民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「山賊と娘」 (仏の山峠) リメイク by akira

2012年01月16日 01時00分37秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし むかしのことだった。

 ある山のふもとに 父親と 美しい娘 咲が 二人で暮らしていた。
娘の父親は 山賊の頭(かしら)だった。

 隣の村に行くには けわしい山道を登り、峠を越えなければならなかった。
その峠は 山賊が出ると 怖れられていた。

  ある日 娘は 父親が山賊の頭だと 知ってしまった。
「お父さん、人を殺して お金を奪うなんて。 そんなむごいことは やめて!」
娘は 何度も 父親に 泣いて頼んだ。

 しかし 山賊が出るといううわさは消えなかった。

 娘は悩んだ。
どうしたら 父親が山賊をやめてくれるか 必死になって考えた。

 そして ある日 娘は 商人の格好をして 峠に向かった。
し~んと 静かな山の中で 娘の足音が こだまする。

 峠を越えようとする時だった。
突然 山賊が飛び出し 娘の前に現れた。

 山賊は おびえる娘にかまわず 一刀の元に切り捨てた。
山賊が 財布を抜き取ろうとかがんだ時 相手の顔が見えた。 

 「かっ かっ 頭!」
 頭が駆けつけて 横たわっている娘の姿を見た。

 「咲!」

 手には文が握られていた。
「お父さん、もうこんなことは やめて!」

 頭は文を握りしめ 泣いた。

 そして 頭は 自分の罪深さを悟り 出家してお坊さんになった。

 栃木県茂木町 と 茨城県笠間市 との県境に「仏の山峠」というところがある。
そこに伝わる 父親を思う娘の 悲しい話・・・おしまい。