情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

必要条件による説明と十分条件による説明

2021-12-15 10:51:31 | 情報と物質の科学哲学
物質現象の説明には必要条件によるものと十分条件によるものとがあります。

物理学者は、物質からなるシステムは物理法則に従うのでその現象は物理法則だけで説明出来ると考えます。

脳も物質からなるシステムなので物理法則だけで説明できる筈だと考えます。
しかし、情報概念が欠かせない測定器の現象でさえ物理法則だけでは説明できないのです。
物理法則による説明に加えて情報概念による説明が不可欠です。
しかし、物理法則に情報概念はありません。

測定器、コンピューター、脳などにおける物質現象が物理法則に従うことは必要条件です。
しかし、これらのシステムには物質現象としての側面のほかに情報現象(情報概念が関わる現象)としての側面があるのです。
この情報現象を説明することが十分条件になります。

心身問題は擬似問題 心身問題の前に情報物質問題の解決を!

2021-12-15 09:56:25 | 情報と物質の科学哲学
心と脳という異質なもの同士が何故影響し合えるのかを問う心身問題は、未だに哲学、心理学、脳科学などで議論され続けています。

脳の神経回路網には膨大な情報が行き来していることは脳科学で実証されています。
それらの情報は、クオリアや意識の創発に影響していることは疑いありません。
しかし、それらの情報が脳でどのように定義され、どのように表現されているかについては殆ど解明されていません。

それにも拘わらず、物理主義者、哲学者、心理学者、脳科学者らは神経回路網に流れる情報の部分を無視して神経回路網という物質と心という非物質とを直接結びつけて議論しています。
このような態度は、極めて非科学的なものです。

神経回路網における現象の説明に情報概念が不可欠なことは前述の学者も知っています。
しかし、情報概念は物理学にはありません。

このサイトの一連のブログでは、物質と情報という異質なもの同士が何故影響し合えるのかという情報物質問題について様々な角度から分析してきました。

脳内部でも当然この情報物質問題がある筈です。
脳科学者らは、心身問題について空しい議論を続けるよりも先ず情報物質問題を解決すべきなのです。

詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!




客観と主観のあいだにあるシステム観

2021-12-14 17:29:33 | 人工知能・意識・脳科学
物理現象は客観的なもので、物理法則で厳密に説明できます。
これに対して心理現象は主観的なもので物理法則では説明できません。
客観的なものか主観的なものかのどちらかしか実在しないとするのが従来の考えです。

実は、この両者のあいだにあるのがシステム観と名付ける概念なのです。
コンピュータやロボットなどのシステムに欠かせないのが情報です。
この情報概念はシステムが定義して創発するものであり、客観的なものではありません。
そもそも、物理学には情報概念がないのです。
物理法則では情報に関する現象を説明することは出来ません。

コンピュータやロボットなどに関する現象を説明するためには、計算規則や判定規則などの情報則と名付ける規則が不可欠なのです。
システムにおける情報、計算規則、判定規則などはシステムが定義するものです。
従って、コンピュータやロボットなどに関する現象はシステムに依存します。

この依存性は、客観と主観のあいだにあるものなのでシステム観と名付けます。
敢えてシステム観という概念を持ち出す理由は、意識という捉えどころがないに関する主観の謎の解明への橋渡しになると思われるからです。

ロボット達が異なる環境で行動すれば、ロボット達に異なる個性が出現します。
これは人間の個性に対応するものです。





人工意識に関する唯一の学術誌:人工知能 Vol 33 No.4

2021-12-11 19:37:39 | 人工知能・意識・脳科学
人工知能学会雑誌が人工意識研究特集を載せています。
人工知能 Vol 33 No.4(2018年07月号)
研究者がどのような意味で人工意識という用語を使っているのかが分かるので大変有益です。

言うまでもなく人工意識は人間の意識とは全く違いますが、研究者はいずれ人工的に人間の意識に近いものが出来るのではないかと期待しています。

一方、人工知能研究の第一人者の一人である松尾豊の『人工知能は人間を超えるかーディープランニングの先にあるものー』、角川EPUB選書021(2017.1)では人工意識について全く触れていません。人工意識の意義について人工知能研究者間で広く認知されているとは言えないようです。

茂木健一郎『クオリアと人工意識』

2021-12-08 17:10:33 | 人工知能・意識・脳科学
茂木健一郎『クオリアと人工意識』、講談社現代新書2576(2020.7)
クオリアの伝道師が久しぶりに書いた本です。

人工知能に関連する話題を極めて広い範囲で紹介しており、著者の博識ぶりに驚かされます。

私は、茂木が人工意識についてどのような分析をしているのかを知りたいためにこの本を購入しましたが、人工意識に関する説明は殆どありません。
その点は期待外れでした。

哲学的議論が大半を占めています。
本のタイトル『クオリアと人工意識』は、内容を反映していません。
「人工意識」が入っている以上、これに関する研究の紹介もすべきでした。
看板に偽りありのタイトルです。

人工意識の研究でよく参照されるトノーニの統合情報理論についても一切触れていません。
茂木は、この理論を評価していないのでしょう。

茂木は、意識の定義について議論するのは無駄であると断言しています。
それにも拘わらず本書の至る所で意識について触れていることに釈然としないものがあります。