今日、甲状腺の検査のため、専門医のいるクリニックに行った。
高コレステロールと骨粗しょう症の治療に通っている漢方クリニックで、頸動脈のエコー検査をしたとき、甲状腺に影がある、血液検査ではがんなどの異常は見つからなかったが、念のため専門医に見てもらった方がいいと言われた。そこで紹介されたAクリニックはたまたま私が住んでいる市にあって、電車で2駅のところにある。予約の電話を入れたとき、1か月先しか予約が取れないといわれ、どれだけ混んでいるのだろうと少し心配だったが、予約時間からそれほど待たされずに診察室に呼ばれた。
院長は男の先生で、有名な甲状腺専門病院などで大勢の患者を診た経歴がホームページで紹介されていたが、私の担当は中堅といったふうのD先生という女性医師で、問診も丁寧で分かりやすい。何より、こちらの言い分をきちんと聞いてくれるのがよいと思った。
私は20数年前に右甲状腺にポリープが見つかって、全摘手術をしている。左まで摘出するはめになっては困る。
まず、エコー検査(超音波検査。断層撮影法)を受ける。すぐに結果説明をしてくれた。影が3つほどあって、1センチ以上のが1個、1センチ以下が2個映っている。その影が悪性かどうか、細胞液を採って検査すると言う。診療明細書には、「甲状腺穿刺又は針生研、細胞診(穿刺吸引細胞診)」と表記されていた。
以前、右の甲状腺を取ったとき、初め診察を受けたときは、それほど腫れてはいなかったが、悪性か良性か見るために、注射で細胞液を採取した。帰宅後、みるみるポリープが大きくなって、気管や食道を圧迫し、呼吸しにくくなったり、水さえ飲みにくくなった。たまたま年末だったので不安を抱えたまま年を越し、病院が開くとすぐに病院へ行って、即手術という事態になった。
その時の体験を話すと、稀にそういうこともあるという。注射針を抜いた後、内出血が止まらないために起こるのだそうで、少量だと血液は細胞に吸収されるのだが、内出血が止まらないと、大きく腫れてしまうのだそうだ。
そんなことにならないように、採取後5分間は看護師が注射をした跡を押さえている、その後10分間は自分で押さえていてもらう。その後、出血が止まったかどうか確認してから帰ってもらうので、心配はないと言った。
右甲状腺を摘出したのは大学病院だったが、そんな説明はおろか、注射した後、出血を止める処置もしてもらった記憶がない。大体、患者への簡単な説明もなく、まず手術ありきで進められていく。手術日を決めるという段になって、私がちゃんとした説明をしてほしいと言ったら、担当の教授はびっくりした様子で、あわてて助教授に説明をさせた。まだ、インフォームド・コンセントという言葉が一般的でないころの話だ。
今から思えば、大学病院に行ったのが間違いだった。甲状腺専門病院を紹介されたのだが、その病院は我が家からは遠く、我が家の目の前にその大学病院があったので、そこで診てもらうことにしたのだ。甲状腺専門病院で診てもらっていたら、手術をしなくても済んだかもしれないとずっと思っている。術後、麻酔が切れるときに痛みがひどくて、とても苦しい思いもした。
担当の教授は腸の難病の治療で有名な先生だったが、甲状腺に関してはどれだけ見識があったか疑問だ。手術後も、教授の回診というくだらない儀式に患者まで動員された。患者よりも教授の方が威張っているのだ。
ということで、エコー検査の後、看護師さんによる血液採取。そのあと、また診察室に入って、D先生がエコーを見ながら、細い注射針で細胞液を採取した。
注射を刺すときのチクっとした痛みの苦手だが、この時はとても痛かった。針を刺したときだけでなく、細胞液を採っている間中、痛かった。こんなに痛いのだから、内出血するのは当たり前だと思った。
歯医者でもそうだが、私は診療台の上では異常に緊張して(今日はリクライニングシートだったので、いくらかましだったが)、終わるとへとへとになる。どんなに緊張すまいと思っても、体ががちがちに固まってしまうのだ。
先生が話されたように、出血が止まったことを確認して、今日の診察は終了。結果は2週間後に出る。
万が一、以前のように腫れてきたときのために、診療時間内ならいつでも来院するように、診療時間外のときは、提携している救急病院へ連絡するようにと、連絡先のメモを渡された。いくら時代が違うと言え、大学病院とのあまりのサービスの違いに驚いた。
もうひとつ驚いたのは、診療費。検査を3つもしたとはいえ、5000円以上もかかった。70歳を超えた先月からは、それまで3割だった自己負担分は2割になったが、医療保険がなくて全額支払いになると、たった2時間の診療で2万5000円にもなる。
医療費がなくて、検査も受けられず、治療も受けられない人にとって、金の切れ目が命の切れ目だなあと、いろいろ考えさせられた。