民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「フーテンの寅」 啖呵売 ver.3

2013年04月24日 00時05分14秒 | 大道芸
 「フーテンの寅」 啖呵売 

 わたくし、生まれも育ちも (東京) 葛飾 柴又です。
帝釈天で 産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んで フーテンの寅 と発します。
西に行きましても、東に行きましても、
とかく 土地土地のお兄貴(あにぃ)さんお姐(あねぇ)さんに ご厄介かけがちな 若僧です。
以後、見苦しき面体 お見知りおかれまして、恐惶(きょうこう)万端ひきたって、宜しくお頼ん申します。

「俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ (どおせ俺(おい)らは やくざな兄貴)
 わかっちゃいるんだ 妹よ
いつか お前が 喜ぶような 偉い兄貴に なりたくて
奮闘努力の 甲斐もなく 今日も 涙の 今日も 涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪」 主題歌

 結構(けっこう)毛だらけ 猫 灰だらけ。
お尻(しり・けつ)のまわりはクソだらけ。
見上げたもんだよ、屋根屋のフンドシ。
見下げて掘らせる、井戸屋の後家さん。
上がっちゃいけない、お米の相場、下がっちゃこわいよ、柳のお化け。
馬には乗ってみろ、人には添ってみろってね。

 さあ、さあ、お立会い。
ご用と お急ぎのない方は、ゆっくりと、見ておいで、聞いておいで。

 夜目、遠目、笠のうち、(と申しまして)
うす暗いところ、遠くで、笠をかぶっている女性は、とかく美人に見えると言う。
ところが、明るいとこ、近くで、笠を取って、見ると、案外そうでないということがよくあります。
このように、物事の実態、本質というものは近くで見なければわからないものであります。
ここに並べてあるこれらの商品、逃げも隠れもしません。
納得のいくまで、手にとってご覧になってけっこうです。

 カドは一流デパート、赤木屋 黒木屋 白木屋さんで、
紅白粉(おしろい)つけたおねえちゃんから、ください ちょうだいで いただきますと、
それなんか、五千が六千くだらない品物ですが、今日はそれだけくださいとはいいません。
浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないけど、腹切ったつもりで、大サービスいたします。

 いいかい、お客さん、まずは一つ。1(いち)からだ。花札で言うと、インケツ(チンケ)だ。
ものの始まりが 一ならば、国の始まりが(は)大和の国、島の始まりが(は)は淡路島。
泥棒の始まりが 石川五右衛門なら、博打打ちの始まりが 熊坂の長範(丁半)。

 続いた数字が二つ。2(にっ)ニゾウ
兄(2)さん(3) 寄(4)ってらっしゃいは、吉原(おいちょかぶ)のカブ。
日光、けっこう、東照宮。
仁吉が通る東海道。
憎まれ小僧(憎まれっ子)、世に憚る。
仁木(にっき)の弾正(だんじょう) お芝居の上での 憎まれ役。

 続いた数字が 三つ。3(さんっ)サンタ
(サンタが来るのはクリスマス)
三、三、ロッポウ引くべからず。
これを引くのが 男の度胸、女が愛嬌で 坊主がお経、
産で死んだが 三島のお千。お千ばかりが 女子(おなご)じゃないよ。
京都は 極楽寺坂の門前で (かの有名な)小野の小町が 三日三晩 飲まず食わずに 
野たれ死んだのが (女の大厄)三十三の年。
とかく、三という数字は あやが悪い。

 続いた数字が 四つ。4(よん)ヨツヤ
四谷 赤坂 麹町、ちゃらちゃら 流れる お茶の水、粋な姐ちゃん 立ち小便(たちしょんべん)。
大した(田へした)もんだよ、カエルの小便(しょんべん)。
一度かわれば 二度かわる 三度かわれば 四度(よど)かわる。 
淀(よど)の川瀬の 水車(みずぐるま) たれを待つやら くるくると。
4(ヨン)は4(シ)とも言うよ。
白く咲いたか ユリの花。
四角四面は とうふ屋の娘、色は白いが 水くさい。
いくら掘っても 畑にゃ ハマグリ 出てこない。

 五つ。5(ごっ)ゴケ
(後家の踏ん張り、戸板の心張り)
(ゴホンと言えば龍角散)
ごほんごほんと 浪さんが 磯の浜辺で 「ねえ あなた、わたしゃ あなたの妻じゃもの。」
(ああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ!)
(「不如帰」徳富蘆花 のヒロイン、浪子)

 (おっ、てめぇ、さしずめ インテリだな)

 六つ。6(ろくっ)ロッポウ
(六法全書は枕の代わり)
昔 武士の位を禄(ろく)という、後藤又兵衛が 槍1本で 六万石。
(ロックおやじがオンザロックでろくでなし)

 七つ。7(ななっ)シチケン、あるいはナキ
(泣きのギター、と言えば、サンタナは「哀愁のヨーロッパ」とくりゃぁー)
七つ、長野の 善光寺。
(この子の七つのお祝いに お札をおさめに参ります)

 八つ。8(はちっ)オイチョ
八つ、やけのやんぱち 日焼けのなすび 色が黒くて食いつきたいが わたしゃ入れ歯で歯がたたない。
(おやつにカール)
八つ、谷中の奥寺で、竹の柱に 萱の屋根、手鍋下げても わしゃ いとやせぬ。
信州信濃の 新そばよりも、あたしゃ あなたの そばがよい。
あなた 百まで、わしゃ 九十九まで、
ともに シラミのたかるまで(白髪のはえるまで)、ときやがった。

 九つ。9(きゅう)カブ
9(きゅう)と言えば、忘れちゃいけない、坂本 九。
9(きゅう)は9(くっ)とも言うよ、
(国定忠治が赤城の山で、「可愛い子分のてめぇたちとも、別れ別れになる門出だ。」)

 さぁ、買った、買った。 
カッタカッタと 音がするのは、新婚夫婦の タンスの鐶(かん)だよ。
(江戸時代の)川柳に「嫁の知恵 箪笥の鐶に 紙を巻き」とあるよ。

 どうだ(でぃ)、畜生!
テキ屋殺すにゃ 刃物はいらぬ、雨の三日も 降ればいい
さぁ、これで 買い手がなかったら、あたしゃ 稼業3年の患いと思って 諦めます。

 さぁ、買った、買った。 


(色が黒くてもらい手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり。)
(馬鹿野郎!生意気な口聞くんじゃねぇ、ケツに卵の殻くっつけた小僧っ子のくせしやがって。) 
(へえぇ、こりゃぁ、驚き 桃の木 山椒の木。ブリキにタヌキに蓄音機。)
(そうか そうか、草加、越谷、千住の先だ。)
(ザマ見ろぃ、人間はね、理屈なんかじゃ 動かねえんだよ。)
(それを言っちゃぁ おしまいよ。)
(お前と俺とは、別な人間なんだぞ。早え話がだ、俺が芋食って、お前の尻からプッと屁が出るか!)

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