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刺して、生きて、老いていく(その2) 近藤 陽絽子

2016年11月09日 00時44分29秒 | 伝統文化
 秋田に伝わる祝いの針仕事 「嫁入り道具の花ふきん」 近藤 陽絽子 暮しの手帳社 2013年

 刺して、生きて、老いていく(その2) P-50

 ひたすら手を動かすうちに月日がたち、気づけば老いがしのびより、やがてこまやかに針を進められなくなるときがきます。それでも作ることのできるものが、ふきんでした。節くれ立った指に小さな針をもち、一針、また一針とゆっくり刺していきます。若い頃と違って、針目は、なかなか揃いません。糸一本を針穴に通すにも時間がかかります。それでもそこには、粗末に作ったものとは違うやさしさがあります。老いてなお針を進められる喜び、作ったものが家族の役に立つ幸福感には、若い頃には味わえなかった豊かさがあるのではないでしょうか。
 家族の用事を済ませてから、無心に針を保つ、「おなご」にとっての幸せな時間です。針目のひとつひとつが哀しくていとおしい。その長い時間を重ねて、おなごの手から手へと伝わってきたものなのです。花ふきんは、そんなふうに見てあげられたらと思います。




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