「流浪の月」凪良ゆう著
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。
わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい──。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
(表紙裏の紹介文)
両親が消えたあと伯母に引き取られた更紗はその家に居たくなくて公園のベンチで本を読みながら遅くまで過ごす日々。
その公園にはいつも青年がベンチで過ごしている。
彼の名は文といい19歳の大学生。
雨が降り出したある日「うちに来る?」と言われ付いていく更紗。
更紗は伸びやかにすごし、彼女の自由さに感化された文は「母親の育児書」の呪縛から少しだけ解放された日々。
それは誘拐事件として報道され、
二ヶ月後に文が小児性愛者として逮捕される。
更紗は伯母の家に戻った夜の行動で養護施設で暮らすことになる。
成人してからの再会。
ネットで暴かれる過去。
被害者と犯罪者という見方で判断される二人。
本当はそうじゃないと言葉を重ねても、それはストックホルム症候群とみなされ、
二人に貼られたレッテルは剥がれない。
事実と真実は違うのに、他人は見たいようにしか見ないもんだ。
一度思い込んだら別の見方をしようとはしないしな。
「彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわからない」
この言葉に尽きる。
思うところがあって、ちょっときつい心持ちの本でした。