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「機転を利かす」  藤田 浩子

2013年03月02日 00時16分01秒 | 民話の背景(民俗)
 昔話に学ぶ生きる知恵 2 「機転を利かす」  藤田 浩子 編著 2006年

 頓智・機転は人づきあいの潤滑油

 人と人がかかわるとき、それが他人であろうと、家族であろうと、ギスギスしそうなときがあります。
潤滑油が必要なときです。
誠意を込めてコトにあたれば必ずうまくいくというものでもありません。

 誠意は必要ですけれど、直球しか持ち玉がなければ一面的で、すぐ底をついてしまいます。
フォークありカーブあり、相手により時と場合によって投げる玉を変えていくのが
人づきあいのおもしろいところですが、ときにはピンチになることもあるでしょう。

 そんなときに役に立つ魔球が頓智です。
相手を煙に巻きながらなんとなくこちらのペースに引き込みます。
しかも相手との関係がギスギスしないように、潤滑油の役割をも果たすのが頓智です。

 私が子どもだったころの悪口言葉に「頓痴気野郎」というのがありました。
頓智の利かない、気の利かないヤツという意味合いの悪口です。
「トンチキヤロウのスットコドッコイ」と言われたら、
ダブルパンチを食らったぐらいのダメージを受けました。
頓智の利かないヤツはそれだけで、悪口の対象になったのです。

 機転を利かせ、頓智を働かせることで、いさかいをせずにすませたり、命拾いをしたり、
上役をぎゃふんと言わせたり、現代人に足りないのはこの機転を利かすことや、
頓智を働かすことではないかと思えるのです。

 機転を利かせ、頓智を働かせれば、あとあとまでしこりを残さずに、問題が解決できます。
まわりに波風を立てずに、こちらの思いを伝えられます。