リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

GoToキャンペーンでまた不正発覚:旅行せずにクーポンだけ詐取

2020-11-29 | 一般
GoToトラベルでは旅行代金の割引が受けられるほか、滞在先で使える「地域共通クーポン」をもらえるのだが、旅行を予約しておいて無断キャンセルし、クーポンだけ詐取する不正が相次いでいるという(朝日新聞2020-11-29)。そんなことができるのは、宿泊当日の夕方であればチェックインや会計の前でもクーポンを受け取れる仕組みになっているからだ。さすがにチェックイン前にホテルのフロントでクーポンを受け取るのは敷居が高いが、「電子クーポン」であれば顔を合わせずに詐取できる。クーポンの負担は国税なのだろうが、ホテルにとって部屋を確保しておいて無断キャンセルされるだけでも痛い。観光庁は、SMSを使った本人認証を導入するとか、「手の内は明らかにできない」他の対策などを講じるという。チェックアウトして帰るときにクーポンを渡されても困るだろうから、「会計前」は仕方ないとしても、このくらいの対策を事前に思いつけなかったものか。

GoTo事業の不正、ないしは不適切な使用はこれだけではない。
GoToトラベルでは、25万円ほどの合宿免許プランに申し込みが殺到した(「GoTo “錬金術”が話題、抜け穴だらけの問題点はどこにある?」)。私は割引額に上限があると思っていたのだが、「1泊あたり2万円」という上限設定なので合宿なら青天井に近くなるようだ。25万円の35%が割引になったというから9万円近い得になる。GoToトラベルの予算には限りがあるから、特定の人が多額の補助を受けると、恩恵を受けられる人が減ってしまうという問題がある。ほかにも資格取得や英会話などを含めたプランまで割安になると話題になっていたが、これらはGoToトラベルの趣旨に合わないということで、急遽対象外となった(西日本新聞ニュース2020-10-29)。
これらは業者や利用者が不正をしたわけではない。政府が作ったずさんな制度を最大限に活用したというだけのことだ。だが急遽対象外が決まったことで駆け込みの申し込みが殺到するとか、業者が打ったキャンペーン費用が無駄になるなど、大きな混乱をもたらした。

ほかにも大手電機店LAOXの買い物券3万円分がもらえる旅行プランが4万円に設定されて、GoTo割引を受けると支払い分以上の還元を受けられるというよくわからないものもあった(Tracy 2020-9-25)。

GoToイートでは対象店で食事をすると1000円分のポイントがもらえる(ランチは500円)。ところが1000円未満の1品だけ頼んでポイントをもらえば差額がもうけになる。まさに「錬金術」だ。これはさすがにポイント相当額を下回る飲食は対象外となった(週刊朝日2020-10-13)。だがそれでも、1000円分の食事をして1000円分のポイントをもらえば、初回の1000円の投資だけで永久に飲食ができる。こういう「無限ループ」については、西村経済再生相は「認められる」と公言している(asahi.com 2020-11-6)。困窮している人や飲食店の助けになるのはわかるが、その原資は血税だ。支援予算の配分として妥当なのかどうか疑問が残る。

最近では札幌や大阪がGoToトラベルの対象外となったが、政府の決定が遅れたおかげで、混乱と無駄を呼んでいる。所定の期日までにキャンセルすればキャンセル料はGoToトラベルの事業費から補償されるので利用者は請求されないという。旅行会社や宿泊施設については、代金の35%をの損失とみなして補償するという。(nhk 2020-11-25)この話を読んだとき、旅行会社は架空の予約を入れてキャンセルすればぼろもうけができるのではと思ってしまった。だが新規予約は停止したと報道されていたと思うから、さすがにそこまでずさんではないだろう(と信じている)。

感染急増への対応のにぶさ(過去ブログ)や、そもそも感染が終息してから行なうはずだったGoToトラベルを感染の真っただ中に行なったことの是非もさることながら、やるにしてももう少しまともな制度設計はできなかったものか。やはり制度設計を行なう官僚の劣化があるのではないか。安倍政権下で首相周辺に忖度する人が高い評価をされるようになって、まっとうに意見具申する人は遠ざけられるようになった。安倍政治を継承するという菅首相も、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と公言している(過去ブログ)。まともに意見を言えない雰囲気のもとでは、普通なら気づけたはずの抜け穴も見落としがちになる。そういうところで国の重要なことが決められているのが残念でならない。

追記:まさかと思っていた「自作自演」によるポイントかせぎの不正はやはりあった。飲食店2店が自分で予約を入れてポイントを稼ごうとしたが、予約を扱うグルメサイトが、利用者の登録情報を照合するなどしたチェックにより気づいて未遂に終わった(朝日新聞2020-12-1)。同じような事例は他にもあるのではないか。小規模持続化補助金でも不正が相次いでいる(キュレート)。さまざまな業界で公金による支援が必要なことはわかるが、不正に対する処罰はきちんと行ってほしい。

追記2:旅行会社大手HISは、子会社などが、GoToトラベル事業で、延べ6万泊分の給付金を不正に申請したと発表した(朝日新聞2021-12-25)。従業員80人×60泊=述べ4800泊の宿泊契約に基づいて給付金を申請したが、実際に泊まったのは114泊だけだった、などの事例だ。不正に受け取った給付金の総額は最大で約6億8329万円分に上るという。これほど大規模な不正がされていたことは驚きと言えば驚きだが、やっぱり、という思いもある。制度設計がずさんで、他にも似た例が多いのではないか。徹底的に検証してほしい。




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