民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「カメの夢」 リメイク by akira

2012年01月26日 01時03分41秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし、むかしのことだった。
 あるところに、(仲のいい)ツルとカメがいた。

 ある時、カメが日向ぼっこをしているところへ
ツルが(ふわふわと)降りてきた。

 「ツルどん、ツルどん、おめぇーは、いつも空 飛んで、
あっちこっち、遠くへ行けて、いいなぁ。
おれもおめぇみたいに、空 飛んでみてぇーな。
おれなんか、いつも地べたばっか、
(もぞもぞと)這い回ってて、ちっともおもしろくねぇ」

 「カメどん、カメどん、そんなに空 飛んでみてぇーんか。
そんなら、おれが(おめぇのこと、)連れて行ってやっか。」
 「そんなこと、できんけ?」
 「そこに棒があんべ、それをしっかり咥えていろ。
どんなことがあっても、しゃべんなよ。
しゃべったら、地べたに落っこちて、一巻の終わりだぞ」
 「わかった、しゃべんねぇ」

 ツルは、カメの咥えてる棒のはじを、クチバシではさむと、
(バタバタと)羽ばたきして飛んでいった。
 カメは嬉しくて、(そこらを)きょろきょろ見回していた。

 ある村にさしかかると、子供らが遊んでいた。
そのうち、一人の子供が、ツルを見つけた。
 「おーい、上、見てみぃ、ツルがなんか咥えて飛んでっつぉ」
 わいわい、騒ぎだした。
 「ゾウリみてぇだな」
 「そうだ、ゾウリだ」

 これを聞いたカメは、思わず子供らに言った。
 「おめぇーら、よく見ろ。おれはゾウリなんかじゃねぇやい」

 そしたら、カメのヤロー、棒からクチ離したもんだから、
(空から)まっさかさまに、地べたに落っこちまった。

 カメの甲羅のヒビは、そん時できたって話だ。

 おしまい (これでいちごさけた、どっぺん)