東海大学農学部の学生寮? 数棟が集まっている。ワンルームマンション形式の、わずか2階建ての建物だ。せいぜい、6~8坪程度の長方形の同じような空間を積み上げただけの、基本的には個人住宅などよりはるかに、耐震性があっても不思議ではない、しかも、比較的新しい建物である。
木造とはいえ、どの建物も似たような構造をした、別棟が、いずれも同じように、1階が完全に押し潰されている。1階に住む学生は命をなくすか、かろうじて救出されている。NHKの現場ニュースを伝える記者のアンちゃんは、アパートだと報じていた。
お、どうやら不動産会社のホームページに掲載されている所を見ると、確かに民間が提供するワンルームアパートだ。木造とはいえ、どれもこれもこの程度で、同じような倒壊をするというのは、今後、かなり責任問題が浮上するだろう。
地主に土地と建築資金を借り入れなどで投資させ、管理と建築を請け負って、日本全国に営業展開している大手の不動産賃貸業者が、現場で作っている建物は、背筋が凍る思いで、長年苦々しく眺めていたからだ。
欲に目が無い地主は、相続対策だとか、家賃保証だなどという甘い言葉で丸め込まれ、張りぼての見栄えだけの建物や小さな設備が、永久に賃料という不労所得を稼いで呉れると信じているのだが、怖いほどの格安材料で建築費を大幅に抜き取られて、建物を完成し、賃貸営業を開始した時点で、すでに、10年、20年後の予定管理収益は確保している。
地主に説明した会社側の、真面目な営業努力による長期収益などは、いわば「余禄」に過ぎないことは、今の時代、当たり前でしかない。建物の素材、工事費に限らない。目に見えるエアコン、ガス器具、ミニ台所にバスルーム、換気扇に至るまで、抜け穴はいろいろあるのだ。
所詮、家主は「お任せ」という天国の領域に住んでいるのだから、管理上5年で新品の交換時期が来ようと、10年長持ちしようと、興味も責任感もない。修繕費の中に、何号室換気扇交換3万円とあって、賃料の1ヶ月分が消し飛んでも、知ったことではない。収入が今月は少し減った、という思いだけだ。
そうやって、長期に削る分には、最初の劣悪器具の補てんが、家主の目につかないことは、保証できる。それが、不動産会社の「お任せ」の甘味であり、「楽して賃料収入の甘さ」だけが欲しいという、家主の「苦さ」なのだが、これが資本主義社会の掟なのだから、仕方がない。
それにしても、今回の1階がどれもこれも潰れているアパート現場を映像で見ただけで、建築基準に満たない手抜き工事を疑われたら、調査が入るだろうし、若い学生が死んだら、あながち地震による不幸な災難事故だけでは終わらない。不動産会社も、所有者の家主も責任を問われることになる。
お任せだったから、責任はないと、地主は逃げられない。地主は住人である学生の死について責任を取ったあとに、不動産会社を相手に訴えて、自分に賠償責任がないことを証明しなきゃいけない。出来るか?
不動産会社は、最初から責任の所在がどこにあり、その区別は心得ている。従って、詳細な契約書の中には、区別が謳ってあるのだが、それを認識せずに、自分に都合よく、面倒くさいことは全て「信じてお任せ」している地主に、勝ち目はあるだろうか?