日本における歴史人口学の礎を築いた慶應義塾大学名誉教授・速水融(あきら)氏の『歴史学との出会い』から示唆に富んだ一文をご紹介します。
歴史家は、このような時期に何を考え、何を求めているのか。歴史家こそがこのような現実を踏まえて、そこに存在する大きな流れを掴み出し、変動を歴史の内に位置づけることができるはずである。しかし、これは決して容易なことではない。それにはまずこのことを可能にする大づかみな枠組、もしくは歴史観が必要となるだろう。しかしこれは既成のものからは求められるだろうか。とくに戦後の日本の歴史学界では、旧態依然たる十九世紀生れの史観にしがみつくか、あるいは「実証」の名のもとに、およそ体系とのつながりのないままに個別テーマを追うか、いずれかの姿勢が学者の大半を占めてきたと言っていい。ここに歴史観を求めてもムダである。(中略)
ところが、これまでに、元来は歴史学者ではない--文化人類学の領域の学者から、歴史研究の座標軸とでも言うべき重要な、興味深い提言がなされている。(中略)
しかし、やはり、根本的には、この種の問題は歴史学者自身から発せられるべきものであるし、いくつかある関係学会の共通論題としても十分存在しうる。だから、そういうことをしなかった日本の歴史学者は、このような提言の必要を認めないか、または、自己の閉鎖的社会に安住しているのかのいずれかであるということになる。
さらに、このような提言--あるいは歴史学者への挑戦と受けとってもいいだろう--があるにもかかわらず、これを正面から受けとめることしないで、黙殺したり、強弁によって排除してしまうという悪癖にいたってはまことに困ったものである。(中略)
さらに、科学においては、いかにある理論が論理的には整合していようとも、それによって説明しきれない、さらには説明できない事実がたくさん出て来たときには、その理論は再検討されるべきであろう。すべての科学におけるある理論の存在理由の一つは、それが「乗りこえられるためにある」のではなかったのだろうか。それを忘れての、一つの理論への盲信や、ある場合には托身とも思えるような硬直的な態度は、どう見ても学問を志す者の態度とは言えないのである。
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歴史家は、このような時期に何を考え、何を求めているのか。歴史家こそがこのような現実を踏まえて、そこに存在する大きな流れを掴み出し、変動を歴史の内に位置づけることができるはずである。しかし、これは決して容易なことではない。それにはまずこのことを可能にする大づかみな枠組、もしくは歴史観が必要となるだろう。しかしこれは既成のものからは求められるだろうか。とくに戦後の日本の歴史学界では、旧態依然たる十九世紀生れの史観にしがみつくか、あるいは「実証」の名のもとに、およそ体系とのつながりのないままに個別テーマを追うか、いずれかの姿勢が学者の大半を占めてきたと言っていい。ここに歴史観を求めてもムダである。(中略)
ところが、これまでに、元来は歴史学者ではない--文化人類学の領域の学者から、歴史研究の座標軸とでも言うべき重要な、興味深い提言がなされている。(中略)
しかし、やはり、根本的には、この種の問題は歴史学者自身から発せられるべきものであるし、いくつかある関係学会の共通論題としても十分存在しうる。だから、そういうことをしなかった日本の歴史学者は、このような提言の必要を認めないか、または、自己の閉鎖的社会に安住しているのかのいずれかであるということになる。
さらに、このような提言--あるいは歴史学者への挑戦と受けとってもいいだろう--があるにもかかわらず、これを正面から受けとめることしないで、黙殺したり、強弁によって排除してしまうという悪癖にいたってはまことに困ったものである。(中略)
さらに、科学においては、いかにある理論が論理的には整合していようとも、それによって説明しきれない、さらには説明できない事実がたくさん出て来たときには、その理論は再検討されるべきであろう。すべての科学におけるある理論の存在理由の一つは、それが「乗りこえられるためにある」のではなかったのだろうか。それを忘れての、一つの理論への盲信や、ある場合には托身とも思えるような硬直的な態度は、どう見ても学問を志す者の態度とは言えないのである。
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![]() | 【文庫】 本能寺の変 431年目の真実 |
明智 憲三郎 | |
文芸社 |
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