東京国立博物館、6月のある日の常設のメモ(1)です。
渡辺崋山と山本梅逸を楽しみに行ってきました。
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いつも一階の18室「近代の美術」から見るクセあり。
この日は、明治26年(1893)のシカゴ・コロンブス世界博覧会に出品された作品を多く展示。
なぜコロンブス?と思ったら、アメリカ大陸発見400年を記念して命名されたとのこと。当時のアメリカの人口の半分の来場者という盛況ぶりだったという。
こうしてみると、博覧会での日本の展示品は逸品ぞろいだと思う。
それもそのはず、(Wikipediaから)交易促進、不平等条約撤廃を目指す日本政府は、この万博にかなり力を入れた。当時の世界博では、非西洋国は遊興地区での見世物的な扱いであったため、日本側はそれを避けるため、本格的な建築を提示しメイン会場での立地を交渉した。そして苦労して獲得した水辺の好立地。そこに大工を派遣して宇治の平等院鳳凰堂を模した「鳳凰殿」を建て日本館とした。残された写真を見るにすばらしい。
ーー展示に戻ります。
展示物も、作り手が腕によりをかけて制作したとわかるもの揃いだった。選定したのは岡倉天心らとのこと、なるほど。どれも西洋の亜流みたいなものではなかった。当時のアメリカ人や各国パビリオンの外国人も、興味をもったのでは。
川端玉章「玩弄品行商 」1893は、じじの笛に誘われて子供たちが集まっている。そういえば、日本は子供にとって天国だ、と書き残したのはモ日本にやってきたモースだったっけ。
私もほしくなるようなものがたくさん。招き猫とか犬とか狸とか、かわいい!!
金魚のボール?提灯?かわいいなあ。鶴や民家の入った平鉢は、自分で好きなフィギュア?を置いてカスタマイズできるのかな。鉢の中の川には魚もいて芸が細かい😊。
じじも子供も犬も、そっちのけでおもちゃばかり見てしまった。アメリカ人は子供の髪型を見て不思議に思ったかも。
日本の風俗の紹介のような絵が続く。庶民の楽しそうな様子は、欧米の人を意外に思わせたかもしれない。
尾形月耕「江戸山王祭」1893 、美しく飾った車を引くフェスティバルはカトリックの国にもあったような。
日本の山紫水明な自然や、自然とともに暮らす自然観が伝わりそうな掛け軸も。
望月玉泉「保津川湍淵遊鱗」
個人的には、奥のほうでぴょんとしてる鯉が好き。
熊谷直彦「雨中山水 」
靄のかかる雨の水辺の水墨。牧谿以来の定番なのか?、靄の情景をやっぱり美しいと感じる私も日本人。昔見た「Silk」という2007年の日・仏・伊・英合作の突っ込みどころ満載の映画も、いくらなんでもそんなにもやもやじゃないよっていうくらい靄に包まれた幻想的な日本だったが。。
工芸品の職人の腕には感嘆。
鈴木長吉の鷲の置物、いつも18室の真ん中においてあるのだけれど、これも万博の出品作であったのか。
永楽善五郎(得全)「抹茶器」1892
壺などは輸出品としていい広告宣伝になったのでは。
「七宝牡丹唐草文大瓶」梶佐太郎作
メタリックな作品は美しく技巧も惚れぼれ。
池田泰真(1825~1903)「江之島蒔絵額」1893
幅80センチくらいだったか大きくはないのに、どこの細部を見ても絵になっている。
漁村と漁民、江の島神社のお参りの家族連れや一行の様子。臨場感をこめて映し出している。
波の様子も金銀を使い分け。
幾何学的に山と家並みが美しかった。大きなかごや網を干した竿なども見える。旅館や店の家の窓には、人影まであった!
最初は柴田是真の作かと思っていたら、池田泰真は是真の弟子。そろってすごい。
加納夏雄「群鷺図額」1892は、「四分一地平象嵌」とあった。四分一とは金と銀の配合らしい。いぶし銀的な色調がいい。
横山孝茂・横山弥左衛門「頼光大江山入図大花瓶」明治5年(1872)は、ウイーン博の出品作。親子二代の作。
背丈ほどありそうな二体が一セット。超絶に細密。花瓶には酒呑童子のお伽話から、4つのシーンがおさまっている。
山越え川越え、退治に向かうシーン。頼光や渡辺綱らだけでなく、木々や水流、岩も迫真。
足台や持ち手、どこもここも見どころ。龍・みずち・鬼などのほか、見猿・言わ猿・聞か猿までいる。伝統的な文様もみっちり彫り込まれている。日本のバロック。
高岡出身とある。5月に高岡を訪れ、古い街並みに目を見張ったばかり。この街に育まれた名工なのでしょう
明治の技の高さに改めて感服。
そういえば前回展示されていた渡辺省亭「雪中群鶏図」も、このシカゴ博に出品されたものだった。省亭は、「博覧会・共進会の審査のあり方に不満をもった(wiki)」らしく、これ以降、展覧会などに出品しなくなった。なにがあったのかわからないけれど、いろいろな政治力が働く様に嫌気がさしたのかもしれない。
万博終了後、鳳凰殿は、シカゴ市に寄贈され、庭園とともに整備されていたけれど、日米開戦により荒廃。1946年に放火により焼失してしまった。紆余曲折へて、今は再整備され、ジャクソン公園の中の「Garden of the Phoenix」となっている。
庭園を管理する財団のウェブサイトのタイムライン(http://www.gardenofthephoenix.org/#timeline)がたいへんおもしろい。ペリーが来て開国して王政復古・・から始まる日本の歴史、シカゴの歴史と発展。パールハーバー、ヒロシマ、ナガサキ。放火の新聞記事。日系人のオーサトファミリーの尽力、オノヨーコさんのオブジェ。当時のシカゴ博の写真など。英語だけど、短めな文章で画像が多いのなんとかいける。少し抜粋。
横浜居留地で西洋人に興味津々。1866年には西洋人が400人住んでいたとは、多いのか少ないのかわからないけど。
シカゴで鳳凰殿建設中の大工さん。耳あてやジカタビ、「エキゾチックな大工道具」に注目してたり、日本人って梯子もかけずに屋根までのぼっちゃうんだぜと驚愕したらしい。
若きフランク・ロイド・ライトはこの鳳凰殿に触発され、1905年に日本にやってきた。サイトでは、その時に日光から高松まで旅行したこと、二度目の来日と帝国ホテルの設計まで触れていた。
鳳凰殿で焼失を免れた欄間が4枚あるという。立派!いつか見てみたいなあ。
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脱線しましたが、万博以外で18室で心に残ったものの記録
河合玉堂「家鴨 」 静かな村の風景しか見たことがなかったので、こんなにはじけた玉堂を初めてみた。そおーれえ~と追い立てられるアヒルがガーガー騒がしい。
ガラスについたような水滴が不思議な感じ。
今村紫紅「近江八景」西洋絵画の影響がみられるとのこと。点描で海や山を描いていた。個人的には、8幅まとめてみた方が、近江を総合して感じられていいかなと思った。
森川杜園「能人形 牛若・弁慶 」20センチくらいだったか小さい。緊迫の配置が絶妙。
背後に神経を研ぎ澄ませる目線!
反対側から撮ってみたら、この緊迫!
殺気立つ瞬間だけれども、木なのでどこか朴訥。いろいろ並べ替えて遊んでみたい~。
川瀬巴水の「東京十二題」1919~21が12枚並んでいました。
一番好きな「駒形河岸」
「五月雨降る山王」
「木場の夕暮れ」
12枚なんとなく眺めていると、一日の、または季節ごとの、空の変化が感じられて、静かな気持ちになる。
(二階へ続く)