民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「大栗」 丸谷 才一

2017年03月27日 00時04分33秒 | 日本語について
 書きたい、書けない、「書く」の壁 (シリーズ 日本語があぶない) 丸谷 才一ほか 2005年

 「大栗」

 電網上の会話にはまったく新しい表現が次々と登場し、着々と浸透し定着しつつある。
 サイトへの投稿、書き込みなどに縁がないわたしでさえ、友人との携帯メールで「ごめん。ちょっと遅れる鴨」とか「とりあえず電話汁!」などと書いている。乙・・お疲れ様 キボン・・希望する チャソ・・チャン 漏れ・・俺 香具師・・奴(やつ) ・・・キーボードの打ち間違い、漢字変換ミス、さらには記号や文字の形状の類似から、「おもしろいじゃん、これのほうが」と認知されていくコトバ。

 ペンで手紙を書くとき、変換ミスはない。書き間違えや記憶違いだけだ。誤字は失礼にあたるからと、間違えるたびに新しい便箋に書き直していたものだ。分からない漢字は辞書をひいたし、塗りつぶして書き直したときには末尾に「取り急ぎ誤字多く乱筆にてあしからず」と書き添えたり。

 以前、添付ファイルをメールで送ってきた仕事先のかたから「二件大栗します(お送りします)。ご確認ください」と添え書きがあった。手書きなら書き間違えることはないし、こんな手紙を貰ったら「なんなんだ、こいつは」と思うだろうが、メール文なら「うふふ」で済まされるのだ。

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