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「青春風土記」 (旧制高校物語) その2

2016年04月24日 22時32分15秒 | 雑学知識
 「青春風土記」 (旧制高校物語)  週刊朝日編 朝日新聞社 1978年

 名物教授 P-57

 大正15年から旧制松本高校が姿を消す昭和25年まで数学を担当した蛭川幸茂教授。生徒たちは親しみをこめて「ヒルさん」または「ヒル公」と呼んだ。
 八高の理科から東大理学部数学科を出てすぐ赴任してきたので、はじめのころの生徒とは兄弟のようなつきあいをした。身長183センチの大男、陸上競技の投擲が大好き。衆議院議員佐々木良作(民社)はいう。
「東に美ケ原、西にアルプス、松高にヒル公」
 一度講義しただけでクラス全員の顔と名前をおぼえる。記憶力は抜群。容貌魁偉で、大食漢。陸上競技部のコンパで、どんぶり飯を10数杯平らげたという豪の者。

 文科の数学の授業も型破り。前半ちょっと講義をしたかと思うと、後半は芸者買いの話、歴代校長の武勇伝などを得意になって披露する。試験問題もユニークで、「私は子どものときからいかに数学から悩まされてきたか」などという題で感想文を書かせ、及第点を与えた。
 ズボンのベルトの代わりに麻縄で編んだ帯を締めて教壇に立つこともしばしば。八高出身なのに「おれは松本高OBだ」と称して譲らない。
 旧制松高が信州大になると、すぐやめた。「高等学校以外に真の教育の場があるとすれば、小学校しかない」といい残し、近隣の小学校の先生になった。どこまでも変わっている。いまなお元気で、愛知学院大の教授をつとめている。