spin out

チラシの裏

室町時代の一皇族の生涯

2015年05月10日 | others
先入観もなにも無く読んでみたのですが、たんなる室町時代の貴族の日常生活の記述だけと思いきや、
途中で本格ミステリに豹変。こりゃ驚きました。

「看聞日記」の著者は貞成親王で、世が世なら帝であってもおかしくない血筋でしたが、
祖父、父と運の悪さにより傍流へとおいやられて血筋は良いけれど政治力は皆無。
日記に愚痴を書いてウサを晴らしている内向型のお人らしいのです。

ところが父親が亡くなった後、同腹の兄王が宮家を継いだのはいいが、兄王も急逝してしまう。
雷雨だった夜のその現場にただ一人居合わせたのが弟の貞成親王、
しかも兄王は父が生きている頃から賭博を開いた形跡があり、
弟に内緒で領地をなにやらしようとしていたらしい。
こんな状況から巷では貞成親王が兄を毒殺した、という噂がたつ。
さらに数週間前に兄を訪ねてきた異様風体の自称医師。

まるで横溝正史のミステリじゃないですか。
カーの「エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件」とかね。

室町時代の一皇族の生涯の著者、横井清は、そのことについて、
(1)日記に書いてあるとおりに偶然の出来事 
(2)貞成親王本人の知らないところで貞成親王擁立派の介入があった 
(3)貞成親王本人が関与した
の3つの仮説をありえたと思われる確率の順に並べてみたとのこと。
著者は(1)の偶然説で、(2)か(3)ならばなんらかの記述が日記にあるはずだが、
「本当に」戸惑っているようなので、偶然の出来事だったとしています。

著者が次第に貞成親王と一心同体みたいになっていく過程もあり(?)、
献上用の鯉鮒を釣る場面では、同じような釣り好きの一面も露呈してしまう。
楽しい本でした。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 紫式部日記&和泉式部日記 | トップ | 放課後のプレアデス »

コメントを投稿

others」カテゴリの最新記事