勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

月には帰れない-5-

2009-02-09 | 移住のお喋り
母と私だけで引っ越しするのは到底無理だった。
当然引っ越し業者の手を借りなければならない。
見積もりに来てもらった。
1日では無理なので、2日かかりますと言われた。

整理しておくものは他にもあった。
本!本!本!
持っていくのはせいぜい50冊。
絶対100冊以内に抑えなければならない。

今でも買える本は捨てることにした。
多分もう手に入らないだろうと思うものだけを選んだ。
マザーグースの全訳とか、源氏物語の原書とか。
漫画の単行本は貴重なものもあったが諦めた。

外の物置を空にして、捨てる本を運び入れた。
わかると思うが、本と言うのは非常に重量がある。
運び、シートの上に置き、一冊ずつ物置の一番下の奥からつめていく。
家の中に戻り、運び、奥へ積み込む。

この作業を繰り返していたら、膝に嫌な痛みを感じた。
もともと左膝はテニスで痛めていた。
それを庇いながらの作業で、右膝を痛めた。

この膝が、最後に仕掛けられた時限爆弾だった。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月には帰れない―4―

2008-01-15 | 移住のお喋り
ある晩、ベッドの中で決心した。
候補はいくつかあったが、そこにしようと。

翌日仮契約。
決まる時はこんなもんだ。

それからはもう怒涛の日々だった。
なにしろ20年住んだ家だ。
溜め込んだ荷物は半端じゃない。
いらないものでもしまい込めるだけ押し込んである。
まずこれを整理しなければならない。

服は半分捨てた。
家具も半分始末する。
小学生の時の成績表?
そんなものはもういらない。

身軽になりたかった。
ただひたすら身軽になりたかった。
「思い出」と言うだけの不用品はほぼ捨て去った。
過去はもういらない。

沈みかけた筏に乗っていたら、不要なものは放り投げるのだ!
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月には帰れない―3―

2008-01-12 | 移住のお喋り
新しい家の条件を考えてみた。
地理感のない遠方に引っ越すことはもっての外だった。
家に馴染むのだけでも大変なのに、土地に馴染むには母は年を取りすぎている。

同じ県内。
出来れば近隣。
条件を絞ってみても、予算と言う大問題だってある。
近隣は土地も家賃も都内以外でトップクラスだ。

さらに重大な問題がある。
アルバイトで定職を持たない私とその母。
不動産屋にもっとも敬遠される客だ。

現実の厳しさはわかっていたから、引越しを決意するのにこれほど時間がかかってしまった。
それでも引っ越さなければならない。
タイムリミットは来年の春までだったが、今となっては早い方がよかった。

そしてその日がやってくる。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月には帰れない―2―

2008-01-09 | 移住のお喋り
決意はしてみた。
家を探す努力も一応してみた。

ただ季節は夏に向かうところだ。
たった一人の家族である母は暑さに弱い。
引越しを敢行するにしても、暑さが一段落した10月以降がいい。

さすがに春先、秋に咲く花を庭に植える気はしなかった。
春に咲き誇っていた花が散り、庭には夏草が生い茂っている。
コニファーの緑以外、庭は惨状を極めた。

引っ越すことで一番辛いのは、この庭を捨てて行かなければならないことだ。
夏の盛りに毎日水をやり、冬の寒風の中土を掘り返した。
スコップで、たとえば50センチ四方の穴を掘る作業がどれほど大変かわかるだろうか。
真冬でもびっしょりと汗をかく。
3日は筋肉痛が引かない。

そんな労力と時間をかけ、やっと思い通りになりつつあった庭なのだ。
新しい家で庭を造り直す?
考えただけでうんざりだ。

だが私はこの庭を捨てなければならなかった。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月には帰れない―1―

2008-01-06 | 移住のお喋り
2年くらい前になるだろうか。
住んでいた家にはもういられないと言うことが現実となってきたのは。
20年住んだ家だ。
他に家を探すとなると、大変なエネルギーが要る。

しばらく放置していた。
現実問題から目を背けていた。
だが埃のせいか、日ごとに咳がひどくなっていく。
隙間風が寒くて、冬はひどく辛い。

いい加減目を背けていられなくなった。
エネルギーはどうにか搾り出すしかない。
新しい家を探そう。

そう決意したのは、2007年6月のことだった。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする