民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その7 朧月夜の君

2015年11月13日 00時02分22秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 朧月夜の君―――奔放な愛を生きて

 皇太子妃に内定しながら、源氏との危険な愛の境地を開いてゆく、才気煥発な美人。心ならずも源氏失脚のきっかけとなる恋の相手。

 紫式部は、源氏物語の中に実にさまざまな女の生き方、あり方を描いています。愛の姿ひとつをみてもそれぞれに違っています。ただ、描かれた時代ゆえに、受身の愛、男に翻弄される愛が多いのはしかたないことです。ところが、そんな中で、愛されるだけが喜びではなく、愛しきる喜びに生きた女もいるのです。
 朧月夜の君、愛される以上に愛し、自分で愛の境地を開いていった女です。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その6 空蝉と末摘花

2015年11月11日 00時05分04秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その6 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 空蝉と末摘花―――個性的な中流の女たち

 決して美人ではないけれど、賢さも洗練されたセンスも心がけしだい。ともに中流の女性ながら、その生き様は自ずと違ってきます。

 女とは、女の心のあり方とは、いったいどんなものなのか。紫式部はいつも心の中で自分に問うていたのではないでしょうか。本人しだいで賢さも、洗練されたセンスを持ち合わせることもできれば、何もできずに終わってしまうこともある。そんな女の生き方とは―――。
 源氏がふとしたでき心でかかわりを持った二人の女性、空蝉と末摘花はともに身分は中流貴族で、同じ時代に生きたのですが、その生きようはあまりに違っておりました。


説き語り「源氏物語」 村山 リウ その5 若紫

2015年11月09日 00時10分06秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その5 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 若紫―――マイ・フェア・レディ

 愛らしく聡明な少女を自分色に染め上げる。それは源氏にとって藤壺のような女性をつくること。期待に応え理想的な女になってゆく。

 まだ幼くて、どんな色にも染まっていない少女。けれども成人したときには、たいそう美しい女性になるだろうと確信できる少女。そんな少女を自分の手で自分の好みに染めあげてみたい、というのは多くの男性の共通した願いかもしれません。”マイ・フェア・レディ”といったらよいでしょうか。


説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 夕顔

2015年11月07日 00時13分42秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 夕顔―――灼熱の恋のはかなさ

 ある夕暮れ、偶然に始まったひと夏の恋。夕顔の花にも似て短くも激しく燃え、唐突に終わりを迎える。もっとも哀しくコケティッシュな女性。

 はかないといえば、これほどまでにはかない愛はないでしょう。夏の夕暮れ、お互いの存在を知り、結ばれる。そして、月の美しい秋の夜、はじめて素顔を見せあう。けれどもそのときはまた恋の終わりでもあったのです。灼熱の恋は一瞬にして、女性の死で終わりを遂げてしまったのですから。十七歳の光源氏と二十歳の夕顔の恋は、夕暮れに咲いて散る夕顔の花に似て、あまりにもはかないものでした。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その3 六条御息所

2015年11月05日 00時15分46秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その3 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)―――誇りゆえ燃える嫉妬の炎(ほむら)

 才色兼備のサロンの女王。生霊(いきすだま)となるまで源氏を愛して愛しぬいた、知性や教養でも抑えきれない激しい愛。源氏には気のおける恋人。

 愛して愛しぬいて、いつしか魂が身からはなれて生霊(いきすだま)となってしまう、それほどに激しい愛とは、どんな愛なのでしょうか。愛の尊さと悲しさをきわめた愛。極限の愛とでもいったらよいでしょうか。
 物の怪になるほどまでに源氏の君を愛した女性、それは六条御息所でした。