情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

サーモスタットに意識がある!?

2021-12-19 10:21:33 | 哲学
哲学者は、サーモスタットに意識があるかないかということについて真剣に議論しています。
例えば、チャーマーズの大著『意識する心ー脳と精神の根本理論を求めて』にも数ページにわたってこの議論を行っています。

その中で、”サーモスタットと脳には何の違いもない”と主張しています。
これは事実に反する暴論です。
何故なら、サーモスタットは機械であるのに対して脳は生命体だからです。
機械と生命体を同一視することは出来ません。

サーモスタットに関する現象は物理法則で完全に説明できますが、脳に関する現象は物理法則だけでは説明できません。

脳も物質なので物理法則だけで説明できるとする物理主義は、根本的に間違っています。
何故なら、物理主義はニューロンが情報を運んでいるという事実を説明できないからです。
情報概念は、物理学の対象ではありません。

哲学者たちは、よく前述のような暴論を吐きます。
彼らは、もともと議論好きな集団なので好き勝手な主張をし合って議論を楽しんでいます。

あらゆるものに心があると主張する汎心論もその類です。

哲学者が好き勝手な主張を科学の分野(例えば脳、人工知能、ロボット)で行うと、一般の人に混乱を与えます。


情報創発という概念の必要性

2021-12-17 09:42:33 | 情報と物質の科学哲学
創発(そうはつ、英語:emergence)とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。(Wiki)

本ブログで多用している創発という用語は、この意味ではありません。

測定器は測定値という情報を生成しています。
この測定値情報という概念そのものは、物理学(物理法則)にはなく、測定者の脳内部にあるのです。
この事実はあまりにも当然すぎるので、物理学者は注意を向けません。

しかし、測定に関する現象を説明するためには、物理法則に含まれない測定値情報という概念が不可欠なのです。
測定器という物質が非物質的な測定値情報を生成している状況を理解するために、情報創発という概念を提案します。

クオリアの神秘性を解消する

2021-12-15 11:13:22 | 情報と物質の科学哲学
感覚受容器には外部入力物質を情報に変換する創発的機能があります。
各受容器から出力されるパルス列は、受容器の如何に関わらず同じ形式のパルス列です。

これらのパルス列は各受容器に対応する感覚野に入力されます。
各感覚野は、パルス列が表現する情報からそれぞれのクオリア(匂いや痛みなど)を創発します。
クオリアは、受容器情報の読み取り結果なのです。
進化の過程で脳が感覚野という神経網を獲得し、その感覚野がクオリアを創発するのです。
感覚野にはそのような創発機能があるのです。

クオリアをこのように捉えればクオリアの神秘性を解消できるのです。

脳の進化の過程をみると初期の哺乳類には運動野や感覚野のみしかないので、クオリアによって外界の情報を獲得しています。

このようにクオリアには立派な機能があるのです。
クオリアに神秘性を帯びさせる必要は全くないのです。
クオリアがなければ動物は生きられません。

霊長類になると運動野、感覚野に加えて大脳皮質連合野が形成されたのでクオリアを初め、言語や高度の知能を獲得しました。



量子の絡み合いは測定値情報の絡み合い

2021-12-15 11:00:04 | 物理学・量子力学
量子情報科学において量子の絡み合いを利用したコンピューターや暗号通信などが研究されています。

量子の絡み合いは、2つの量子に関する物質現象として理解されています。

ここでは、量子の絡み合いを測定値情報の絡み合いとして理解すべき根拠を示します。

量子の絡み合い自体を物質現象として確認することはできません。
電子のスピンや光子の偏光などの実験で得られる測定値情報によって初めて確認できるのです。
従って、量子の絡み合いは物質的な絡み合いとしてではなく測定値情報の絡み合いとして理解すべきなのです。

このように量子の絡み合いを理解すれば離れた観測者間の情報伝達が光速を超えるというEPRのパラドックスを解消できるのです。