民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「役割語の謎」 金水 敏(さとし)

2012年12月16日 00時18分42秒 | 日本語について
 「ヴァーチャル日本語 役割語の謎」 金水 敏(さとし)著  岩波書店 2003年

 問題 次の1~8とア~クを結びつけなさい。

1、そうよ、あたしが知ってるわ
2、そうじゃ、わしが知っておる
3、そや、わてが知っとるでえ
4、そうじゃ、拙者が存じておる
5、そうですわよ、わたくしが存じておりますわ
6、そうあるよ、わたしが知ってあるよ
7、そうだよ、ぼくが知ってるのさ
8、んだ、おら知ってるだ

ア、お武家様
イ、(ニセ)中国人
ウ、老博士
エ、女の子
オ、田舎者
カ、男の子
キ、お嬢様
ク、関西人

 どうです、簡単でしたか?
この問題は、日本で育った日本語の母語話者なら、ほぼ100%間違えることがないはずです。

 この問題に出てくるような、特定のキャラクターと結びついた、特徴ある言葉使いのことを、本書では「役割語」と呼び、<お嬢様ことば><田舎ことば>のように、カッコにくくって示すことにします。

 日本で育った日本語話者なら、問題に示したような役割語は誰でも身につけていると想像されます。
よく考えると、これはとても不思議なことです。とても謎めいている、といってもよいでしょう。
なぜなら、役割語は必ずしも現実の日本語とは一致しない、というより、全然違っている場合が多いのです。たとえばあなたは、「そうじゃ、わしが博士じゃ」という博士に会ったことがありますか?
「ごめん遊ばせ、よろしくってよ」としゃべるお嬢様に会ったことがありますか?
そんなものは今の日本には存在しませんね。

 それにもかかわらず、みんな知ってる役割語。
いったい、私たちはどこでどのようにして役割語を身につけるのでしょうか?
そもそも、何のために、役割語が存在するのでしょうか?
そして役割語は、誰が、いつ、作ったのでしょうか?

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。