ミャンマーで“第二の人生”を送る元JR西日本のキハ181系。かつては特急「はまかぜ」などで使われていた=3月、ミャンマー・ヤンゴン
現役を引退した後はアジアで“第二の人生”を…。
誰もがあこがれる魅力的な生き方を捉えるためにレンズを向けた。と言っても被写体は、熱帯の強烈な日差しを受けて走る、列車とバスだ。
「日本製の車両はいいよ。振動が少ないし、エアコンも付いてる」。
ミャンマーの鉄道は、国が運営し「ミャンマー国鉄」と呼ばれる。国内有数の大都市ヤンゴンの中央駅で、車掌のトゥン・トゥンさん(37)は話す。確かに、外の熱気が嘘のように涼しく快適だ。
ミャンマーで鉄道といえば、映画「戦場にかける橋」に登場する泰緬(たいめん)鉄道が有名だ。第二次大戦中に隣国タイとの間に敷設され、工事中に多数の死者が出たことから、「死の鉄道」と呼ばれた。
戦後70年のミャンマーでは、泰緬鉄道のレールは撤去され、代わりに日本製の中古車両が走る。車内では乗客がくつろぎ、窓やドアには日本で見慣れた「禁煙」「非常用ドアコック」などの表示が残る。
ヤンゴン郊外のバスターミナルにも、日本語が残るバスがあちこちに停車している。漢字の書かれた古いステッカーを見ると、直せるのにわざとそのままにしているとしか思えない。
日本製中古バスのオーナー、ミョー・ミン・トゥンさん(37)は、「日本のバスは丈夫だし、修理が簡単。信頼しているよ。以前、中国のバスを買ったけど大損した」と笑う。
しかし、タクシー運転手のミョー・ミンさん(48)は、「3年前なら日本のバスはもっとあった」と話す。「今では中国と韓国のバスも多くなってるよ」
激化する国際競争を垣間見た気がした。一見のどかな“余生”を送る列車もバスも、重責を担う。今日も「メード・イン・ジャパン」の信頼を乗せて、灼熱の大地を走り続けている。
2015.8.23 15:00更新 産経