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春日一幸 その3 佐野 眞一

2016年07月27日 00時12分47秒 | 雑学知識
 「新 忘れられた日本人」 佐野 眞一 毎日新聞社 2009年

 味のありすぎる政治家・春日一幸 その3 P-119

 反共の闘士としてならした後年の姿からはとても想像できないが、春日は若い頃、プロレタリア文学を読みあさり、ダダイズムに傾倒する文学青年だった。前衛詩人を目指し、伊藤野枝と同棲した経験のあるダダイズムの詩人の辻潤をたよって名古屋から徒歩で上京したこともある。
 当時の春日の「前衛詩」を紹介しておこう。

「歩いている 歩いている 歩いても道ばかりである
 でも仕方ないので ブラリブラリ歩いている」

「七色の虹を浮かべて しゃぼん玉
 風にゆられてフワリフワリ
 束の間のいのちかよ でも楽しそう」

 ストレートすぎる心情吐露と、感傷癖だけの駄作としか思えない。だが、春日に言わせれば「日本詩壇の将来を背負って立つ逸材」と言われたということになる。
 これぐらいの自信過剰と廉恥心のなさがなければ、そもそも政治家などという人種にはなれないのかも知れない。
 だが、やはり詩人としては芽が出ずに終わった。文学熱が昂じると恐ろしい。23歳のときには、カルモチンを服用して自殺をはかった。カルモチンは太宰治も自殺に使った睡眠薬である。幸い未遂で済んだが、この点だけは天才作家気取りだった。