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北陸新幹線開業は金沢の独り勝ち…

2015-08-06 12:12:08 | 日記

 

 


 北陸新幹線の延伸開業(金沢-長野間)で金沢と東京が2時間台で結ばれて約4カ月。新幹線の乗客数は当初の想定以上となるなど上々のスタートを切った。観光客の増加や不動産価格の上昇などを通じて沿線の地域経済や景況感の改善につながっている。とはいえ、駅の利用客数や地価変動率などをみると、全国的に高い知名度を誇る金沢のほぼ“独り勝ち”の状態だ。沿線自治体が期待した開業効果に「二極化」の波が押し寄せ始めているようだ。(橋本亮)


乗車数で2倍の差

 「当初は2・2倍とみていただけに想定以上だ」

 6月18日の記者会見で、JR西日本の真鍋精志社長はこう説明した。

 JR西が北陸新幹線のサンプルとして集計している上越妙高(新潟県上越市)-糸魚川(同糸魚川市)間の乗客数が3月の開業から6月15日までの約3カ月間で、在来線特急だった前年同期と比べて3・3倍にまで増えたためだ。

 開業2カ月間の約3・1倍と比べても勢いが増しているうえ、北陸観光への関心が高まったことで、関西と北陸を結ぶ特急サンダーバードの利用も約6%増加した。北陸に近い信越と関西を行き来する旅行商品の販売も前年を上回っている。

 ただ、各駅の利用状況には濃淡が生まれている。

 6月30日までの北陸新幹線の各停車駅の1日当たり平均乗車人数(速報値、自動改札機を通った乗客数で、団体客は含まず)は金沢駅(金沢市)が約8700人と突出している。続く富山駅(富山市)でも約4800人と2倍近い差があるのが実情だ。黒部宇奈月温泉駅は約800人、糸魚川駅は約400人だった。

 金沢は市内に金沢城などの著名な観光資源が集中する一方、富山は市郊外に黒部や五箇山といった観光地が分散していることも影響しているとみられるが、金沢のブランド力や集客力が沿線地域で群を抜いているのは間違いなさそうだ。

 
不動産業界は物件不足の指摘も…

 北陸新幹線の延伸開業効果を受け、石川、富山、福井の3県では昨年に続き不動産業界は活況を呈する。

 金沢国税局が7月1日に公表した平成27年分の北陸3県(富山、石川、福井)の路線価は平均変動率が前年比1・5%減。下落幅は0・5ポイント縮小し、下げ止まり感が強まった。上昇地点は3県で723地点にのぼり、昨年の390地点から2倍近くに増えている。

 特に金沢市内では投資が過熱しており、金沢駅周辺には首都圏の資本が次々と流入。商業用地やオフィス物件不足も指摘されるほどで、「現状では金沢の独り勝ちだ」との声もあがる。

 金沢駅周辺には相次いでホテル建設計画が持ち上がり、金沢市も駅西口の市有地に外資系ホテルを誘致しようと力を入れる。大手企業の金沢駅周辺への進出で広いオフィスへの需要が高まっており、「100坪以上の物件が不足している」(地元の不動産会社)。

 富山駅前もホテルやマンションの建設計画などが進んでいるものの、「効果はまだ限定的」(不動産業界関係者)とされる。

 富山市のシンクタンク、北陸経済研究所の藤沢和弘主任研究員は「観光面でも商業面でも金沢一強の状態で、富山を含めて他の沿線地域はそれほどの効果は及んでいない」と指摘。「特に富山市内に核となる施設がなければ観光客は来てくれないだろう。文化都市で売る金沢とは異なる産業観光などに的を絞り、外から人を呼び込む取り組みを進めるべきだ」と訴える。

 
北陸観光の多様化を

 北陸新幹線の延伸開業によって成田、羽田両空港から北陸への移動が容易になったため、石川、富山両県を訪れる外国人客も急増した。3月の北陸新幹線の延伸開業から5月末までに、日本三名園の兼六園(金沢市)では外国人入園者が10万9千人余りと、前年比1万1千人以上増えた。富山市が富山駅に設けた総合案内所には外国人が約7千人訪れた。

 新幹線の開業効果に沸く金沢だが、このまま上昇気流に乗り続けられるかは予断を許さない。「金沢は開業前からの積極的なプロモーションでイメージが先行した感がある。リピーターをどう確保していくかが今後の大きな課題」(藤沢主任研究員)だ。

 リピーター確保のためには「面として広がりのある旅行を体験してもらう」(JR西の真鍋社長)ことが重要だ。金沢の一強では今後、開業効果が薄れていくなか、集客力を維持するには限界がある。金沢はもちろん、富山など沿線自治体のほか、周辺の岐阜県なども一体となった新たな観光ルートの開拓など、観光客を飽きさせず、北陸に再訪させる工夫が必要だ。

 独り勝ちでも、二極化でもない、北陸観光の「多様化」が新幹線効果を持続させるカギとなる。

 2015.8.5 05:00更新  産経