毎年、コバノミツバツツジが咲くころ、友人と二人で中山連山を歩く。
いつもは連休に入ってからだが、花が散ってしまっているので、今年は1週間早く、21日の日曜日に出かけた。
藤棚がある公園から山に入る。白藤が満開で、その藤を見に来ている人が結構いた。いつもはアブハナバチがブンブン飛び回っているのだが、今年は数が少ない。
4月に入ってから、寒さがぶり返す日が多かったせいだろうか。
友人ともども、年のせいで足腰が弱ってきているので、ゆっくりと歩く。
曇り空でも、歩き始めると汗びっしょりになって、髪を染めて間もなかったので、帽子の縁が染料で青く染まってしまった。これもいつものことである。
登り始めたのが11時を過ぎていたので、会う人は、下りの人ばかり。それも、若い人より我々と同年配の高齢者が多い。
はあはあ言いながら登っていくと、高齢の男性のグループが突っ立っている。
かれらが立ち去ってから、私たちは石の上に腰かけ、チョコレートを口に含んでお茶を飲んだ。
友人曰く。「さっきの人たち、立ったままだったでしょ。座ると立ち上がるのにしんどいから、立ったまま休憩してたんよ」。
たしかに、高齢者は一度座ると、なかなか立ち上がれない。
私たちがお弁当を食べるのは、一度沢に下りてから。水の流れが気持ちいいし、日陰だから涼しい。
ところが、下ってきた男女の高齢者グループから、「こんなところで食事したら、石が落ちてきて危ないよ」と声をかけられた。
「いつもここで食べているから大丈夫です」と言うと、「この人は登山のプロだから」と、女性が男性を指さして言う。
たしかに周りは、土が崩れたあとがあったが、いかにも「プロの言うことを聞け」と言われたようで、少しカチンときた。
親切心で言ってくれたらしいが、もう少し言いようがあるのではと思う。
腹ごしらえを済ませて、沢を登る。頂上までには、急な、岩だらけの登りが続く。体がなまっているうえに、お腹がいっぱいになったあとなので、息苦しい。
それでも、昨年登った時よりはましなような気がする。
昨年、駅までのバスが1時間に1本しかないところに引っ越したので、急ぐ時と炎天下をのぞいては、歩くようにしている。
それで少しは足腰が鍛えられたかもしれない。
途中会った女性が、頂上近くがいちばんツツジがきれいだと教えてくれた。
ちょうど満開の時期だが、花をつけているツツジの木そのものが少ない。
昨年夏の猛暑と台風、秋の大雨、暖冬という異常気象で木が弱って、花をつけていないのだ。
頂上にはいくつかのグループが立ったまま、休憩していた。座るのに適当な岩などがないせいもあるが、やはり一度座ってしまうと、立ち上がるのがしんどいからなのだろうか。
私たちは紙袋を敷いて座り、甘いお菓子で一服した。
それから奥の院目指して降りる。トイレと聖水を汲むのが目的だ。聖水を持ち帰り、家でコーヒーをいれるのが毎年の楽しみなのだ。
奥の院はきれいに整備されて、昔のような雰囲気は失われたが、それでも、高木が茂っていたり、ツバキをはじめ、いろいろな花が咲いていて、好きな場所だ。
ベンチでコーヒーを入れて一服。
それから阪急中山観音駅まで降りるはずだった。
ところが、途中の夫婦岩で道を間違えたらしい。出たところが売布きよしガ丘という新興住宅地。売布神社駅までアスファルトの道を下っていると足が痛い。
中山観音へ出て、駅から国道に出たところにある「マリーアンジュ」というケーキ屋さんで、ゴルゴンゾーラのチーズケーキと紅茶をいただいて、疲れをいやすというのが最初の予定だった。
友人は途中下車するのは面倒だと、そのまま電車に乗って帰って行った。
私だけ中山観音で降りて、まず駅前の苗屋さんで、ニガウリの苗を買った。これも例年のこと。
マリーアンジュのケーキはどれもおいしいが、とりわけ、ゴルゴンゾーラのチーズケーキは、ほかではお目にかかったことがないし、途中下車してでも食べる価値があると私は思う。
ところが、この日はそのケーキがなかった。
ショック! ゴルゴンゾーラチーズが明日にならないと入荷しないのだそうだ。
ご主人(パティシエというのかな)が挨拶にきて、ゴルゴンゾーラのチーズケーキを作るようになったいきさつを話してくれた。
酒飲みで、ケーキをあまり好きではない知人にもおいしいと言ってもらえるケーキを作ろう、酒を飲みながらでも食べられるケーキを作ろうと、研究を重ねて作り上げたのだそうだ。
ゴルゴンゾーラの塩味と合わせるのに何をどれだけ使うか、いろいろ組み合わせて工夫したそうである。
この話を聞いたうえは、また近いうちに、店に寄って、ケーキを食べないわけにはいかない。
その日は、他のお勧めのケーキと紅茶をいただいた。
とてもおいしくて、山登りの疲れも十分癒やしてもらった。
来年はツツジがたくさんの花をつけますように。