気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

政治家は、机上の空論に走ってはならない。

2015-08-01 09:51:24 | 日記

 フランスのノーベル文学賞作家、アナトール・フランスはこう言った。「歴史家がある証人を信用したり、他の証人を信用しなかったりするのは、感情上の諸理由によってにすぎないということである。歴史は科学ではない」(大塚幸男訳)。何も歴史に限らず、文系の学問にはそんな曖昧さが付き物だろう。

 ▼7月30日の国会では、大半の憲法学者や歴代内閣法制局長官が安全保障関連法案を批判していることをもって、集団的自衛権行使は憲法違反だと訴える民主党議員に対し、菅義偉(すが・よしひで)官房長官が切り返す場面があった。民主党お得意のブーメランが、またもや自身に突き刺さった。

 ▼菅氏は民主党政権当時、ある官房長官が記者会見でこう述べたことを紹介したのだ。「憲法解釈は政治性を帯びざるを得ない。その時点で内閣が責任を持った憲法解釈を国民、国会に提示するのが最も妥当な道だ」。

 ▼これは菅直人内閣の仙谷由人官房長官の発言である。そもそも政治主導を掲げた民主党政権は、野田佳彦内閣の途中まで内閣法制局長官の国会答弁を認めず、代わりに法令解釈担当相を置いた。今になって法制局長官を「権威」と持ち上げ、利用するのはご都合主義の極みだ。

 ▼その元内閣法制局長官の一人、阪田雅裕氏は雑誌『世界』(平成19年9月号)でこう指摘している。「ほとんどの憲法学者は、現在の自衛隊が戦力に当たらないというのはおかしい、自衛隊は違憲だという立場だろう」。

 ▼もともと自衛隊の存在すら違憲だと考えている人に、集団的自衛権行使は合憲か違憲かと尋ねたら「違憲だ」と答えるに決まっている。まさに愚問である。国民の生命、安全、自由を守る責任のある政治家は、机上の空論に走ってはならない。

2015.8.1 05:04更新 【産経抄】