要素の性質に還元されないものが現れることを創発といいます。
複雑系や物性物理学などでも普通に使わわれる用語です。
意識は脳内で創発されると主張するのが物理主義です。
脳という物質が非物質的な意識を創発するというのです。
この主張に対して、意識を創発という概念で説明することは無意味だという批判があります。
以前のブログで情報を定義して創発する機械(検出器、測定器)について紹介しました。
この機械を哲学者向けに翻訳してみます。
これらの機械は、言うまでもなく物質です。
その物質が非物質的な情報を創発しているのです!
このときの創発という概念には立派な意味があるのです。
物理主義を否定する哲学者は、この事実にどう反論するのでしょうか!
予想される反論は、検出器や測定器は人間が作った機械なので、測定器などが情報を創発するのは当然だというものです。
この反論が成り立つなら、脳という物質は進化の過程で意識という非物質的なものを創発する機能を獲得したという再反論が成り立ちます。
哲学者は、数十億年という途方もない時間をかけた生物進化の過程で脳神経回路が形成されたという事実に正面から向き合うべきなのです。
トッド・ファインバーグ、ジョン・マラット(鈴木大地訳)
『意識の進化論的起源ーカンブリア爆発で心は生まれた』、
勁草書房(2017)
原子や電子にも意識があるという意味不明の汎心論を持ち出す必要はないのです。
なお、物理主義は検出器や測定器に関わる現象を説明出来ません。
何故なら、情報概念は物理法則に還元できないからです。
物理主義で説明できるのは、これらの機械の物理的側面だけなのです。
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