「スターダスト・レビュー」 浅田 次郎
音楽家になるには医者になるよりもっと金がかかる。いや、そんなものとはたぶん、けたがちがう。何千万も何億もする楽器を買って、大学を出たらヨーロッパに何年も留学して偉い先生に師事する。それで初めて、ソロ・プレーヤーになる資格が生まれる。努力や才能は、それから先の話だ。P-77
音楽家になるには医者になるよりもっと金がかかる。いや、そんなものとはたぶん、けたがちがう。何千万も何億もする楽器を買って、大学を出たらヨーロッパに何年も留学して偉い先生に師事する。それで初めて、ソロ・プレーヤーになる資格が生まれる。努力や才能は、それから先の話だ。P-77
チェリストが主人公の作品で、音楽が好きな人なら一読の価値アリと思います。
音楽に限らず、好きな道で生活していくのは大変なこと。
でも、それは年を取って気がつくことで、若いうちはそれがわからないものです。
私も高校のとき、3年間ギター教室に通い、夢中になっていました。
東京の大学に入って、演奏会を聴いたことのある先生に習いに行ったところ、
月謝があまりに高くて、私の仕送りでは無理と断念したことがあります。
それでも、ギターはずっと続けていて、30歳を過ぎて、会社勤めが嫌になり、
どうせ苦労するなら好きな道で苦労したほうがいいとギター教室をやったことがあります。
3年間、コンビニの深夜店長をしながらやってみたけど、
思うようにはいかず、見切りをつけて会社員に戻った、そんな過去があります。
だから、音楽の道で生活していく大変さは人よりもわかっているつもりです。
今はアマチュアとしてギターを楽しんでいます。
私も決して楽な生活ではないけれど、ギターを弾いていられるから幸せと思っています。
今回の記事を読んで、学生時代に自分が音楽の道へ進みたかったことを思い出しました。
小学生のころ、将来の夢はピアノの先生。歌や音楽が大好きな女の子でした。
高校の時にピアノに先生に、歌声がきれいだから、音大を目指さないかと言われ、音大の声楽科に行きたいと親にお願いしたことがありました。
しかし、母からは、「ハードなレッスンを受けて音大へ行っても、将来声楽で食べていける人はごくわずか。どんなに頑張っても近所のピアノの先生ぐらいにしかなれない。」お金をかけて進学しても、割に合わない。
と言われ、音大は諦めるよう説得させられたことを覚えています。
とても悔しくて何度も泣きました。
今思うと、初めてぶつかった現実の壁だったと思います。
浅田次郎さんの文章は、音大を出てからのことが書いてありますが、
入るまで、入ってからも大変なのに、音大を出てもスタートラインに立てないなんて、いろいろな面でハードな世界です。
プロの道を断念した人は、ピアノの先生や学校の先生になる感じでしょうか。
そういえば、文学の研究者も、教授になれるのは一握りだけです。
大学院の修士と博士を出ても、学校の先生や大学の非常勤をしながら論文を書いたり、金銭的に不安定な立場が40歳を過ぎても続きますし・・・
研究職を目指しながら、非常勤などを続けて論文を書き続けるのですが、結婚などの話が出ると、男性は諦めて教員になるか、奥さんに働いてもらって、男性は必死になって論文を書くか・・・
女性はパートナーが許せば、非常勤を続けて論文を書き続けることができますが、子供が生まれると難しく、出産までにある程度の地位にいないと、先が難しいです。
私の大学時代の友人は、2人が準教授になり、3人が大学非常勤で、大半は教員です。
ちなみにその中のどれにも私は当てはまりません・・・
研究職はサラリーマンよりずっとシビアな世界だと思いますが、芸術家はさらにシビアな世界ですよね。
お金をたくさんつぎ込んでも、慣れないことが多いですが、挑戦できるだけでも、恵まれているのかなと思います。
才能があっても、最後まで挑戦できなかった人もいるでしょうし、努力が報われないケースもあります。
挑戦する環境を保つには、お金もかかるので・・・
諦めて教員になった人たちも、いい人生を送っています。
目指していた職種につけなくても、いい人生は送れるのだなと思いました。
あれだけお金をかけてもらっのに、結婚してから10年以上専業主婦なんて、私の世代ではあまりいないのですが、学生時代に文学という、一生ものに出会えて、ラッキーであり、幸せだったと思います。
金銭的に貧しくても、心は豊かです!