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「河童の雨乞い」 リメイク by akira

2011年12月06日 12時16分26秒 | 民話(リメイク by akira)
 「河童の雨乞い」  参考 福娘童話集

むかーし、むかしの、ことだった。

 ある小さな村に、河童が棲んでいた。
この河童は、野良仕事をしている、村人の邪魔をしたり、
川で遊んでる、子供の足を引っ張ったり、・・・悪さばっかりしていた。
それで、村人からは、「つまはじき」にされていた。

 ある日のこと、旅の坊さんが、村にやって来た。
 「おぅ、坊さん、いいとこに来た。河童が悪さばっかりして、困ってんだ、
ちーとばかし、こらしめてやってくんねぇか。」

 坊さんは、河童に会いに行った。
 「お前はいつも、村人たちに、悪さばっかりしてるそうじゃないか。
いったい何が気に入んなくて、そんな悪さばっかりしてるんだ?」
 河童は、坊さんの顔をジーと見て、
 「坊さま・・・。おらぁ、河童の身がつれぇ。こんな格好じゃ、人間の仲間に入れてもらえねぇし、
そうかといって、魚やカメの仲間でもねぇ。おらだって、みんなと一緒に遊びてぇ。
だけんど、みんな、おらのこと邪魔にすんだ。おらぁ、いじやけて、つい、悪さをしちゃうんだ。」
 河童の目に、涙があふれてきた。
 「坊さま、おらぁ、今度生まれる時には、人間になりてぇ。
人間に生まれ変わるのには、どうしたらいいんだ?」
 「それはな、お前が生きている間に、なんか、人間のためになることを、すればいいんだ。」
 「ほんとけ? そうすりゃ、人間に生まれ変われるけ?」河童は、目を輝かした。

 その年の夏は、日照りが続いた。作物は枯れ、井戸の水も干上がってしまった。
 「このままでは、みんな、死んでしまう。・・・みんなで、雨乞いをすんべ!」
村人たちは、広場に集まって、雨乞いを始めた。
 「雨を降らせてくれー! お願いだから、雨を降らせてくれー!」
一生懸命、お願いした。だけんど、雨は、ちっとも、降ってくれなかった。

 そんな雨乞いが、どんくらい続いたか。河童がみんなのとこにやって来た。
 「こらっ、河童めっ! なにしに来たっ!」
河童を取り囲んだ村人たちは、(日頃のうらみと、日照りの苛立ちもあって)
河童を殴ったり、蹴ったりした。
いつもならすぐに逃げ出す河童なのに、その日は殴られても、蹴られても、
両手を頭にのせて、ジッと我慢していた。

 そして、みんなが殴り疲れると、顔を上げて、言った。
 「おらにも、雨乞いをさせてくれ。」
 「雨乞いだと? 悪さばっかりしている、お前がか?!」
 「そんなの、うそに決まってんべ! またなんか、悪さしようとしてんだんべ!」
 それでも、必死に頼んでる、河童を見て、長老が言った。
 「だけんど、雨が降らねぇで、一番困ってんのは、河童じゃねぇのか。
河童は、水の妖怪って言うし、河童が雨乞いをすりゃ、
ひょっとすっと、降ってくっかもしんねぇな。・・・一丁、やらせてみっか。」
 村人たちは、河童に雨乞いをさせようと、後ろ手に縄で縛って、広場に連れて行った。
河童は、縛られたまま、やっとこ身体を起こすと、天を仰いで祈り始めた。

 「神さまー!おらぁ、今まで、悪さばっかりしてきた。みんなに迷惑をかけてきた。
おらぁ、そのつぐないがしてーんだ。
おらの命と引き替えでいい。雨を降らせてくれぇー。神さまー!・・・お願ぇだー。」
 河童の雨乞いは、何日も、何日も続いた。
その間、河童は、何も食べなかった。水も飲まなかった。河童は、すっかり、弱っていった。
しかし、それでも、河童は雨乞いをやめなかった。
 「神さまー!・・・お願ぇだー。 雨を・・・降らせて・・・くれぇー。」

 村の一人が、そのひたむきさに、心打たれて、縄を解いてあげた。
すると、「ピカッ!」って、稲妻が光ったかと思うと、「ゴロッ ゴロッ」って、音がして、
まもなく、大粒の雨が、ポツリ、ポツリ、と降ってきた。
雨はみるみる激しくなって、ザー、ザー、滝のように降ってきた。
 「雨だー!・・・雨が降ってきたー!」
 「河童の雨乞いが・・・天に届いたー!」
 「河童のおかげで・・・おれたち 助かったー!」
 みんなの声を聞いて、河童は、天を仰いで言った。 「神さま・・・。ありがとう・・・。」
 激しい雨に、打たれながら、河童は、満足そうな顔をして、死んでいった。

 それから、一年くらいたって、あの旅の坊さんが、また、この村に、やって来た。
そして、村人から、河童の話しを聞いた。
坊さんは、河童が人間になりたがっていたことを、みんなに話した。
 「河童のヤツ、ほんとに、人間になりたかったんだなぁー。
いつか、人間に生まれ変わって、この村にくっかもしんねぇなぁー。」

 村人たちは、河童のお墓を立てて、いつまでも「河童の雨乞い」の話しを伝えてきたんだと。

  おしまい