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「手仕事の日本」 柳 宗悦

2014年03月23日 00時06分53秒 | 民話の背景(民俗)
 「手仕事の日本」 柳 宗悦(やなぎ むねよし) 著  ワイド版 岩波文庫 2003年

 第二章 日本の品物 P-27 

 「現在の事情」

 私はこれから日本国中を旅行致そうとするのであります。
しかし景色を見たり、お寺に詣でたり、名所を訪ねたりするのではありません。
その土地で生まれた郷土の品物を探しに行くのであります。
日本の姿を有(も)ったもの、少なくとも日本でよくこなされたものを見て廻ろうとするのであります。
それもただ日本のものというのではなく、日本のものとして誇ってよい品物、
即ち正しくて美しいものを訪ねたく思います。
そういうものが何処(どこ)にあり、またどれだけあるのでしょうか。
どんな風に作られているのでしょうか。

 何も一種類のものを見て廻ろうとするのではありません。
平常吾々が生活に用いるものを凡(すべ)て訪ねたいと思います。
焼物あり、染物もあり、織物もあり、金物もあり、塗物もあり、
また木や竹や革や紙の細工もあるでしょう。
きっとある国には甲のものがあっても、乙のものがなかったり、
また同じ乙でも地方で材料の性質が違ったりするでありましょう。
またある種類のものはほとんどの県にあるのに、
あるものはわずか二、三の個所によりないということもありましょう。
また同じ地方でも、ある村で立派なものを作るのに、
すぐその隣村では作り方すら知らないというような場合もありましょう。
それ故もののある場所やその技は、万べんなく一様に行き渡っているわけではありません。
日本は今どんな所でどんなものを作っているのでしょうか。
私の筆はこれから全国を廻って、日本がどれだけ誇るに足りるものを有(も)っているかを、
記してゆこうとするのであります。

 解説  熊倉 功夫 P-243

 われわれが毎日、身のまわりで使っている土瓶や湯呑のような道具が美しいかどうか、
それが美しいとしたら、どんな性格の美しさなのか、考えてみる人はかつていなかった。
柳宗悦(1889~1961)はそうした日常の道具の美しさを指摘した最初の人物であった。
そして新しい美の理論の創造であった。
民藝の思想こそ、近代日本が生んだ普遍性を持つ数少ない思想の一つといってよいだろう。

 よい工藝は手仕事から生まれると柳はいった。
彼が工藝の現状を若い人々に知らせるために、いわば手仕事の全国地図を文章で書いたのが、
この「手仕事の日本」(昭和18年に書かれた)である。

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