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「赤い髪の娘」 リメイク by akira

2012年06月07日 00時51分32秒 | 民話(リメイク by akira)
 赤い髪の娘  元ネタ「無邪気な大人のための残酷な愛の物語」 西本 鶏介

 今日は「赤い髪の娘」ってハナシ やっかんな。
蛇が 出てくるハナシだから、蛇が キライな人は 気をつけてね。
いつもは ばぁちゃんから 聞いたハナシだけど、今日は オレが 本で覚えたハナシだ。
つっかかっかもしんねぇけど、ガマンして 聞いてくれや。

 むかしのことだ。
 ある山ん中に、どんよりとした 沼が あったと。
その沼の奥には ほら穴があって、無数の 蛇が棲(す)んでるという うわさだったと。
そんなわけで、地元のもんは 誰も 近づくもんは いなかったと。

 そんな沼が近くにある 小さな村に、一人の いとしげな 娘が おったと。
この娘は 器量は 申し分なかったんだけんど、どういうわけか 生まれつき、髪の毛が 赤かったと。
(どうして、私の髪 だけが こんなに 赤いの・・・)
娘は 他の女の 黒々とした 髪を見るたびに、自分の 赤い髪を うらめしそうに 見つめたと。

 やがて、娘は 恋に落ち、男も その愛を 受け入れて くれたと。
娘は 初めての恋に 胸をふるわせ、寝ても覚めても、男のことが 頭から 離れなかったと。
それと同時に、ひとつの不安も 頭から 離れなかったと。
(この赤い髪のせいで、男が 心変わりを するようなことがあったら・・・)
娘は 不安そうに 自分の赤い髪を 見つめたと。

 そんな ある日、娘の不安は 現実のものと なってしまったと。
突然、娘は 男から 別れ話を 持ち出されたと。
「オレたち そろそろ 終わりにすんべ」
「私、あなたがいなきゃ 生きてゆけない」
娘は 男の胸にすがって 泣いたと。
 だが、男の心は もう すっかり 娘から 離れていたと。
男には 村一番の長者の ひとり娘という 新しい女が できていたと。

 なかなか ウンと言わない娘に 業を煮やして、男は ついに 最後の言葉を 吐いたと。
「おらぁ、おめぇの その 赤い髪が ガマンできなくなっちまっただ」
娘は からだを震(ふる)わせて 泣いたと。
(あんたのためだったら どんなことだってできる。
だけど、この 生まれつきの 赤い髪を どうしろって いうの)
 
 やがて 娘は、男が 新しい女と 一緒にいるところを 目にするように なったと。
女は 黒髪がきれいと 評判の 女で あったと。
女は つきまとう娘を からかうように 言ったと。
「あの 蛇がいるという うわさの沼で 髪を洗うと 黒く なるそうな。・・・
私の この黒髪も そのおかげで、・・・ほら、こんなに、・・・」
 女は 娘の前で 自慢げに 髪を揺らしたと。

 次の日、娘は 蛇がいるという うわさの沼へ 髪を洗いに 行ったと。
「この赤い髪が 黒くなりますように・・・」
それから 娘は 毎日、一日に三度、沼へ 通い続けたと。

 やがて、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が やって来たと。
水は すっかり 冷たくなり、しもやけで はれあがった指は、ちぎれるように痛み、
頭(あたま)は 無数の 刃(やいば)が 突き刺さるようで あったと。
 それでも、娘は その沼で 髪を洗うことを やめなかったと。
(この赤い髪さえ 黒くなってくれたら・・・)
娘は どんなつらさにも 耐えたと。

 だが、娘の髪は 一向に 黒くは ならなかったと。
それどころか、すっかり 油っ気もなくなって、パサパサの髪に なっていったと。
(まだ 洗い方が 足りないのかもしれない)
娘は 一心不乱に 髪を 洗い続けたと。

 そんな ある日、娘は 聞いてしまったと。
(おい、見たか、あのパサパサ頭を。・・・ばかな女も いたもんだ。・・・
女のうそを 真に受けて、あの蛇がいるという うわさの沼で 髪を洗うとは・・・
あれじゃ 黒くなるどころか、全部 抜けちまうんじゃねぇのか)

 だまされた と 気がついた娘は、出刃包丁をつかむと、表に飛び出したと。
(二人を刺し殺して、自分も死のう)
 だが、二人を 捜しまわっているうち、娘は 次第に 冷静さを 取り戻していったと。
(恋しい男を どうして 殺すことができよう)
 気がつくと、娘は いつのまにか あの沼に 来ていたと。
(あの 女がにくい、・・・私の男を奪った あの 女がにくい)
 どんよりとした 水面(みなも)を見ていると、ほら穴の奥で ふたつの目が 妖しく 光ったと。
娘は その目に 引き寄せられ、長いこと 見つめあいが 続いたと。

 やがて、娘は 意を決したかのように、髪をつかみ 包丁で その髪を切ると、
力一杯、沼に 投げ入れたと。
髪は ゆらゆらと 沈んでいったと。
かと思うと、突然、水面が ざわめきだし、無数の 蛇が バシャバシャと 踊り出てきたと。
なんと、髪の毛の 一本 一本が 蛇に 姿を変えたと。

 誘われるように、娘は 水の中へ 入って 行ったと。
そして、静かに からだを 浮かべると、無数の 蛇が 娘にからみつき、
ほら穴の 奥深くへと 連れていったと。

 それから、しばらくして、その沼に 女の水死体が 浮かんでいたと。
そして、女の自慢の黒髪は まるで血のような まっ赤な髪に 変わっていたと。

 おしまい。