帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔十六〕みささぎは

2011-03-08 06:06:06 | 古典

 


                      帯とけの枕草子〔十六〕みささぎは



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」。
「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。


 

枕草子〔十六〕みささぎは


 みささぎは、うぐひすのみさゝぎ。かしはばらのみさゝぎ。雨のみさゝぎ。


 
清げな姿

陵は、鶯の陵。柏原の陵。雨の陵。

 

心におかしきところ

見ささ気は、春告げとりの見ささ気。樫端はらの見ささ気。吾めの見ささ気。

身ささ木は、はる告げとりの身ささ木。下肢端はらの身ささ木。お雨ふる身ささ木。

 

言の戯れと言の心

「みささぎ…大きな丘…墳墓…御陵」「みささき…見ささ気…そのときの細やかなお気もち…身ささ木…貴身の立派なこと」「み…御…見…媾…身…おとこ」「ささ…こまやかな…たっぷりな…美称」「気…気持ち…心遣い」「木…言の心は男…おとこ」「うぐひす…鶯…春告げ鳥」「鳥…女」「春…情の春…ものの張る」「かしははら…柏原…所の名、名は戯れる。樫端ばら、堅いお身の端」「ばら…ども…親しみを表す…原…腹」「雨…おとこ雨…吾め…吾女」。

 


 
言の意を大きくずらして用いるのは、「をかし」を醸しだす一つの手立て。

 

文芸の言葉は、浮言綺語の戯れそのもの、しかも、常なること無し。今では思いもつかない、当時の「言の心」を心得れば趣旨が顕われ、「清げな姿」の奥に女の生の声が聞こえるでしょう。

 


 伝授 清原のおうな


 聞書  かき人しらず   (2015・8月、改訂しました)