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春日一幸 その4 佐野 眞一

2016年07月29日 00時50分42秒 | 雑学知識
 「新 忘れられた日本人」 佐野 眞一 毎日新聞社 2009年

 味のありすぎる政治家・春日一幸 その4 P-121

 春日は最初、社会党右派に所属していたが、民社党の旗揚げとともに新党に参加、国対委員長、副書記長ととんとん拍子に出世し、結党7年目で書記長に就任した。だが、まもなく書記長の座を自ら降りることになる。原因はやはり春日らしく愛人問題だった。
 このとき春日は、少しも悪びれず、こんなエッセイを書いている。タイトルは「至愛至上主義で無病息災」である。

<愛欲の結合では、一回が1万メートルのマラソンの運動量に匹敵するという。おす聞けば、なるほど、その発汗の分量、イキのはずみ具合、それにエネルギーの燃焼の度合いの集計値は、かれこれ似通った感じのものである。健康のために色恋をする馬鹿はないにしても、色恋がこのように生命の炎をかき立てるものであるならば、色恋を怠けたりしては元気を保てるはずがない>

 こう臆面なく言われると、稚気さえ感じる。こんな政治家は、いま永田町のどこを探しても見つからない。
 古手の民社党議員から聞いた話が忘れられない。
「最盛時は、7人の愛人がいた。それがみんな金を払っても相手したくないような婆さんばかり。それをひたすら押しの一手で口説く。名古屋弁で女性自身を連発して哀願するんだ」

 春日の「人徳」は、そういう女性が選挙の度にこぞって応援に駆けつけ、炊き出しまで手伝ったことである。それでよく、本妻から文句が出ないものだと思うのだが、春日本人は平然としたものだった。春日が大真面目でこう言ったときには、腹がよじれるほど笑った。

「女房がヒステリーを起こしたときは、後ろから羽交い絞めにして般若心経を唱えることにしておる。仏の御心で発作もおさまる」

 趣味のマージャンをするときには、相手があがるとイーハン減らし、自分があがるとリャンハン増やす「春日ルール」で卓を囲み、タバコはショートホープを1日15箱というチェーンスモーカーだった。ニコチンにはバイ菌を殺す力があると信じていたのである。
 健康ブームと増税をあてこんだいじましいタバコ値上げ議論がささやかれはじめる昨今、春日一幸の型破りな生き方が、いまさらながら懐かしい。