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夏への扉 新旧

2009年08月27日 | SF



これを読んでSFにはまった人が多いんでしょうね。
わたしもそうでした。
30何年ぶりに新訳版を読み返すと、オトナになっている分、見えてくることもあるものです。話は会社の株と発明品の特許権についての帰趨を追っているのですが、リッキーの可愛らしさがこの物語中で一番の魅力なのでは、と思ってしまいます。
ロリコンと言われようと、男につくす少女のような女が最高、と思われていたのか。もう一人のサブ-ヒロイン、ベルは男たちを騙して手玉にとる役をふられているわけで、こっちは最低の女、というわけでしょう。ストーリーテリングは抜群、とまではいきませんが、手練れですねえ。結末を知っていても読ませてしまいますからね。
発明品の特許権、会社の株、投資、この3つは未来でも現在と同じ価値を持つような発想のしたには、ハインラインが生きていた当時のアメリカの資本主義経済システムが透けて見えます。現在は、社会を変えるほどの発明が町工場では出来ないし、株はすぐに紙くず(いま株券は紙でもないし)になるし、何十年も確かな投資先なんてまず無いでしょう。
でも、未来は今日より素晴らしい、というナイーブな未来信仰こそ、いまのわれわれが失くしてしまったものですし、二度と手に入らないもの、それをこの作品は備えているんです。
個人的には旧訳版の「文化女中器」という語感が気に入っていたことを思い出しました。新訳版も悪くないですが、「ばんのうフランク」ではあまり万能そうに思えないんすよ。表紙も旧訳版のほうがいいなあ。
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