のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

1000回の成果

2007-01-06 | KA
 別れ行く彼を見つめていたら、涙が滲んできました。特に左目の涙は溢れそうでした。そしてその見え方はくしゃくしゃのセロファンを通してみるような感じ。ケイジに向かいながら瞬きをしてもそれは変わりません。
「もしや…。」
 フルートを空に上げました。幸い手に入ります。手に入ったフルートを見つめながら、左目の涙を、涙だけを拭おうとしました。だめでした。そのまま続けるしかありません。恐る恐る始め、すぐに心を入れ替えました。心配するより普通にすれば手の中のフルートは戻ると信じて。
「1000回には少し欠けるけど、それだけ舞台をこなしてきたのだから…。」
 そしてくるりと振り返ったとき、左目の下にあった涙は飛んでいきました。コンタクトレンズと共に。
 「やっぱり…。」
 -6.5というコンタクトレンズ。学校の視力検査のときは
「指しているところが分かりません。」
 という世界。コンタクトレンズなしでは10センチ先の新聞も読めないほどです。
 コンタクトレンズが納まっている右目をところどころ使って、見すぎないようにしながら回し続け、何とか最後までフルートは手の中に戻ってきました。
 舞台が下がっていき、ケイジから出て、涙の飛んだ先の床に這いつくばりました。私のおかしな行動に裏方さんが
「どうしたの?」
 と集まってきて、一緒にコンタクトレンズを探してくださいました。いざというときのために常に予備は用意してありますし、次の舞台転換までに時間がないのですぐにそこを離れないといけないのは分かっていましたが、元旦に新しくかえたばかりのコンタクトレンズなので「もし見つかれば…」と探してみました。そして薄暗い中、奇跡的にも数秒のうちに見つけ出せたのです。
 今でこそ笑えますが、本当に恐ろしい、経験をしました。涙の出し方流し方に研究が必要です。