樋口一葉「いやだ!」と云ふ 田中 優子(1952年生まれ) 集英社新書 2004年
『たけくらべ』の人々 その1
前略
『たけくらべ』は明治28年(1895)1月、一葉が23歳のときから『文学界』に連載を始め、翌明治29年4月、『文藝倶楽部』に一括発表されて絶賛を浴びた小説である。そしてその年の11月23日、一葉は24歳で亡くなった。樋口一葉は、有望な作家としてデビューしたとたんにこの世を去った、ひとりの女性である。
『たけくらべ』のストーリーをまとめるのはむ難しい。この小説の面白さはルトーリーにあるのではなく、むしろそのあいまに描き込まれたひとりひとりのキャラクターやその背景、日々の生活、そして人が毎日を生きながら感じ取る、人としての活気や哀しさにある。一葉の作品は、登場人物のひとりひとりがじつに生々しく、多様で、誰が主人公になったとしても不思議はない。主人公は必ずいるのだが、それは登場人物たちの中から、たまたまひとりがすっくと立ってスポットライトを浴びたように感じる。ひとつの物語が終わったとき、また別の登場人物が主人公になるかもしれない、と私は思ってしまう。
『たけくらべ』の人々 その1
前略
『たけくらべ』は明治28年(1895)1月、一葉が23歳のときから『文学界』に連載を始め、翌明治29年4月、『文藝倶楽部』に一括発表されて絶賛を浴びた小説である。そしてその年の11月23日、一葉は24歳で亡くなった。樋口一葉は、有望な作家としてデビューしたとたんにこの世を去った、ひとりの女性である。
『たけくらべ』のストーリーをまとめるのはむ難しい。この小説の面白さはルトーリーにあるのではなく、むしろそのあいまに描き込まれたひとりひとりのキャラクターやその背景、日々の生活、そして人が毎日を生きながら感じ取る、人としての活気や哀しさにある。一葉の作品は、登場人物のひとりひとりがじつに生々しく、多様で、誰が主人公になったとしても不思議はない。主人公は必ずいるのだが、それは登場人物たちの中から、たまたまひとりがすっくと立ってスポットライトを浴びたように感じる。ひとつの物語が終わったとき、また別の登場人物が主人公になるかもしれない、と私は思ってしまう。