昨日に引き続き、「エコ住宅促進のための施策について」の質問です。
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が規定する認定基準の中には、従来あった住宅性能表示制度で基準が示されていた「劣化対策」「耐震性」「維持管理・更新の容易性」「省エネルギー性」のほかに、新たな項目として、「住居環境」があります。
国土交通省の住宅局長である川本正一郎氏は「長期優良住宅&エコ住宅2011」という雑誌のインタビューに答える形で、「コミュニティや街づくりの充実等、周辺環境の質の向上については、住宅の質を議論するうえで重要な視点であると考えています。現行制度では、長期優良住宅の認定要件の1つとして、地方公共団体が地区計画・景観計画・条例による街並み等の計画や
建築協定・景観協定を指定し、その内容との調和を長期優良住宅に求めることが可能となっています。」としています。
つまり、杉並区内で長期優良住宅を普及させることにより、地域全体の居住環境の維持向上に配慮をすることが出来るということです。
また、この法案には「住戸面積」「維持保全計画」の基準が設けられており、居住水準の確保と、建築時から良好なストックとなるべき将来を見据えて、
定期な点検補修等に関する計画が求められています。
この法案が意図するところは、住宅や共同住宅などの建築物をこれまでの
ように個人の資産としてのみ捕らえるのではなく、これからの環境配慮型社会を構成していく重要なひとつとして捉えていくという強いメッセージが含まれているのだと考えています。
また、長期優良住宅の普及を含めたエコ住宅促進にはこれまで述べてきたような建物単体の性能だけでなく、自然通風の確保が不可欠となります。天然の風を利用して出来るだけ機械換気や冷暖房の使用を抑制するためには、
現状においては杉並区内でも多く見受けられるような高さ1メートル80センチにも及ぶブロック塀や万年塀に囲まれていてはその確保は難しいといわざるを得ないでしょう。
一方でブロック塀や万年塀は耐震性においては建築物とは違い、建築基準法施行令第62条の8で最小限守らなければならないことが規定されていますが、建築確認申請が必要がないため、その品質は現場の職人さん任せとなり、性能を後世に渡り担保してくれるものがないのが現状です。
1995年の阪神淡路大震災では、1,480箇所のブロック塀が倒壊しており、多くの方が被害に遭われました。また、1978年の宮城県沖地震では17時14分という夕方の発生であったために死者28名のうち18名という半数を超える方々がブロック塀の倒壊により被害に遭われました。 いざ震災が起きたときには杉並区でもブロック塀の倒壊により被災者を増やし、緊急車両の往来を阻害することになることになるでしょう。エコ住宅の促進の施策のひとつとして、また、良好な景観形成のためにもブロック塀などのあり方を見直す必要があると考えています。
そこでお尋ねいたします。
敷地を取り囲むブロック塀を緑化することにより通風と良好な景観の形成が可能だが対策はあるのか見解をお伺いいたします。
エコ住宅の促進には優良な住宅のストック形成という一義的な目的のほかに、期待できる副次効果をあげることが出来ます。
第一には新たな区内産業の育成につながるという側面です。
現在においては、前述の長期優良住宅の要件を満たす建物を供給できる体制を持つビルダーは、ほぼ大手プレハブメーカーに限られており、一定の性能を持つ建物をつくり、その履歴を残していくなどのこれまでになかった書類の作成やデータの管理にいたるまで大変な業務量の増大と煩雑さがあるために、中小の工務店ではまかないきれないと予想されています。
これまで杉並区の住宅建築を支え、近隣に住む顔の見える工務店として
住まいを作り、そして引渡しをした後にも区民の小さな要望にも応えてメンテナンスなどをしてこられた区内業者に対し、エコ住宅の促進施策の中で「長期優良住宅」などの実践的な講習会などを実施することは今後の区内産業の育成という観点からしても有効な施策と考えます。
また、環境省が現在推進している「家庭エコ診断推進基盤整備事業」では
家庭部門での地球温暖化対策を推進するための取組である「うちエコ診断」の早期の普及を図るための事業を本年度から新たに実施しています。このエコ診断士に区内業者の多くが登録をすれば、より一層の産業の成長及び拡大につながり、ひいては杉並区民が広く環境配慮型の生活を身近にアドバイスしてもらえるという体制作りにもつながると考えます。
第二には、省エネルギー性を有した住宅に住むということは、言い換えると建物の中の部屋ごとの温度のバリアフリー化が実現できるということにもなります。
厚生労働省が発表している平成19年人口動態統計の中の家庭内の不慮の事故死は1万2千件を超え、現在では交通事故による死亡数を上回っています。「家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合」では、浴槽内での溺死及び溺水による死者の数は3253人、そのうち、65歳以上が占める割合は90%近くを占めます。省エネルギー性能が十分でない住宅では家族が大勢集まり長い時間を過ごす居間や食堂は暖房をし、廊下や洗面脱衣室は寒いまま、そして日本人特有の熱いお風呂に漬かることで心臓や脳疾患により高齢者が浴槽内で死亡にいたるというケースが大半であると推察されます。
平成22年に民主党内では「健康」「省エネ住宅」推進議員連盟による勉強会を行いました。会長は現・国土交通大臣の前田武士氏です。
その内容は住宅施策は統合施策であるものの「健康・省エネ住宅」という
言葉は、行政の所管としては『健康』は厚生労働省、『省エネ住宅』は国土
交通省と、見事に縦割りになっており、その事を理解していただくために、厚生労働省に『健康・省エネ住宅』という切り口から、省としてのスタンスをお聞きするといったものでした。このように、住宅内の温度のバリアフリー化は健康に
影響を及ぼすという議論がはじまっているのです。
そして最後に第三の予想される大きな副次効果としては、杉並区において
その地域性を考慮した住宅施策の中に大きくエコ住宅の促進を掲げることによって、「杉並区 イコール 環境先進都市」として区内外に認識され、
「杉並区に住まう」という意識付け・動機付けが大きく向上するきっかけになるであろうということです。
こういった多方面にわたり大きな効果を望むことが出来るという点においてもエコ住宅の促進をぜひとも推進していくために、協議会などの設置により
各分野のご意見を伺うなどの新たな取り組みの検討をお願いし、次の質問に移ります。