お祭りのあとの直会(なおらい)の席で 元ネタ 熊本県の民話
じゃ、ちょっと 語ってみっかんな。
「五寸釘」ってハナシで、これは おんな、子供がいる時には 語(や)れねぇハナシなんだけど、
今日はおんな、いねぇから、いかっぺ(いかんべ)。
オレが小っちゃいころ 聞いたハナシだから、細かいとこ ちょこっと 違うかもしんねぇけど、
・・・まぁ、聞いてくれや。
むかーし、むかしのことだ。
どれくらい むかしかは オレも知らねぇ。オレも聞いたハナシだ。
・・・まぁ、とにかく むかしのことだ。
あるところに お父(とう)とお母(かあ)とせがれが 三人で暮らしていた。
せがれは まだ15になるか ならないくらいでな。
一晩寝れば 10センチも背が伸びるっちゅう、育ち盛りだ。
もう 身体(からだ)もすっかり大人になって、
お父と相撲をとっても、めったに負けなくなってきた。
そんな ある日、お母が 便所の壁に 五寸釘が打ってあるのを見つけた。
お母は お父に聞いた。
「父さんかい、便所の壁に釘なんか 打ったの?」
「いや、おれじゃねぇ。」
気になって、お父が便所に行ってみると、
腰くらいの高さんとこの 壁の両側に 五寸釘が打ってある。
「はて、なんでこんなとこ 釘なんか 打ったんだんべ?」って、まわりを見ると、
壁の角(かど)に 竹の棒が立てかけてある。
長さは三尺くらいで、太さはこれくらい。(輪っかをつくって)ハタキの棒くらい。
その竹の棒を見て、お父はピーンときた。
棒を手に取って、まず左の五寸釘に刺し、次に右の五寸釘に刺す。
(ケンドンっていうヤツだな)手を放しても 落ちない。
(なるほど、・・・こういうことか)
「どれ どれ。」お父はブツを取り出し、竹の棒の上にのせる。
「こりゃ、楽チン。」
お父は腕組みをしながら 悦にいった。
その夜、お父はせがれをつかまえて得意そうに言った。
「便所(の壁)に五寸釘を打ったのは お前(めぇ)だべ。
なかなか うんまいこと 考えたな。
さっそくためしてみたけど、ありゃ、楽チンでいい。」
「楽チン?・・・・・あっ、お父、棒の上にのせたんか?」
「うん?・・・そうだけど・・・違うのか?!」
「いや、うん、・・・そういう使い方もあっかもしんねぇけど、オラは逆だ。」
せがれは、照れくさそうに、
「オラ、朝 小便(しょんべん)すっ時、あんまり勢いよく 上向いてんで、
天井にひっかけちゃまずいと思って、手で押さえてんだけど、
なかなか 手で押さえてのも大変なんだ。
んで、あんなこと思いついて、棒の下くぐらせて、手で押さえなくていいように したんだ。」
「だけど、ひとつ問題があった。・・・調子はいいんだけどな、
竹が細すぎたみたいで、ミシミシ言ってんだ。」
「お父、・・・もちっと太い竹、みっけてきてくんねぇけ。」
って、言ったとさ。
おしまい。
じゃ、ちょっと 語ってみっかんな。
「五寸釘」ってハナシで、これは おんな、子供がいる時には 語(や)れねぇハナシなんだけど、
今日はおんな、いねぇから、いかっぺ(いかんべ)。
オレが小っちゃいころ 聞いたハナシだから、細かいとこ ちょこっと 違うかもしんねぇけど、
・・・まぁ、聞いてくれや。
むかーし、むかしのことだ。
どれくらい むかしかは オレも知らねぇ。オレも聞いたハナシだ。
・・・まぁ、とにかく むかしのことだ。
あるところに お父(とう)とお母(かあ)とせがれが 三人で暮らしていた。
せがれは まだ15になるか ならないくらいでな。
一晩寝れば 10センチも背が伸びるっちゅう、育ち盛りだ。
もう 身体(からだ)もすっかり大人になって、
お父と相撲をとっても、めったに負けなくなってきた。
そんな ある日、お母が 便所の壁に 五寸釘が打ってあるのを見つけた。
お母は お父に聞いた。
「父さんかい、便所の壁に釘なんか 打ったの?」
「いや、おれじゃねぇ。」
気になって、お父が便所に行ってみると、
腰くらいの高さんとこの 壁の両側に 五寸釘が打ってある。
「はて、なんでこんなとこ 釘なんか 打ったんだんべ?」って、まわりを見ると、
壁の角(かど)に 竹の棒が立てかけてある。
長さは三尺くらいで、太さはこれくらい。(輪っかをつくって)ハタキの棒くらい。
その竹の棒を見て、お父はピーンときた。
棒を手に取って、まず左の五寸釘に刺し、次に右の五寸釘に刺す。
(ケンドンっていうヤツだな)手を放しても 落ちない。
(なるほど、・・・こういうことか)
「どれ どれ。」お父はブツを取り出し、竹の棒の上にのせる。
「こりゃ、楽チン。」
お父は腕組みをしながら 悦にいった。
その夜、お父はせがれをつかまえて得意そうに言った。
「便所(の壁)に五寸釘を打ったのは お前(めぇ)だべ。
なかなか うんまいこと 考えたな。
さっそくためしてみたけど、ありゃ、楽チンでいい。」
「楽チン?・・・・・あっ、お父、棒の上にのせたんか?」
「うん?・・・そうだけど・・・違うのか?!」
「いや、うん、・・・そういう使い方もあっかもしんねぇけど、オラは逆だ。」
せがれは、照れくさそうに、
「オラ、朝 小便(しょんべん)すっ時、あんまり勢いよく 上向いてんで、
天井にひっかけちゃまずいと思って、手で押さえてんだけど、
なかなか 手で押さえてのも大変なんだ。
んで、あんなこと思いついて、棒の下くぐらせて、手で押さえなくていいように したんだ。」
「だけど、ひとつ問題があった。・・・調子はいいんだけどな、
竹が細すぎたみたいで、ミシミシ言ってんだ。」
「お父、・・・もちっと太い竹、みっけてきてくんねぇけ。」
って、言ったとさ。
おしまい。