をした時に得た体験記である。氏は音楽や映画に造詣が深く、体験記もその話題を中心に中欧の歴史と人物を語ったものであり、氏と同じ音楽や映画ファンとして折に触れて読み返している本である。その本の第1番目の章に「皇妃エリザベート、人形の家ノラの先駆者」がある。

この本を読むとエリザベートのことがよくわかるので映画を見に行く前に再読した。映画をいきなり観ただけでは当時の状況がよくわからない。氏の本を読むと、エリザベートはミュンヘンのバイエルン王国生まれ、父の侯爵が堅苦しい宮廷の付き合いを好まず、社交界から遠ざかり、自由気ままに生きた貴族だった。次女のエリザベートはこの父の血を最も強く受け継いだ。彼女は早くから夢想的な性格で、語学、絵画、詩の才能を見せ、礼儀作法など無縁の生活をし、野山を駆けまわる生活をした。父の侯爵と一緒に庶民に変装してお忍びで村の酒場などに出入りしていた。その彼女がウィーンのハプスブルグ家に嫁入りした、これは野生動物を檻に入れるようなもので、彼女の不幸のはじまりであった・・・

その後の彼女の人生が氏の本には書かれてあり、大変参考になるが、映画では時間的な制約もあり触れられないことも多かった。興味がある人はこの本も映画の前か後で読めば、より深く彼女を理解できると思う。氏が彼女をイプセンの戯曲「人形の家」のノラの先駆者と第1章のタイトル副題に書いたのは、ノラが女性の人格を認めない古くて封建的な社会に反抗して、妻や母である前に人間であるべきだといって、夫と四人の子供をおいて家出する女性解放の象徴的存在として書かれているのをエリザベートに重ねたためであろう。ただ、私はエリザベートはノラとは違う面も多いと思うが。

さて、主役のエリザベートを演じたのは、ヴィッキー・クリープス(43、ルクセンブルク)だが、今まであまり注目はしてこなかった女優だ。なかなか美人で良い感じの女優だった。今後注目していきたい。

女性向きの映画だと思った、が、ハプスブルグ家や彼女の人生に興味のある方は観てみるのも良いでしょう。

 

 



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