県立安房拓心高等学校を視察しました

2012年02月29日 23時58分55秒 | 活動報告
皆さん今晩は。
今年は4年に一度のうるう年。
貴重な本日2月29日は、関東各地で積雪となる寒い日となりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。

さて、昨日28日は新創かつうらのメンバーと共に、千葉県立安房拓心高等学校を視察して参りました。

安房拓心高校は、千葉県内に4つある「総合学科」開設高校の一つです。
同じ総合学科設置校である勝浦若潮高校においては、長らく定員割れの状態が続き、現在県教委による統合案の対象校となっている一方で、
安房拓心高校においてはその定員数を維持する事に成功しており、また、卒業後の進学率・就職率・地元就職率も非常に高く、平成23年度「魅力ある高等学校づくり大賞」で教育長賞を受賞するなど、高い実績を残しています。
そうした高い実績を有する安房拓心高校の取り組みや、教育現場の見学などを通して、総合学科設置校の意義や今後の在り方を学ぶべく、今回視察を行いました。
また、伊藤校長先生からお話を伺う事も出来ました。

安房拓心高校の前身は安房農業高校ですが、平成16年(勝浦若潮高校と同時期)に総合学科に移行、名称を変更し、現在に至ります。

安房拓心高校では、1年生時は基礎科目を学習するとともに自らの進路を見極める期間とし、2年生からは生徒の希望により、文理、園芸、畜産、土木、調理の5系列に分かれ専門的な授業を行っています。
各系列ごとの専門性は非常に高く、また系列ごとの専門設備も充実しています。
高校所有の農園やビニールハウス、牧場、ハムやパンなどの製造設備もあり、生徒たちは実習を通して高度な技術を身に付ける事が可能となっています。
また、例えば調理系列では卒業時に調理師の資格が取得出来るなど、系列ごとの関係資格の取得にも非常に力を入れているようです。

授業を見学してみて何より素晴らしいと感じたのは、生徒の皆さんの授業態度がとても真面目で、一生懸命である事。
どのクラスも、突然のオジサン達の訪問にもかかわらず、浮き足立つ事も無く、またひそひそ話をする訳でもなく、先生の指導に耳を傾け、熱心に授業に取り組んでいたのが印象的でした。
それでいて挨拶も笑顔でしっかり出来ているし、農園実習などではみんなとても楽しそうに授業に取り組んでいるのも印象に残りました。
我々会派メンバーの中の会話でも、
「みんな真面目に、楽しそうに授業受けてるなあ」
「こんな環境で勉強出来たら、きっと農業やりたくなるに違いない」
「自分も入りたくなって来た」
といった意見が出るくらいでした。

視察の様子




また、地元へのガイダンスや、学校で育てた農作物の地元への販売、地元小中学校への園芸ノウハウの提供、廃道を復活させるハイキングコース作りなど、
さまざまな地域貢献活動を通じて地域との連携を深めているのも、素晴らしい取り組みだと感じました。
こうした地道な活動を通じて地域との信頼関係が生まれ、地元進学率や地元就職率の高さに繋がっているのだと思います。
校長先生のお話によれば、地元小学校の遠足の場として高校の牧場なども公開しているそうです。
小さい子たちは学校で飼育しているウシやダチョウを見てきっと喜ぶでしょうね。そうした地道な取り組みには感服するばかりです。
高校にとって、学力向上の取り組みはもとより、地元との連携や信頼関係の熟成、ガイダンス等の実施、協力関係を築く事がいかに大切かを学ぶ事が出来ました。

伊藤校長先生はじめ先生方、生徒の皆さん、本当に有り難うございました!


さて、今回の視察で感じた事を、少しだけ書こうと思います。


総合学科にはメリットもあればデメリットもあります。
しかし、県教育委員会は総合学科の素晴らしさを説くばかりで、いすみ地区の3校統合案についてもまるで「総合学科を設置すれば大丈夫」というような説明が先行しており、
これについては私も以前から疑問を感じていた所です。メリット・デメリットをしっかり把握し、地域ごとの特性や高校の個性に合わせた学校運営を行わなければ、うまく行く筈がありません。

総合学科のメリットは、授業の選択の幅が広く、また1年次に基礎を学ぶことで2年次から何を学びたいか、じっくりと選択する時間が出来る点でしょう。
自らの希望進路に向けて、自己を見つめる学習時間(産業社会と人間)がある事や、夢の実現に向けて自ら2年次からの系列を選択し、専門的な授業を選択、実習する事が出来るため、
じっくりと自らの将来を考えながら、幅広く専門的な学習をする事が出来ます。

一方、総合学科のデメリットは、1年次の基礎学習期間が、入学当時から高い専門性を求める生徒にとっては足かせとなりかねない事、
そして、各系列ごとの専門性を高めれば高めるほど、専門学科設置校との差が無くなり、同時に文理系列等の進学を目指す系列の存在感が薄まってしまう事でしょうか。
また、総合学科の特徴は「授業を幅広く、自由に選択出来る事」ですが、これについても少し疑問を感じます。
授業を幅広く選択出来る、ということは、結局生徒の学力知識が「広く浅く」という状態に陥ってしまいがちで、その専門性が薄まる事にもなりかねません。
(総合学科と言っても色々あり、安房拓心高校においては、大学のように他学科の授業を自由に履修したり出来る訳ではなく、各系列ごとに履修出来る専門授業はある程度限られているとのことでした)

安房拓心高校においては、総合学科の有する「メリット」を最大限に活かして生徒のモチベーションを高めると同時に、
過去の農業高校としての伝統や経験、設備を活かして各系列の高い専門性を維持する事によって、個性的で特色ある魅力的な高校づくりに成功しておられるように感じました。

私は総合学科設置校にこそ、高い専門性が必要だと思います。
現在、県教育委員会による大原・岬・勝浦若潮高校の統合案が問題となっています。
大原高校は普通科と健康スポーツ科。
岬高校は普通科と園芸科。
勝浦若潮高校は水産高校としての実績と、海洋科学系列を有する水産系総合学科。

3校それぞれ特徴ある専門学科を有していますが、もしこの3校が統合して総合学科となった場合、それぞれの専門性を維持したまま統合する事が、果たして可能なのでしょうか?
各校の持っていた個性は失われ、それこそ「広く浅い」知識しか学べない、目的の見えないあいまいな総合学科設置校になってしまわないでしょうか。
私には3校統合のメリットがどうしても浮かびません。
メリットどころか、むしろ、もし3校が統合しても、総合学科のデメリットばかりが目立つ、個性の無い器用貧乏な高校になってしまう様な気がしてなりません。
ましてや、県教委の統合案が実施され、「海洋科学系列」が廃止されれば、勝浦若潮高校が維持して来た水産高校としての伝統や歴史、個性は永遠に失われてしまいます。
(そもそも、総合学科の施設や園芸科の専門施設を、大原高校の狭い敷地内に新たに建設する事が可能なのでしょうか?)

私は、各高校の魅力や専門性を高め、特色を活かした地域に信頼される高校づくりを実践して行く事こそが大切だと、今回の視察を通して感じました。
県教育委員会による軽卒極まる3校統合案には、改めて反対します!



追伸:
安房拓心高校農場で6日前に生まれたばかりの仔牛。カワユス。

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