赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

①中国版リーマンショック――不動産バブル崩壊の実態

2023-09-21 00:00:00 | 政治見解



①中国版リーマンショック――不動産バブル崩壊の実態 :230921情報

『習近平中国 六つの難題』のつづきになります。いま中国で起きている経済崩壊の真相を国際政治学者に語っていただきました。


中国を牽引してきた経済成長モデルの崩壊

中国経済の実態を見ると、例えば2023年4〜6月期の外国資本による対中国直接投資額は49億ドルあったのですが、これは前年同期、すなわち2022年の4〜6月期と比べて87%の減少、前年度の13%しかありませんでした。消費者物価指数も生産者物価指数も共にマイナスです。

GDPの30%を占める不動産建設部門が大不況に陥っていることは、ご存知の通りです。恒大と並ぶ碧桂園という大不動産会社がありますが、これは英語でカントリーガーデンと呼ばれている会社です。

これが2023年1〜6月期の連結決算を発表しました。最終損益は489億元(9800億円)という約1兆円近い巨大赤字だったということです。

それについて私は去年の5月に「不動産バブルの崩壊が始まっている」と話しましたが、今はゾンビ状態で政府が様々な強制措置・規制を導入して、不動産バブル崩壊が社会の表面に現れないように凍結状態にしています。しかし、それをいつまでも隠す通すことはできません。

ゾンビ状態は必ずゾンビが主体であったということがわかります。それだけではなく、これは一過性のものではありません。過去30年、40年の間、中国を牽引してきた発展モデル・経済成長モデルそのものが崩壊しているということについて、はっきりとわかります。


バブル崩壊の発端と政治闘争

不動産バブルの崩壊は、実際上2年前の2021年の9月23日に恒大集団がドル債の利払いができないということで、事実上経営破綻しています。このとき、事実上デフォルトしているのです。そのときの不良債権が195億ドル(約2兆円)ありました。このときに、このまま滅びてしまうと困るので、フリーズ状態にしたということです。それが誰の目にもわかる形で不動産バブル崩壊がその時点から始まっていました。

しかし、表向きに出ないように政府が様々な規制をしてきており、例えば、碧桂園(カントリーガーデン)を救うために中国共産党政権は、国有企業、国有銀行、地方政府、年金機構といったところに、無理やりカントリーガーデンの不動産を買えということをやって、これが表面化しないようにしてきました。

現在、その手段も全部尽きてしまい、一説よるとカントリーガーデンではディスカウントして売るべき物件は全部売ってしまったと言われています。それで1兆円の赤字ということになっているので、もう処分すべき資産も実はないということも言われているのです。

この碧桂園(カントリーガーデン)は、明らかに恒大と同じく江沢民企業であり、これは江沢民の右腕だった曽慶紅と親しい人が大きくした企業なのです。その人が作って大企業にまで育て上げました。だから、曽慶紅派というか、いわゆる江沢民派の企業であると言えます。江沢民は習近平にとって敵ですから国内政治闘争には勝利したわけです。

8月16日に恒大が不正行為をやっているということがわかりましたけど、そして18月17日にニューヨークの在米資産を保全するためにアメリカの恒大が経営破綻したという届け出をしました。これでとりあえず在米資産は確保できるように、債権者によって取られたり差し押さえられたりしないという措置をとったわけです。これは最終的に恒大も全部決着がつき、習近平派が勝ったということになります。

その利権をこれから習近平が全部取っていくということで、国内的には勝利しましたが、こういった経済不況はBRICSに習近平が出たときに言っていたように「中国経済はいよいよ大崩壊だ」ということで世界のマスコミが注目しているところで、習近平の影が薄かったということになりました。おそらくそれが冒頭の演説を欠席して国務院大臣に演説を代読させた理由の一つなのではないでしょうか。


中国版リーマンショック

中国で投資信託は非常に盛んで、みんなお金を6%、7%と言って年の利回りを約束して、庶民や大金持ちからお金を預かって運用するということをやっています。中国の信託会社は、大体15%を不動産投資に向けていると言われているのです。

だから、不動産大不況という不動産業界の崩壊がそのまま金融業界、信託業界の崩壊に繋がってきます。それでも信託会社の不動産投資残高はずいぶん減っているわけです。2019年の第2四半期ぐらいがピークでした。さすがにこれは価格崩壊が始まっているのでやばいということで、信託会社の不動産投資額が減っています。

2023年の第1四半期で1兆1280億元くらいありますということで、全部が全部ではないにしても完全に焦げついてくるということです。これは中国信託業協会の発表の数字ですから、この数字がどの程度信憑性があるのか疑わしいですが、これで一つの不動産の不況というものが、もう一つの金融業の大不況といいますか連鎖倒産に繋がってくるということがはっきりしてきたと思います。

既に信託会社で経営破綻するところがどんどん現れております。中国全体で投資信託事業の規模は420兆円に達しているのではないかと言われているのです。

要するにいろんな人や会社が預けたり投資をしたりして420兆円のお金があるということになります。これがどこに行ってしまうのか、これが回収できないのではないかという大変な危機になっているのです。だから、中国版のリーマンショックが今起きているということを言っても差し支えないでしょう。

ところが幸いなことに、これは中国独自の現象であって、同じく日本の不動産バブルが崩壊したときも、海外に対する影響はほとんどありませんでした。

だから欧米側からすれば安心して中国経済に対する制裁ができるということです。これはリーマンショックのときのようにアメリカの金融バブルやウォールストリートが暴落したとなると世界中の株式相場が暴落しますが、そういうことではありません。


(つづく)




  お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする