徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

特別展 美の求道者 安宅英一の眼 @三井記念美術館

2007-10-15 | 陶磁器
特別展 美の求道者 安宅英一の眼
安宅コレクション
2007年10月13日から12月16日
三井記念美術館

大阪市立東洋陶磁美術館は開館25周年を迎え、この10月から改装ということで、安宅コレクションの巡回がはじまった。わたしのように、安宅コレクションをきちんと拝見したことがない者にとっては、うってつけの機会と思って、東京まで名品がやって来るのは嬉しい。安宅コレクションは約1000点。そのうち、今回の企画では、大阪展では202点が展示されたようだが、東京展では展示スペースの関係で、126点しか展示されていない。一寸残念。

第一室から第三室にまずは、中国陶磁の名品がならぶ。
  • 加彩婦女俑 唐時代 8世紀中葉 図録81 広田不狐斎氏旧蔵
  • 国宝 飛青磁花生 龍泉窯 元時代13世紀から14世紀 図録89;鴻池家伝来、器形 玉壷春
  • 重文 木葉天目 吉州窯 南宋時代 12世紀 図録91;加賀前田家伝来
  • 重文 白磁銹花牡丹唐草文瓶 定窯 北宋時代11から12世紀 図録86;定窯白磁に鉄泥で褐色の文様。器形は太白尊。
  • 重文 青磁刻花牡丹唐草文瓶 耀州窯 北宋時代11から12世紀 図録87;彫が深いのが印象的。器形は吐嚕瓶
  • 青磁水仙盆 汝窯 北宋時代11末から12世紀初 図録84;日本にある汝窯三点のうちのひとつ。現在個人蔵(川端康成氏旧蔵)の汝窯の青磁盤は泉屋博古館分館で開催された「中国陶磁 美を鑑るこころ」(2006)にてで拝見したが、もう一点は何処?
  • 青磁八角瓶 南宋官窯 南宋時代 12世紀 図録85;F.C.ハリソン氏旧蔵(1903年)、故宮蔵品票「第七百五十一號」。仇焱之氏がクリスティーズ・オークションに依頼しで落札。太陽光で見ると釉色が美しいとのこと。もう一度、大阪市立東洋陶磁美術館を訪れないといけない。
  • 重文 緑釉黒花牡丹文瓶 磁州窯 北宋から金時代 12世紀 図録82;仇焱之氏から購入
  • 黒釉刻花牡丹文梅瓶  磁州窯 北宋から金時代 11から12世紀 図録83
  • 重文 青花蓮池魚藻文壷 景徳鎮窯 元時代14世紀 図録93
  • 重文 瑠璃地白花牡丹文盤 大明宣徳年製 明 宣徳年間(1426-35)図録98
  • 重文 法花花鳥文壷 明時代 15世紀 図録99;仇焱之氏から購入

  • 国宝 油滴天目 建窯 南宋時代 12から13世紀 図録88;豊臣秀次所持、西本願寺、三井家、若狭酒井家と伝来。

    途中から気がついたが、陶磁器以外の説明がガラス面に説明がある。安宅氏の入手の逸話だ。油滴天目を若狭酒井家の当主から、パレスホテルで緊張の面持ちで譲っていただいた逸話は、安宅氏がこうやって集めていたのかと髣髴とさせる。

    また、
    茶室(第三室)
  • 青磁鳳凰耳花生 龍泉窯 元時代13世紀 図録外
  • 重文 清拙正澄墨跡 霊致別称偈 室町三井家

    第四室
    ここからは、いくつか目に付いた品を。
  • 重美 三彩貼花宝相華文壷 唐時代・7世紀後半 図録111;唐三彩の壷
  • 青磁長頸瓶 銘「鎹」龍泉窯 南宋時代12世紀から13世紀 図録113;鎹(かすがい)で継いだ青磁瓶
  • 重文 青磁鳳凰耳花生 龍泉窯 南宋時代12世紀から13世紀 図録112;丹波・青山家伝来。債権担保物品であった情報を得て、担保をはずして手に入れたという。
  • 青磁管耳瓶 哥窯 南宋時代・13世紀;くすんだ白地に黒褐色の貫入がはいっているのが哥窯の特徴という。哥窯は真贋が難しいが、著名な研究者のみなが真正と認めたという。仇焱之氏からの購入。造形といい、釉色といい、控えめだが、さすが青磁美しい。

  • 重文 白磁刻花蓮花門洗 定窯 北宋時代・11世紀 図録52;ロンドンのP・ディヴィッド財団蔵のものとともに定窯深鉢として双璧とのこと。口縁部には銀の覆輪が嵌められている。
  • 五彩松下高士図面盆 大明萬暦年製銘 景徳鎮窯 明時代 万暦1573-1620 図録54;表面にスレ傷ひとつない。
  • 紫紅釉盆 鈞窯 明時代 15世紀 図録53;
    図録52-54の三点は、広田不狐斎氏が三種の神器として秘蔵した名品。それが、安宅氏に知れることになり、ついに譲ることになってしまった逸話が書かれていた。また、安宅氏が「コレクションを作り上げるの印象に残る人は」と問われて、広田不狐斎氏、仇焱之氏の二人を答えたそうだ。なるほど。

  • 重文 青花 枇杷鳥文 盤 明時代 永楽年間1403-24;50センチ径の大型の青花盤。ゆがみのない造形。

  • 青花蜀葵文碗 大明成化年製銘 景徳鎮窯 明時代 成化年間1465-87 図録119;
  • 青花鳳凰文盤 大明成化年製銘 景徳鎮窯 明時代 成化年間1465-87 図録117; 
  • 青花瓜文碗  大明成化年製銘 景徳鎮窯 明時代 成化年間1465-87 図録118;
    成化年間につくられた青花の碗はパレスボールと呼ばれ、世界に十数点しか残されていないとのこと。わずかにクリームを帯びたやわらない白磁の釉色。青花の色も淡くなっておだやかになる。洗練さの極致。とのことだ。なるほどと見入ってしまった。パレスボールは、今度覚えておこう。故宮にでもいかないと拝見できないか。

  • 五彩金襴手瓢形瓶 景徳鎮窯 16世紀;図録100

  • 黄地紅彩龍文壷 大明嘉靖年製銘 景徳鎮窯 明時代 嘉靖年間1522-66 図録101;
  • 黄地青花紅彩 牡丹唐草文 瓢形瓶 大明嘉靖年製銘 景徳鎮窯 明時代 嘉靖年間1522-66 図録120;
  • 緑地紅彩 宝相華唐草文 瓢形瓶  大明嘉靖年製銘 景徳鎮窯 明時代 嘉靖年間1522-66 図録121;
    など嘉靖年間の五彩の優品が並ぶ。


    さてこのあと
    第四室から第五室は高麗時代の青磁と朝鮮時代の粉青面象嵌;
    第六室は小品。
    第七室は朝鮮時代の陶磁器が並ぶ。
    すばらしい作品ばかりだが、素養がなく、どれもこれも目移りしてしまう。

  • 青磁象嵌六鶴文陶板 高麗時代 12世紀後半 図録29;顧歩、唳天、啄苔、疎翎、舞風、警露の中国古来の六鶴図に由来するポーズとのことだが。可愛らしい。
  • 青磁象嵌竹鶴文梅瓶 高麗時代 12世紀後半 図録26;こちらも六鶴図
  • 青磁象嵌辰砂彩 牡丹文 壷 高麗時代 13世紀 図録63;
  • 青磁象嵌辰砂彩 牡丹文 鶴首瓶 高麗時代 13世紀 図録64;銅紅釉が見事な二点。

  • 白磁 壷 朝鮮時代16世紀 図録150;青山二郎氏と安宅コレクションの関係を示す稀代の一点。青山氏の箱蓋裏書 銘白袴と青山二郎の角印のラベル。
  • 青花 草花文 面取瓶 朝鮮時代18世紀前半 図録161;
  • 青花辰砂 蓮花文 壷 朝鮮時代18世紀後半 図録163;浅川伯教氏(1884-1964)旧蔵品。赤星五郎氏が譲り受ける。18世紀後半官窯の傑作。安宅英一氏から直接、大阪市立東洋陶磁美術館に寄贈された。


    図録は、以前に大阪でもみた所蔵品の図録よりカラー図版がよかったので買い求めた。2100円もお手ごろ。これが読み応えがあった。

    「開催にあったて 主催者」 安宅産業崩壊から30年、大阪市立東洋陶磁美術館開館25周年、安宅英一(1901-94)氏が他界して13年目の節目の年の開催、ということで、コレクション形成に関する功罪を問う声も消えうせ、ようやく安宅英一氏の眼の軌跡をたどり、内包するものを問い直す。とあった。

    「安宅コレクション 林屋晴三」によれば、安宅コレクションは約一千点であるが、韓国陶磁793件(高麗陶磁304件、朝鮮陶磁485件、日本の茶の世界で高い評価を受けた高麗茶碗はない)、中国陶磁は144件(漢から唐代43件、宋時代33件、元明時代68件。)など。高麗・朝鮮陶磁はあらゆる作風のものが集められている、中国陶磁は名品主義的。特に朝鮮陶磁の質は韓国の国立中央博物館に劣らぬと評されている。

    「ある夏の想出-コモ湖畔のシュナーベル- 安宅英一」
    「古美術 安宅英一」
    「論考 ものをして 語らしむ-安宅英一の美学 伊藤郁太郎」。美術史専攻した伊藤氏は、昭和30年に安宅産業にコレクションのための要員として入社。そして昭和52年9月末に安宅産業が崩壊後、安宅氏に「頼みました、よ」との天の声に従い、幾多の壁を乗り越え、大阪市立東洋陶磁美術館館長を務めることになる。現職。その氏が、安宅英一氏の美学について論考している。

    つまり、この展覧会は、安宅英一氏に仕えた伊藤氏の集大成的な展覧会ということになる。キャプションが面白いのも当然。

    このほかに
    「中国陶磁の特質と安宅コレクション 出川哲朗」
    「近年の韓国陶磁研究と安宅コレクション 片山まび」
    「大阪市立東洋陶磁美術館 館長インタビュー 伊藤郁太郎」
    なども収録されている。もう一度、(展示替があるわけではないが)訪れたい。
    12月1日(土)から12月16日(日)は19時まで開館まで開館しているので、このあたりが狙い目。

    (13日)

    巡回
    福岡市美術館 2008年1月5日から2月17日
    金沢21世紀美術館 2008円2月29日から3月20日

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    4 コメント

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    Unknown (遊行七恵)
    2007-10-15 22:29:48
    こんばんは
    これは本当に素晴らしいコレクションだと思います。
    この展覧会ではやはり伊藤氏によるエピソードが面白くて仕方なかったです。
    特に広田不孤斎氏の断り文を表装した辺りなど。

    地元の名品ですから、いつでも見れる・これが好き・あれがいい・・・と言う感覚でこれまで眺めてきたものたちが、全く違う存在に見えたのも、面白いことでした。

    そういえば広田不孤斎氏の蒐集品は東博に寄贈されているそうですね。
    返信する
    広田不狐斎コレクション (ak96)
    2007-10-15 23:45:56
    遊行七恵さま
    こんにちは

    東博の第四室には必ずといっていいほど、広田氏の寄贈の品々が展示されています。また、この11月から12月にかけ、氏の故郷である富山県にある富山市佐藤記念美術館にて、広田不狐斎コレクション 中国陶磁の名品が開催されます。氏のコレクションの日本陶磁については、昨年?開催されて、図録があります。参考までに。その図録によれば、広田氏は、最後に東博にすべてを寄贈しましたが、東博の名誉館員の林屋晴三氏に託したということのようです。
    返信する
    Unknown (あべまつ)
    2007-10-16 22:17:29
    こんばんは。
    本当に安宅コレクションは素晴らしいお宝ばかりですね。大阪で夏に行ってみてきました。
    遊行さんへのコメントで、広田氏が林屋晴三氏に託されたこと、興味深いです。林屋氏は、大倉にある菊池寛美智美術館の館長さんですよね?
    繋がりの糸が見えるようです。横河コレクションも又、東博東洋館で優品を見ることができ、嬉しい限りです。
    私も早く三井に行きたいと願っています。
    青山二郎の白袴が来ていると知り、
    大阪には展覧されていなかったので、再会を楽しみにします。情報ありがとうございます。
    返信する
    Unknown (一村雨)
    2007-10-26 06:19:29
    安宅氏の入手の逸話、こちらからは
    収集家の執念を感じました。
    私はカタログを買いませんでしたが、
    じっくり読むと面白いのでしょうね。
    返信する

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