江戸時代も後期になると、親孝行を売り物にする輩も出てくる。嘉永6年(1853)にまとめられた『守貞漫稿』には、「親孝行」と称する門付けを紹介している。
「天保末(1844)、江戸ではある男が衣服を着せた張りぼての人形を胸につり、孝行者が親を背負っているように見せかけていた」
そのようにして、「親孝行でござい」と大声でいいながら歩き、家々の前に立っては、手に持った扇子で銭をもらったのである。なかには、本当に老婆を背負う男もいた。こうした門付けが横行したというのは、それだけ親孝行が少なくなったということかもしれない。
出典 「江戸の定年後」 中江克己 P-36
「天保末(1844)、江戸ではある男が衣服を着せた張りぼての人形を胸につり、孝行者が親を背負っているように見せかけていた」
そのようにして、「親孝行でござい」と大声でいいながら歩き、家々の前に立っては、手に持った扇子で銭をもらったのである。なかには、本当に老婆を背負う男もいた。こうした門付けが横行したというのは、それだけ親孝行が少なくなったということかもしれない。
出典 「江戸の定年後」 中江克己 P-36