月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

Milli Vernon(ミリー・バーノン)を聴きながら

2012-10-06 23:18:30 | 今日もいい一日


ここのところ、落ち込んでいる。
手がつけられないくらい、落ち込んでいる。
思いあたる節は、いくつかある。
けれど、どう考えても、その重さ以上の喪失感というか動揺というか…。
なので自分自身、どうしたものだろうと本当に戸惑う。

昨日まで言葉も出なかった。
落ち込んだ人というのは、言葉を失うのだなと人ごとのように気づく。
どうして励ましてやったらいいのか、本当にわからない。

昨日は、石山寺へ行った帰りに買った日本酒を飲んだ。

「Milli Vernon(ミリー・バーノン)」の曲を聴きながら、ダイニングテーブルではなくソファーに座って山の稜線の陰をじっとみつめながら、夕食の残りの筑前煮を食べた。
昔、学生時代に天王寺のジャズ喫茶にて、たったコーヒー一杯で何時間も粘る人を、見たことがあったが、まさにあんな感じ。

照明をダウンライトにして真っ暗な表情でMilli Vernon(ミリー・バーノン)を聴きながら、
筑前煮を肴に食べ、明日のお弁当用に用意していたコロッケを食べて、らっきょうを食べて、和歌山の柿も1個まるごと皮を剥いて食べて、そうやって
ちびちびと日本酒を飲んだ。
日本酒は、滋賀県の純米酒「松の司・楽」。
最初はフルーティで甘味が際立つが、空気に触れて時間が経つと辛口の純米酒に変わる。とてもおいしい純米酒だった。

随分と気持ちよくはなってきたが、
それでもまだ心が晴れるということはない。

幸せに生きたいな、と節に思う。
前はほんの少しのことも、幸せだな、とか最高に気持ちいいな、とか
涙が出るくらいに小さな幸せを身にしみて感じられるタイプの人だったのに、一体どうしてしまったのだろう。

そう、そうだ。
先日、生まれてはじめてゴキブリを捕まえられた。
子宮全摘出前には考えられなかったことなのだ。
真っ黒で羽が数枚隠れていて、それを瞬時に広げて飛び立てる生き物なんて、
恐ろしくてそこにいると思うだけで
同じ空気を吸いたくない、と思うくらい恐怖にかられたものなのに。
私ったら、平気な顔してシュッと殺虫剤を吹きかけて、ティッシュでくるんでゴミ箱に捨てられた。

考えられない。鈍感になったのだろうか。
それとも勇ましくなったのかしら。
ゴキブリを捉まえる時の私の目が「獲物を捕らえるハンターのようだった」
と家族はいった。
恐ろしいなあ。これから自分がどんな風に変わっていくのかを考えると不安で夜も眠れないなあ。

悲しみや苦しみは、時間という妙薬がいつのまにか一緒に連れ去っていってくれるよ、
とはよく言うけれど
こんな私の落ち込みようも、
時が経つと秋冷の風のなかに消えてなくなってしまうのだろうか…。

落ちこみを癒すためのよい手口はある?誰か教えてほしいな。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
出会う愉しみ (しろくま)
2012-10-07 00:31:12
その時は二度と来ないけど一つひとつが思い出となって心を埋めてくれます。ゴキブリの話も素材にしてしまう豊かな言葉の表現力おもしろいです。
純米酒おいしそう…☆ 晩酌おつきあいしたいですねぇ~
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思い出ですね (アンデル)
2012-10-09 16:33:06
癒しの言葉をありがとう!
いい思い出になるように、
日々是好日々が大切ですね。
(拘りや囚われをさっぱりと捨て切って、その日
一日を只ありのままに生きる楚々とした境地のこと)

秋冬のお料理は純米酒が合いますね~!
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いいですね~ (しろくま)
2012-10-09 17:02:35

いつまでも暑い気候。
なんとなく秋らしくない。
ちょっと風が吹いてくれるから
季節を感じることができる。
太陽の傾きでいつもとちがう影に…
やっと秋を受け入れられる…

秋のコーディネート。
風景があって通りすがる人々。
人を演出してくれる洋服。
料理の味をひきたてる純米酒。
みんな自然に今生きている必要な主役たち…

ひと味ちがう役者を迎えて
ちょっと気分もかわってなんとなく
いい感じですね~!

秋の料理本当においしそうだなぁ~

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Re:いつもありがとうございます (アンデル)
2012-10-09 23:30:44
しろくまさんも、詩的ですね。
ホントに今年は暑いけれど、いつまでも寒くなってほしくない気もするわ
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