情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

チャーマーズの情報概念の問題点

2021-12-25 11:31:46 | 哲学
チャーマーズは『意識する心ー脳と精神の根本理論を求めて』の中で情報概念の重要性を指摘しています。

彼の情報概念は、シャノン流のものでビット表現できるものです。
様々な物理的あるいは心的対象に対して情報を付与できるとしています。
差異があるところには情報もあると言います。

例えば、サーモスタットや電灯のスイッチ、石ころなどに対しても情報を付与できるとしています。
このようにチャーマーズの情報概念は極めて観念的なものです。
哲学者が扱う情報概念としては意味があるのかもしれませんが、その情報概念と物質現象とを関連付けようとすると途端に意味不明なものになります。

至る所に情報があるとする彼の考えは、オッカムの剃刀にも反しています。

もし、チャーマーズが情報概念の重要性を説きたいのであれば、それがどのような新しい現象を予測できるのかを示す必要があります。
それが出来なければ、単に情報概念を弄んでいると取られても仕方ありません。

当ブログ主宰者は「物質現象に情報が関係している」と言える必要十分条件として
次の4条件が満たされているときに限ることを提案しています。

(1)物質現象として情報の定義と創発がなされている
(2)情報を表現する情報表現物質が生成されている
(3)情報の読取り機構がある
(4)読取り結果の利用がある

これらを情報概念の基本的要件と名付けています。
これは、情報概念の科学的定義と言えます。



物理主義はコンピュータの現象を説明できない

2021-12-23 16:05:46 | 情報と物質の科学哲学
物質現象は、物理法則で完全に説明できる。
脳も物質から出来ているので、脳や心に関する現象は物理法則で説明できる。

これが哲学者が唱える物理主義(物理還元主義)というものです。
哲学の教科書には今でも出ています。

当ブログでは、情報概念を用いて物理主義は成り立たないことを述べて来ました。
今回は、心や意識という超難解なものではなくコンピューターに関する現象を物理主義だけで説明できるかについて分析します。

コンピューターが物質で出来ていることは自明です。
従って、コンピューターに関する物質現象は物理法則で完全に説明できることも自明です。

しかし、コンピューター内を行き来するパルスが数値情報を担うことや、コンピューターが計算を行っていることを物理法則で説明することは原理的に不可能です

物理学は、パルスの電圧や電流について説明できますが、このパルスが情報を表現していることは説明できません。
物理学は、物質が情報を表現することに関しては何も言えないのです。
従って、コンピュータに関する現象を物理法則だけで説明できるとする物理主義は成り立ちません。

同じ理由で、測定器に関する現象も物理法則だけでは説明出来ません。






渡辺正峰が目指す「意識の測定」は不可能!

2021-12-22 11:01:00 | 人工知能・意識
渡辺正峰『脳の意識 機械の意識ー脳神経科学の挑戦』、中公新書2460(2018)
の中で意識と機械とを接続させる研究について詳述しています。

著者による意識の定義はクオリアと同義です。

このクオリアは、非物質的な存在なのでどんな手段を用いても物理的に測定することは原理的に出来ません。

著者は、そのような測定を間接的にすることが出来るとしていますが、間接的なものはどこまで行っても間接的なものであることに変わり有りません。
著者が嫌う無限後退に自ら陥っています。

クオリアや意識そのものを測定することは原理的に不可能なのです。

従って、著者が目指す「意識の科学」や「意識の自然則」は幻想にすぎません。


空前絶後のナンセンス「シリコンチップ脳」

2021-12-22 09:42:04 | 人工知能・意識
心や意識の哲学の本には必ず「脳のニューロンをシリコンチップで置き換えるとどうなるか」という話が載っています。
当ブログで度々触れているチャーマーズの大著も同様です。

哲学者は、この種の話題が大好きなので喧々諤々の議論を続けています。

しかし、脳にあるニューロンの数は1000億個くらいあるのです。
仮に、ニューロンと殆ど同じ機能を持つシリコンチップが出来たとしても、それを生きているニューロンと置き換えるというのは実現不可能です。

実現不可能なことに対して「それが仮に出来たとするとどうなるか」と問うこと自体が無意味なのです。
この種の問いに関して議論することは哲学者の大好きな机上の空論に過ぎません。