問わず語りの...

流れに任せて

映画『妖星ゴラス 』デジタル4Kリマスター版

2025-01-08 03:57:26 | 怪獣、特撮

 

 

 

「午前10時の映画祭」では毎回、往年の東宝特撮映画のデジタル4Kリマスター版を上映するのが恒例となっているのですが、今年は『妖星ゴラス』(1962)と『海底軍艦』(1963)の2本。今回も見逃せないラインナップですわ!

 

 

で、まずは『妖星ゴラス』観てきました!

 

 

 

地球の6000倍以上の質量を持つ黒色矮星「ゴラス」が太陽系に接近。このままの軌道を進めば地球に激突してしまう。そうなれば地球はひとたまりもなく消滅する。

 

 

ゴラスから逃れる方法やいかに!?

 

 

どこかで聞いたような話?そうです。

 

 

『アルマゲドン』とか『ディープ・インパクト』あるいは『メテオ』とか

 

 

小松左京原作のSF映画『さよならジュピター』も、基本的には同じことをテーマにしています。

 

 

それらのテーマを最初に扱った映画というのが、我らが東宝特撮映画『妖星ゴラス』だったわけです。

 

 

このての映画の場合、それら地球に激突しそうな隕石やらブラックホールやらを、爆破するとか軌道を変えるとかしようとするわけですが、『妖星ゴラス』はその点が一味違う。

 

 

なんと!地球の方が、移動しちゃおうという方法をとるわけです。

 

 

何と奥ゆかしいことか。

 

 

 

地球を移動させるにはどうすればいい?その方法として

 

 

南極に巨大なロケットを建設して、それを点火させて地球を動かす!おいおい

 

 

そんなことしたら、ゴラスの影響以前に、地球の環境が激変して大変なことになるんじゃないの?

 

 

でも作中ではその点は一切考慮されず(笑)ひたすら地球を移動させる作戦が決行され続けます。

 

 

当時最新の科学によれば、映画に出てくる計算式どおりのロケットを建設して、計算式どおりのエネルギーであれば、間違いなく地球は動く。科学的嘘はないようにこだわって作っているのは、流石だなと思いますね。

 

 

 

やっぱりね、特撮が素晴らしいです。東宝特撮のミニチュアは基本、「壊す」ために作るわけですが、この作品では南極の巨大ロケットや施設群を「建設」するシーンが、ミニチュアで表現されるわけです。この面白さね。

 

 

広大な特撮ステージに設えられたミニチュア群。手前のミニチュアは大きく、奥のミニチュアは小さく作ることで距離感を演出し、ところどころに人形を配置して作業しているように見せたり、シーンによっては実際に作業している人間を合成したりと、細かい演出が施され。

 

 

様々な重機のミニチュアが走り回り、作業していくシーンの楽しさ。これらのシーンはミニチュア好きにはたまりませんな(笑)。

 

 

ミニチュアだというのはハッキリとわかってる。でもそこには、CGでは表現できない、「実物」を撮っているところから生じる独特の「リアリティ」がある。この魅力はね、何物にも

 

 

代えがたいのです。

 

 

ミニチュア特撮、やっぱり好きだな。

 

 

 

 

本編演出も冴えてます。ゴラスを最初に調査した日本の宇宙ロケット、はやぶさ号。はやぶさ号がゴラスの引力圏にはまり抜け出せないことを知った、田崎潤さん演じる艇長の、目に涙を溜め乍らも冷静に乗組員たちの労をねぎらうシーンは胸に迫るものがあるし、それを受けての副艇長役の桐野洋男さんの演技も素晴らしい。

 

乗組員たちが万歳を叫び続ける中、はやぶさ号がゴラスに落下し爆発消滅するシーン。初めて観たのは小学生の頃、テレビででしたが、あの時の強烈なインパクトは未だに胸に残っています。

 

壮絶にして悲しく、雄々しい。

 

 

 

池辺良さん演じる若き物理学者と、上原謙さん演じる学会の重鎮とが、ロケット建設を巡って激しく議論するシーンも良かった。思いは同じなのに、立場の違いから意見を異にせざるを得ないやるせなさ。そういうこと、あるよね。

 

 

かと思えば、志村喬さん演じる生物学者の呑気さがまた良い(笑)。怪獣マグマの出現に、本来避難すべきところ、生物学者としての好奇心から思わず身を乗り出してよく見ようとしてしまい、池辺良に引き留められるシーンね。緊迫感の中に可笑しみがあって、好きなシーンです。

 

こういう細かいところの演出。本多猪四郎監督の演出が冴え捲ってます。

 

 

 

出演はその他に久保明。二瓶正成。水野久美。白川由美。佐原健二。天本英世。平田明彦等々、東宝特撮映画お馴染みの方々が出演されている他、西村晃さんや小沢栄太郎さんなど、あまり特撮映画に出ない方々も出演されております。

 

 

ゴラスの引力の影響で地球上に起こる天変地異。嵐が吹き荒れ大津波が都市を襲い、山は崩れ大地は陥没。ミニチュアだと分かりきっているけれど、その迫力の凄まじさには、思わず手に汗握るものがあり、公開当時に鑑賞した方々の恐怖たるや、いかばかりであったか。

 

 

まあ、地球を移動させることによって起こるはずの環境の激変等が一切描かれていないのは、大いなるツッコミどころではあるのですが、それはそれとして、スペクタクル映画としてとてもよく出来てる。大いに楽しめる映画です。

 

 

観ていて思うのは、科学というものに対する「信頼度」の高さですね。世界が一致団結して科学力を駆使すれば、どんな困難も人類は乗り越えられる。科学を中心とした平和主義とでもいいますか。

 

 

ゴラスを破壊せず地球の方が移動するというアイデアも、この科学中心の「平和主義」が根底にあるのかも知れません。

 

 

当時の世相でしょうかね。そういう意味では、現代においては作られることのない映画だと

 

 

言えるかもしれません。

 

 

色々な意味で面白い、見ごたえのある映画でした。ただ

 

 

怪獣マグマの出現は余計でしたね。あれはどうやら、海外の配給会社から「怪獣を出してくれ」とせがまれて仕方なく登場させたらしいです。実際作中では、怪獣マグマのシーンだけ妙に浮いてましたからね。本来、出なくていい怪獣なんです。

 

 

あれさえなければ、ねえ(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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