リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

議会占拠(権力への実力行使)が許される場合と許されない場合

2021-01-11 | 政治
トランプ大統領がようやく政権移行への協力を表明した。だが大統領が煽った群衆による議会占拠に対する非難の声に追い込まれてやむなくというものだ。
その後もトランプ氏は「不正選挙」とする根拠のない主張を繰り返してツイッターやフェイスブックのアカウントの一時停止処分を受け、一時停止解除後にも「私に投票してくれた偉大な米国の愛国者たちは、将来にわたって巨大な声をもつ」「大統領就任式には出席しない」などとツイートし、ツイッター社はアカウントを永久停止とした。米議会を占拠した群衆を「愛国者」と呼んだり、バイデン大統領の就任式に出席しないと宣言したりすることで、さらなる暴力を誘発させるおそれがあるためという。トランプ氏は別のアカウント(大統領就任前から常用していたのとは別の大統領用のもの)から「ツイッターの従業員たちは民主党員や急伸左翼と連携し、私や私に投票した7500万人を黙らさせるため、私のアカウントを削除した」とツイートしたが、これも削除された。別のアカウントを使って停止措置を免れることは規約違反だからだという。(朝日新聞2021-1-10)フェイスブックもトランプ氏のページを無期限で停止し、1月20日の政権移行までは停止を続ける方針だという。
発信封じにはもちろん批判もある。巨大IT企業が言論の是非を判断してしまうことが許されるのかどうか、以前から議論されてきた(過去ブログ)。だがやはり、戦争でも大災害でもないのに5人もが死亡するというのは異常な事態だ。コアなトランプ支持者を除いて、今回のアカウント停止はやむなしという声が主流のようだ。(政権移行後まで停止を続けてよいかどうかは迷うところだが、たしかにトランプ氏が事あることに群衆を扇動し続けることは予想される。)

前置きが長くなったが、群衆による議会占拠をめぐる一連の報道で目を引かれたのは、中国外務省の報道局長によるコメントだ。今回の事態について直接的な評価はしなかったものの、一部の米議員やメディアが2019年に香港立法会(議会)を占拠したデモ隊を英雄視していた点を指摘し、今回議会に乱入した人々は「暴徒」とされていることについて、「言葉遣いの明らかな違いは、改めて考えてみる価値がある」と皮肉ったという(朝日新聞2021-1-8)。
香港では中国が「一国二制度」の国際公約を反故にして自治を奪い、それに抗議する人々を次々に逮捕している。香港の事態は憂慮しつつ詳しく追っていなかったのだが、議会占拠という実力行使に及んだことをどう評価したらいいのだろう。それを英雄視した議員やメディアというのはどのくらいあったのだろう(日本でも)。今の中国のやり方を見ていると、ちょっとした政府批判をしても逮捕されてしまうようで、言論による批判が全く成立しない。このような場合、実力行使もやむを得ないのではないか。―こう書くと暴力革命を肯定するのか、と言われてしまう。だが言論の自由がとことん圧殺されてそれ以外に抗議の手段がない場合、実力行使は許されないだろうか。たとえば1789年のフランス革命は肯定してよいのではないか(その後の恐怖政治はやりすぎ)。1917年のロシア革命もだ(その後のスターリンン独裁まで肯定するつもりはないが)。かつてのナチスドイツの場合、どこかで実力行使して惨劇を阻止することはできなかったか。
今回の米議会占拠も、「不正選挙」を信じるトランプ派にとっては、民主的な手続きによる事態改善が得られなかったために正当化されるということなのだろう。だが不正の主張に根拠がないことはやはり数々の裁判ですでに明らかになっていると思う。乱入した人々を「暴徒」と呼び、トランプ大統領に批判が集まったのは当然だったろう。では香港の場合はどうだったか。
私もまだ迷い続けている。だが少なくとも、どこかの国の首相のように「回答を控えさせていただく」を連発して思考停止するのではなく、批判の声に耳を傾け、考えることは続けたいと思う。

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