赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

③習近平独裁の風景

2023-09-03 00:00:00 | 政治見解



③習近平独裁の風景 :230903情報

昨日からの続きです。許可を得て転載しています。


■6.見捨てられている消費者、労働者

中国政府、国有銀行、不動産業者はマネーゲームを続けていけますが、実態経済の方ではさすがに
タワーマンションの建設が続けられなくなったり、新規案件がなくなったりします。

国家統計局の発表では去年1年間で、中国全国の住宅の販売面積は24.3%減、売上総額は26.7%減と激減しています。中国の統計は何割か粉飾されているので、実態はもっと悲惨でしょう。

また、消費者にとって不幸な点は、中国のマンションは完成前に購入し、頭金を支払いをします。したがって、不動産業者の方で資金繰りが苦しくなって、建設が止まってしまったら、代金は払っているのに、物件は完成しない、ということになります。

恒大集団のマンション販売だけでも、すでに頭金を支払ったのに入居できない人が160万人。中国全体では、1000万人以上だろうと言われています[宮崎、p155]。テレビでも消費者がデモをしている光景が映し出されていますが、これが理由です。

しかもマンション購入のためのローンなどで、中国国民は借金漬けになっています。現在の中国の家計の負債率(収入に対する債務)は137.9%にも達していると報じられています。日本の家庭で言えば、近年の平均世帯収入が560万円ほどですから、平均的な家庭で700万円ほどの借金があることになります。

ただし日本の場合は住宅ローンで借金があっても、購入したマンションとそれに付帯した土地を財産として持っているので相殺できます。しかし、中国の場合は、マンションは未完成で住めず、しかも土地は利用権のみでは、実体的な価値はありません。

未完成の建物、利用権のみの土地という「絵に描いた餅」を700万円も借金して購入した消費者は、マネーゲームに騙された被害者と言えます。

建設工事も当然、激減しています。農村部の若者たちが仕事がないため、都会に出て建築現場などで働いている「農民工」が2億5千万人ほどいますが、不動産開発の仕事も減って浮浪者化しています。こんな報告があります。

__________
例えば、広東省の深センでも広州でも地下道路やトンネルなどは、夜になると寝に来た農民工たちで満杯になっている。遅く行ったらもう寝る場所も取れない。[高橋他、p25]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

こうしてみると、政府、銀行、不動産業者などに務める上流階級はマネーゲームで生活を守られていますが、その一方、消費者や労働者などの下流階級は搾取されていることが分かります。北京や雄安新区を護るために、啄州の住民100万人が犠牲となったのと、まさしく同じ構造なのです。

ここまでの階級搾取を見ると、中華「人民共和国」という国名はもはやブラックジョークのようです。


■7.日本の何倍も速い出生数の低下

しかし、中国人民の不幸を考えれば、ブラックジョークなどと揶揄することはできません。中国社会のお先真っ暗ぶりは、我が国よりも格段にひどい少子化に現れています。

1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数を示す「合計特殊出生率」で、中国は2022年に1.09に下がったと報じられました。日本の1.30(2021年)よりも、一段と低いのです。人口を維持するためには、1人の女性が2人強の子どもを生まなければなりません。それが1人強では人口は急速に減少していきます。

人口過剰に苦しんでいた中国は、数十年にわたって「一人っ子政策」をとってきました。それでも2010年までの出生数は毎年2000万人以上でした。それが2022年には956万人と半減以下になってしまったのです。日本では出生数が半分に落ちるまでに40年かかっていますが、中国はわずか12年で半減になってしまったのです。

この間、一人っ子政策を廃止し、第二子容認、さらに第三子容認まで行いましたが、ほとんど効果はありませんでした。この急激な少子化の進行は、青年たちの間で「3つのしない」、すなわち「恋愛しない、結婚しない、子供をつくらない」が広まったからです。

それもそのはず。中国政府が発表した2022年4月の統計では、16歳から24歳までの若年層の失業率は20%を超えています。政府統計で20%以上なら、実際には30%以上になっているはず、と言われています[高橋他、p80]。

仕事もなく、住宅も買えなかったら、「3つのしない」で生きていくしかありません。


■8.我々の子孫に中国人民の苦難を体験させたくなかったら

こうした中国の人民の不幸な有様を見ると、「知らす」と「領(うしは)く」という政治姿勢の違いが実感できます。[JOG(736)]

「知らす」とは民の喜びや悲しみを知り、その安寧を祈る心です。大きな災害が起きたときに、天皇皇后両陛下が被災者たちのお見舞いをされていますが、それが「知らす」政治の象徴です。

そして、その「知らす」御心を実現するために、行政、自衛隊員、消防隊員たちが被災者救援に取り組みます。


一方、「領(うしは)く」とは、皇帝が人民を牛馬のような財産とみなして、搾取する政治です。中国の皇帝から見れば、水害で100万人の都市が水没しても、14億の家畜のごく一部が被害を受けただけの話に過ぎません。

現在の我が国は、中国の覇権拡張から独立をいかに護るか、という瀬戸際にあります。我々の子孫を、人為的な洪水に曝された啄州の人々、前金を払ったのに家を受け取れない消費者、仕事もなく地下道路やトンネルで夜を過ごす農民工のように、「領(うしは)く」政治の被害者にしたくなかったら、今が踏ん張り時なのです。


(了)



  お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする